Gossen Starlite 2 の話(仲間入り)

光らせて撮っただけの雑な写真で申し訳ないがGossen Starlite 2が仲間入りした。

Gossen Starlite 2 を海外から取り寄せた件について過去に記事化した。Gossen Starlite 2 は GossenがUniversal Exposure Meterと定義する露出計で、入射光式とスポットメーターが一つの筐体にまとめられている。こうした機種はセコニックにもミノルタの資産を継承したケンコーにもある。Gossen Starlite 2の美点はいくつかあるが、他のメーカーではスポットが1°であるのに対してGossenは1°と5°の切り替え式でここを評価した。Gossen Starlite 2を販売するのはKPIケンコーなのだけれど、市中在庫がまったくといってよいくらい存在せず、しかもドイツ本国価格や日本以外での実売価格より圧倒的に高価格設定だ。なので、海外から取り寄せた。

海外からの個人輸入になると価格はともかく、街中の実店舗で買ったり国内の通販で買うより何かと面倒臭い。KPIケンコーはGossenの他の機種はそうでもないようだが、Gossen Starlite 2を売る気が失せていそうで、しかも自前の倉庫に在庫してるのだろうかといった具合なのは前述の通り。元は駒村商会がGossenの日本代理店で、これを引き継いでくれているのはありがたいが「ほんとうに商売したいの?」と愚痴をこぼしたくもなる。Starlite 2の前バージョンがいまだに市中在庫のままフラフラしているなど、日本では高くて売れない機種になってやる気が失せるのは理解するけど。

で、Gossen Starlite 2のスポット機能だ。スポット測光の測光範囲1°はライカ判1000mmレンズの垂直画角より狭く、もう少し面を捉えて測光したい場合400mmレンズの水平画角に近い5°が好適なのだ。と、5°に必要性を感じる私が特殊なのかもしれないが、Gossen Starlite 2には1°と5°の切り替えが実装されているのだから求めている人は確実にいるはず。この1°と5°ふたつの受光角を切り替える仕掛けをつけてもGossen Starlite 2の諸外国での実売価格は、切り替えのないセコニックやケンコーのフラグシップモデルと変わらない。つまり国内メーカーは価格が高くなり過ぎるのを嫌って切り替え式を断念したわけではなさそうだ。ケンコーについてはミノルタ由来の製品を販売しているので、0から企画開発しているセコニックと事情が違うけれど。

スポット測光なんてどうでもよい人もいるし、私だっていつも必要なわけではないけれど、必要なときはなくてはならない機能だ。被写体が500m以上先ならまだしも、これ以下であるなら1°はとても狭い範囲で、だから有効な角度でもあるのだが神経質すぎる場合がある。もっとざっくりと一括りにできる範囲の反射率や明るさを知りたいとき5°くらいが丁度よく、両方の測光範囲を切り替えられる機種がずっと欲しかった。となると、Gossen Starlite 2以外にない。

1°と5°を切り替えつつ知りたいのは撮影した時の濃度だ。スポットメーターは反射光式露出計の一形態だから、反射率が異なる物体を常に平均反射率18%の濃度で記録する値を示す。真っ白な壁はグレー(平均反射率18%)、真っ黒な壁もグレーにといった塩梅だ。これだから反射光式はダメだ、なのではなく照度に対して個々の部分の反射率がわかるメリットがある。撮影して記録するのは物体が反射した光であり、照度そのものではない。画角内(または主要な部分)の照度がEV12だったとする。このとき平均反射率18%の部分をスポット測光すればEV12を示す。平均反射率18%でないなら-EVxや+EVxになる。このマイナスの値やプラスの値は「記録される」明暗差そのものだ。これらがラティチュードに収まるか、どのような対比になるかを知ったうえで露光量を決定する。あるいは照度ちがいの箇所がどのように描画されるか結果を知るためにある。先日紹介した色ごとの反射率の違いと補正値は、その色を正確に記録したり、その色の中にあるディティールがどのように描画されるか知るためのものだ。

もちろんGossen Starlite 2に限らず、スポット測光機能を持つ露出計なら角度の切り替えはできなくても撮影して記録される濃度を知ることができる。こうした機種でセコニックはタッチパネルでモードなどの切り替えを行う方式を採用しているのに対し、Gossen Starlite 2はボタンとダイアルだけでほとんどすべての機能を呼び出せる。ケンコーはボタン式ではあるけれど、かつてのミノルタの製品がそうであったようにボタンの数が多い。というか、Gossen Starlite 2が異様に少ないのだ。これはかなり大切なことで、ライティングのために撮影しているのでも、測光のために撮影しているのでもないから、手早く確実に操作できるメーターはありがたい。液晶をタッチして操作する機種は以前よりかなり反応がよくなったが、では便利かとなると指先の状態にかなり依存し、直感的な操作ではなくGUIを読み取りながら階層をたどる操作をしいられるので露出計向きではないと私は思う。スイッチがなくなれば故障箇所が減るし防水防塵にも有利だろうが、Gossen Starlite 2もかなりのヘビーデューティー仕様だ。

またまた問うけれど、どうして国内メーカーはGossen Starlite 2のような明快さから遠ざかる一方なのか(Gossenもタッチパネル式のモデルがあるけれど)。

諸外国の用品が自由に選択できる世の中になって、カメラメーカーには感じないのに、露出計など国内用品メーカーに覚えるこれじゃない感は、誰のためにつくって売っているかわからない点かもしれない。私が露出計に求めるものはど真ん中ストライクではないかもしれないし、私だけ変なことを言っているのかもしれない。でもGossen Starlite 2はヨーロッパやアメリカでちゃんと売れていて、ヘビーな使われ方をしているようで、だから私があまりに突拍子もない変な理屈をこねているわけでもなさそうだ。国内メーカーのスポットメーター付き単体露出計のカタログやサイトの製品説明を読むと、必要性を感じていない人に機能を売り込もうとしているのが見え見えである。これはメーカーの使い方講座的なものにも言えて、風景を撮影する際に遠くにある暗部が潰れないようにスポット測光しましょうみたいな説明のされようだ。これなんて今時のカメラのスポット測光切り替え機能で十分だし、経験が浅い人が下手に1°なんて狭角で暗部の露出を計測して出た目で撮影したら他の要素が目も当たられない結果になりそうだ。ほら誰のためにつくっているか、誰に売ろうとしているか迷走しているでしょう? わからない人に買わせるのは罪以外の何物でもないし。

かれこれ三十数年前、私はアオリ可能なベローズを探していた。ライカ判カメラにアオリ可能なベローズを連結してフランジバックが長い中判カメラ用レンズを装着する構想で、現在ではこうしたベローズはともかくマウントアダプターなどを使って解決方法が見つかりそうな話である。しかし当時は思うような組み合わせが実現しにくく、有名大量販店でアオリ可能なベローズを見つけたものの店員に「所詮おもちゃだから、ハハハハハ」と売り場中に響く声で笑われたのだった。確かにおもちゃ的なベローズだったかもしれないのだけど、ネ。あの時ここに二つの問題を感じた。一つは、ベローズをつくった国内メーカーが実用のためのパーツ(周辺用品)をつくらずおもちゃでよしとしていた点。二つめ、当時の量販店は便利な店だったが撮影の微に入り細に入りの要求を考えず、悩める私をおもちゃを欲しがる客と断定する店員しかいなかった点。量販店はカメラが売れない時代になってだいぶ変わったように思うけれど、国内の用品メーカーはまだまだな気がするのだ。そして気がつけば、中華製品のオンパレードである。この二つの問題は、メーカーにしろ販売店にしろ写真をちゃんと撮っている人がいなかったことにありそうだ。だってアオリ付きベローズをカメラメーカー以外がつくるならレンズはどうするといった問題に気づくはずであるし、どうせアオったりできるならイメージサークルが大きいレンズがよいに決まっているのに、ここまで踏み込んでいないのだ。店員はテクニカルカメラを使えと言いたかったのかもしれないが、百も承知だし持ってるしで敢えてライカ判でやりたいことが私にあったが、こういう写真に付きもののニーズが理解できないのは通り一遍の撮影しかしていないからだろう。

この出来事から二、三年後、私は渡米して細かいものをブツ撮りする仕事のため、飛行機積み込み可能で現場でインスタントに展開できる静物撮影用の簡易スタジオを用意する必要に迫られた。現在だったら高出力でリチウムイオンバッテリーの小型ストロボもあるし、なんだったらディフューザーで四方を囲む例のアレもあるけれど、当時は一から用品を整える必要があった。おおよその構想だけで細部まで詰め切れないまま銀一に買い物に行ったら、さすが銀一の人はわかっていてあれこれ用品を提案してくれた。この時代も銀一は現在と変わらず国内メーカー品を扱っていたのだが、結構面倒な実務をこなすための用品は結果的に海外製品からのチョイスになった。あっ、ウエイトだけは国産だったかな。

国産に限定せず、それぞれ得意な分野を持つ会社の製品を買えばいい。そうせざるを得ないからGossen Starlite 2を手に入れた。国内メーカーすべてがダメな訳ではないし、まったく期待できなかった国産三脚は今ではかなりよいものになった。シューマウントみたいな工場直送的なものは今更だし、余所に任せてもよいかもしれない。でもいくら市場が小さいとはいえ、ちゃんと売れているとはいえ、そして私がメーカーの想定するユーザーでないとしても露出計はどうにかできないものか。頑張る方向が違うだろう、と。あらゆるモードが「回す」「押す」操作だけで瞬時に切り替えられるほうが圧倒的に便利だし、くどいようだけど受光角1°と5°の切り替えは必要だ。インターフェイスを液晶化するより、よっぽど実があると思うのだ。

 

Fumihiro Kato.  © 2018 –

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・スタジオ助手、写真家として活動の後、広告代理店に入社。 ・2000年代初頭の休止期間を除き写真家として活動。(本名名義のほかHiro.K名義他) ・広告代理店、広告制作会社勤務を経てフリー。 ・不二家CI、サントリークォータリー企画、取材 ・Life and Beuty SUNTORY MUSEUM OF ART 【サントリー美術館の軌跡と未来】、日野自動車東京モーターショー企業広告 武田薬品工業広告 ・アウトレットモール広告、各種イベント、TV放送宣材 ・MIT Museum 収蔵品撮影 他。 ・歌劇 Takarazuka revue ・月刊IJ創刊、編集企画、取材、雑誌連載、コラム、他。 ・長編小説「厨師流浪」(日本経済新聞社)で作家デビュー。「花開富貴」「電光の男」(文藝春秋)その他。 ・小説のほか、エッセイ等を執筆・発表。 ・獅子文六研究。 ・インタビュー & ポートレイト誌「月刊 IJ」を企画し英知出版より創刊。同誌の企画、編集、取材、執筆、エッセイに携わる。 ・「静謐なり人生展」 ・写真集「HUMIDITY」他
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