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私が使っている愛するクルマのドライブレコーダーについてあれこれ考えざるを得ないできごとがあった。過日、撮影地までクルマを走らせる途中の某自動車道へ入った直後、追越車線から走行車線に向かって無理な車線変更をした他車にぶつけられそうになったのだった。
そのとき私は「コツッ」という音を聴いたのだけど(急ハンドルで回避しようとした際に運搬中の三脚なんかが動いたのかもしれない)、クルマに傷や凹みがついていないところをみるとぶつけられてはいなかったのかもしれない。しかし、私のクルマの鼻面めがけてほぼ真横あたりからぐぐっとこちらへ接近してきたので、あのときは大げさにではなく死ぬかと思った。
で、ドライブレコーダーの動画を再生して、もっと解像度が高ければいいのにと感じた。
そんなこんなで古今東西のあらゆるドラレコ事情を見て回ったら、中華製花盛りというか、格安品からそれなりの価格のものまで製造販売会社が何社もあって何種類の製品があるのか見当もつかないもないありさまだった。世の中の動きに敏感な皆さんはとうの昔に知っていたかもしれないけれど。
そして気づいたのだが、これは中華製アクションカメラも同じで製造販売会社が何社あって何種類の製品があるのか途方もない状態だ。こちらのほうも、皆さんご存知だったのでは?
なぜここまでたくさんの会社が存在して、何種類もの製品があるのか。そしてどれも似通った外見で、同じような性能で、新製品が出るごと同じように性能が向上するのか。
中華製ドラレコ、アクションカメラと言ってもレンズやらセンサーやら、これらのユニットはけっこう日本製だ。まあそうだろうなあ、ソニーがユニット化して高品質の製品を大量に販売しているのだから使わない手はない。
ようするにソニー製のセンサーとレンズのユニットを中核にして、その他のパーツたとえば加速度センサーとかもけっこう日本製だったりして、基板で有名どころは台湾のNOVATEKとかなんとかで、あとは独自に取りまとめてパッケージングしたのがAmazonにごちゃまんと販売されているあれらなのである。
これってRaspberry Piを買って、その他の機器も買ってきて、自作でIoTなんかを完成させるのとほとんど同じだ。それぞれのユニットから開発するハードルは果てしなく高いが、ユニットを組み合わせるなら企業でなく個人でも可能になる。
中華ドラレコやアクションカメラの製造販売会社が、何社あって何種類の製品があるのか調べる気にもなれないけれど、筐体の形状とか機能とか性能とかざっと見ていくと、前述のように似通ったものがあってOEMというかシールの張り替えや筐体のデザイン替えで中身が同じ製品がけっこうな数である。
たぶん販路であるとか特定の商社向けにブランド違いをつくったり、基幹部分を仕入れて外装のみ自社で設計するメーカーとかもあって、こういう業界の構造を調べ尽くしたら面白い相関図がつくれそうである。
ここまできて、ドラレコやアクションカメラってミラーレスだよな、カメラだよなと思考が一巡した。
中華ドラレコ、アクションカメラメーカーの様子は、第二次世界大戦後の日本で二眼レフのメーカーが雨後の筍のように林立したのに似ている。
国産二眼レフだって最初はレンズとシャッターのユニットを仕入れて弁当箱みたいなボディーに組み込んで独自のネーミングで売っていただけで、あるときリコーが低価格高性能な製品を出して他が追随できず雪崩を起こすように倒産して行った。
シートフィルムを使う大判カメラは、知識と根気とセンスと工作機械といわないまでも道具があれば素人にだってつくれる。たしか90年代だったと思うが、真鍮の無垢材でつくられた大判カメラがハンズ大賞を受賞したことがあった。
大判はレンズ別体だし、二眼レフもレンズとシャッター以外は比較的簡単につくれる。一眼レフのパタパタ動くミラーとプリズム、レンジファインダー機の距離計なんかが素人が近寄れない恐ろしくシビアな設計と製造精度が求められる領域なのだ。
で、デジタルカメラはどうか。
スチルカメラ用のちゃんとしたセンサーを製造できるメーカーは限られている。内製して自社のカメラに搭載するカメラメーカーがある一方、他社製センサーを買ってきて内蔵するメーカーもある。ニコンは自社で設計したセンサーの製造をソニーに委託していたりもする。
そしてレンズ交換式ミラーレスカメラだ。
センサー調達の事情から中華製ドラレコやアクションカメラとまったく同じとは言えないのだけど、暴論を書くならまったく違うとも言えないだろう。
暗箱にレンズマウントとセンサーを組み込んで制御できればレンズ交換式ミラーレスカメラと定義できそうではないか。Raspberry Piでつくる自作IoT的というか。ほら、アクションカメラとほとんど同じだし、ドラレコだって兄弟みたいなものだ。
暴論ついでに暴論を書けば、精密機械で構成されたミラーがパタパタ動く一眼レフと違い、ミラーレスは筐体にユニットを組み付ければでつくれてしまうのではないかという話になる。
昔からカメラメーカーはシャッターはコパルやセイコーのユニットを仕入れて組み込んでいたりしていたし、何から何まで内製だった訳ではない。
でもミラーレスはミラーとミラーを動かす機構とかプリズムとか必要ないのである。なぜ視野率100%の一眼レフが高価かと言えば、プリズムの精度だけでなく精度よく組みこむのがとても大変だからだ。前述のように設計から製造まで大変なのだ。いっぼうミラーレスは電子デバイスのユニットをインストールして完成するイメージというか。
レンズ交換式カメラのミラーレス化によって、中華ドラレコやアクションカメラのように製造業社が途方もなく増えるとは考えにくい。したがって、中華メーカーのようにあっちこっちからユニットを仕入れて組み立てポンなスチルカメラが続々発売されるようにはならないだろう。
だいたいそもそも市場がそんなに大きくないのである。でも、これまでと同じであるはずがない。
シグマのLマウントカメラであるSIGMA fpをご覧あれ。

カメラシステムや理屈や理念や宣伝文句をSIGMA fpからとっぱらってみれば、ほら中華製アクションカメラの成り立ちに限りなく近いものを感じるでしょ?
これから何が変わるのか変わらないのか私には断言じみた話はできない。したがって結論やまとめがないままこのページを終えるけれど、メーカー側よりユーザー側の意識が素早く変わるのだけは間違いないだろうと書いておく。たぶんもう激変しつつある。最近カメラを所有して写真を撮りはじめたばっかりの人は、とっくに新次元の意識を持っているだろう。

© Fumihiro Kato.
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