Standard lens lineup とその拡張

1.

Workshopのページ内で「Standard (lens) lineup」を提唱してから、同ページのview数が安定して多いので、いまいちどStandard lens lineupの考え方を整理したいと思う。

Standard lens lineup は最小のレンズで最大効果を得ようとして生まれた考え方だ。標準(Standard)と銘打っているが、これでなければならないとする宗教じみたものではない。「考え方」を導入して最小のレンズで最大効果を得ることで、金銭的にも、荷物の重さの面でも楽をしようという趣旨だ。撮影するものが変われば常用レンズも変わり、ライカ判で500mmが基本となっている人もいるだろうし、同50mmが基本の人もいるので、○○mmのレンズさえ用意すればよしとはしたくない。だから「考え方」の適用なのだ。

「Standard (lens) lineup」の基本はWorkshop中の記事を読んでもらいたい。人間が意識をある程度集中した状態の視野に近いライカ判50mmを中心としたレンズのラインナップについて、ここではざっとかいつまんで説明する。(下図はクリックすることで拡大できる)
Standard-lineup
「Standard (lens) lineup」は垂直画角・水平画角・対角画角に注目することからはじまる。基本とするレンズをライカ判50mmとした場合、広角側は50mmの対角画角が水平画角となる28mm、望遠側は50mmの垂直画角が水平画角となる85mmのひとつ先にある100mmを推奨している。

28mm、50mm、100mmを標準的として推奨する理由は、図示したように50mmと明らかな描写の違いが現れるためだ。もちろん50mmから遠ざかれば遠ざかるほど描写の違いは大きくなるが、目的をもって撮影に臨むことを考えると差が大きいことで得られるメリットよりも、レンズの質量の問題から効果に至るまでデメリットが増して行く。ただ、差がはっきりされては困る場合もある。そういう場合は画角相関に注目して適宜終点距離を選べばよいだろう。

仮に24-70mmズームを1本用意したら、100mmマクロを入れるだけで広範な仕事が可能だ。もちろん28mm、50mm、100mm(マクロ)と単焦点のみで揃えてもよい。ここに70-200mmズームが加われば、大概の撮影は滞りなく終えられる。ざっくり言えば、ちょっとしたルポルタージュなら、これらのレンズがあるだけで仕事ができるのである。(100mmをマクロとした理由は、被写体に寄れるだけで撮影領域が圧倒的に拡大することによる)

いやいやもっと画角を変化させたい、と思う人はいるだろう。そこは足を使って移動したり、俯角仰角にしてみるなど知恵を使えばよい。撮影現場に入れば自分の都合より被写体の都合が優先され、そうそうレンズを取っ替え引っ替えできないケースがあるのだし、レンズ選択を割り切って撮影したほうが時間的にも絵作りからもよい結果が得られるだろう。

もし撮影目的から考えて50mmをラインナップの中心に据えるのが不適当なら、相応の別焦点距離に変えて「考え方」を採用すればよい。なお参考までに広角レンズの焦点距離と画角の関係を以下に図示する。望遠系は選択肢があるようで、100mm以上は200mm、400または500mm、それ以上といった感じだろうから細々した説明はここでは省くことにする。

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2.

先日、「15mm,45mm,80-200mmという選択から」と題して記事を書いた。私が「海景」と名付けている作品づくりで常用しているレンズの焦点距離が15mm,45mm,80-200mmなのだ。私はもともと(作品づくりに限ればだが)何mmのレンズしかないとなれば、手元にあるものでどうにでもやりくりする性格なので、50mmしかないとなればそれで作品の種となるデータをつくる。対象が巨大でも、小さくても、だ。とはいえ、選択肢があり現場までの運搬が可能ならレンズ選びに余裕を持たせるのは多くの撮影者と変わりない。だがやはり最小のレンズで最大効果を得たいと思う。

いっけんStandard lens lineupとかけ離れたレンズ選択に感じられるかもしれない15mm,45mm,80-200mmだが、これはこれで私個人としては合理的なチョイスだ。

海景シリーズは15mmが起点であり、15mmが標準レンズに相当する撮影なのだ。15mmより広いレンズは、この撮影では私に必要ないし、そもそも魚眼レンズクラスにでもしないかぎりより短い焦点距離はほぼ選択肢がない。また、海景の撮影では15mmの横位置が主だが、15mmを縦位置に構えると左右方向は77度となりだいたい24mmクラスの水平画角となる。あるいは15mmを横位置で撮影して事後トリミングを施せば、20mm相当の画角まで絞り込んでも実用上差し支えない画質が維持できる(高画素機の場合)。いや、RAW現像時に丁寧な処理をすればもっとトリミングできるだろう。トリミングに頼らずとも足を使って寄って、絵をつくれば済む話でもある。

15mmの画角そのままを撮影するのが常だが、なにか不満があれば上記のように対処できる。また、20mm、24mm、28mm、35mmを用意しても、15mmと競合するばかりでがらった異なった絵をつくれる訳ではない。

ただし、15mmではパース描写や撮影時の心理を考えると50mmと同等の絵づくりが不可能だ。そこで、45mm。15mmで20mm、24mmの雰囲気までカバーできるので、ちょっとだけ広めでちょっとだけ冷静な視点として45mmがうまく(私としては)はまる。より冷静な視点として70-200mmを選択するのは、Standard lens lineupで50mmの次に100mmを置いたのと同様だ。70-200mmのズーム中間域は100mmから135mmであり45mmと競合しない。

15mm,45mm,80-200mmは互いに干渉せず競合しない。それぞれがそれぞれの持ち味を生かせる。そして、現場で余裕を持って使用できるレンズの数は最大で3本だろう。これはまだ作品づくりなので私自身のペースで撮影できるが、仮にお店紹介の仕事だったとするなら状況説明的要素込みの人物用、店内概観、商品、これらを広めから長めにかけての3本でせいぜいである。

3.

最小のレンズで最大効果を得るには、パース描写やワーキングディスタンスにおいて競合するレンズを省く必要があり、これが画角と関係しているのを理解してもらえたと思う。これが、Standard lens lineupの考え方である。それぞれが目的に叶う焦点距離を起点に採用して、絵づくりの幅を広げる他の焦点距離を選択すればよいのだ。

もとはと言えば、仕事のためマミヤRB67を中古で購入してレンズを買うのがいっぱいいっばいだった私が、RB67のフレームを縦から横位置、横から縦位置に変えつつ気づいたのがStandard lens lineupの基本の考え方だ。垂直画角と水平画角の違いを頼りに、ワーキングディスタンスを含め、本質からして異なるレンズの焦点距離を選択したのである。6×7とライカ判ではアスペクト比がまるで違うので、ここだけはまったく同様とは言えないけれど、まあだいたいは似た話だったのだ。知恵を使って最小のレンズで最大効果を得ようとした分、無駄な買い物をせず済み、カメラバックも軽くなったのだから、金がないのは悪いことばかりではなかったようだ。

近年、あの時代と異なる事情が付加されたとすれば、デジタル高画素機においてはトリミングの自由度が増した点だろう。(2.)の話に立ち返るなら、以前は超広角レンズの画質はよくないのが普通で、印刷時のサイズが小さい場合を除いては15mm相当の画角から24mm近くまで切り詰めるのはまったく得策ではなかった。ところが現在のライカ判高画素機の実力は、印刷対応力ではかつての大判くらいあると見てよく、レンズが高性能になったことも加えると大胆なトリミングをしても悲しい気持ちにならずに済むようになった。これは画素数の問題なのでライカ判に限らないが、フィルムのライカ判はとてもとても厳しいフォーマットだったのだ。自由度が広がったデジタル写真では、構図の大きな不備をトリミングで救うのはどうかと思うが、適切な判断のもとトリミングで画角を調整する手はありだと思う。商業的な写真では印刷されるスペースの都合もありトリミングが前提なのだから、作品づくりで絵を切り詰めることを蛇蝎のごとく嫌う必要はないだろう。

では、テレコンバーターはどうだろう。超望遠レンズであと一息のところを伸ばすのには便利だが、Standard lens lineupの互いに干渉せず競合しない差の考えに基づくなら、他の焦点距離で使っては利が薄いと私は思う。200mmに2×のテレコンバーターを使用して400mmともなれば、まるで別物のレンズである。しかし、2×のテレコンバーターは画質劣化が大きい。1.4×で実現される差なら、そもそものレンズ選択を変えたほうがよい。荷物を最小限にしたいならしかたないが、トリミングで対応したほうがよいようにも感じる。

いずれにしても、ワーキングディスタンスとアングルを最適化できないならStandard lens lineup 、あるいは他の考え方でレンズを用意したとしても成果を挙げられない。レンズごとの画角相関が、即ワーキングディスタンス、即アングルとして手足が動くものとなっていなければならないのだ。

Fumihiro Kato.  © 2016 –

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Profile

F.Hiro.K
加藤(文)文宏 / Fumihiro Bun Kato a.k.a Hiro.K
写真家・作家 / Photographer Author
・北海道北見市生まれ。
・大学卒業時までに詩集「無題あるいはサラバ」、同「Cadenza」発表(共に絶版、在庫なし。「Cafebza」別装丁私家版のみあり)。
・スタジオ助手、写真家として活動の後、広告代理店に入社。
・2000年代初頭の休止期間を除き写真家として活動。(本名名義のほかHiro.K名義他)
・広告代理店、広告制作会社勤務を経てフリー。
・不二家CI、サントリークォータリー企画・取材、Life and Beuty SUNTORY MUSEUM OF ART 【サントリー美術館の軌跡と未来】、日野自動車東京モーターショー企業広告、武田薬品工業広告、他。アウトレットモール広告、各種イベント、TV放送宣材、MIT Museum 収蔵品撮影 他。
月刊IJ創刊、編集企画、取材、雑誌連載、コラム、他。
・長編小説「厨師流浪」で作家デビュー。「花開富貴」「電光の男」他、小説のほか、エッセイ等を執筆・発表。
・獅子文六研究。
・インタビュー & ポートレイト誌「月刊 IJ」を企画し英知出版より創刊。同誌の企画、編集、取材、執筆、エッセイに携わる。
・各メディアにおけるスチル撮影。
・オリジナルプリントの製作、販売。
・JSAHP正会員
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