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前回は、iosデバイスとiTunesで管理している楽曲の同期についてのどたばたを書いた。icloudは便利な機能を提供してくれるのだが、iPod touchの同期をicloud経由にした場合、ALACは雲の先のサーバでAACに変換され同期されてしまう。これではALACを指定してリッピングした意味がないので、iosデバイス側のミュージック.appのicloud利用を停止してから、有線にてiTunesと同期させる。などなど、といったあれこれである。
iPod touch 128GBを使いはじめて1ヶ月になった。この間の経緯を箇条書きにしてみる。
1.使用しないApple製アプリの削除。
2.TOWN wi-fi アプリの導入。
3.ONKYO HF Playerの導入。
4.一部のCDを24bit以上 96.000 kHzでリッピング。
5.Radius NePLAYERの導入。
これらが何を意図しているかとなれば、「iPod touch 128GBを音楽再生専用にして、高音質で聴く楽曲とほどほどの音質で聴くものに整理し、さほど重要視しない楽曲はwi-fi経由のAACで」ということになる。
正直なところ、出先等の環境で高音質の音楽をじっくり聴きこむというのはいろいろ無理で、ノイジーな環境ではAACで十分である。なのだけれど、ベッドにごろっと横たわってしばし音楽を聴くときはきれいな音を楽しみたい。みたいな、話だ。
では、ニセレゾこと「CDを24bit以上 96.000 kHzでリッピング」は効果があるのか、だ。私の場合、定番のXLDでリッピングしALACに変換しているのだけど、うーんちょっとだけ違うね、という感じ。そもそもiosデバイスのイヤホン出力は44.8 kHz制限があるので、HF PlayerやNePLAYERを使用したところで96.000 kHz分なんて再生に適応されない。そもそもCDは44.1 kHzが上限だ。さらに16bitである。再生アプリで44.8 kHzにアップサンプリングしても、この差を感じる取れるだけのオシログラフ並の聴覚を私は持っていない。効果を「うーんちょっとだけ違う」と実感できるのは主にDACを通してオーディオのスピーカーで再生した場合だ。
とはいえ、iPod touchからイヤホンを用いて聞いたときまったく無意味かとなると「違うように思う」と感じる。違いはHF PlayerやNePLAYERとミュージック.appの差かもしれないし(ミュージック.appは16bit 44.1 kH までのデータしか対応しないのでそもそも使えないが、再生アルゴリズムが違いによって音の差が存在する)、アップサンプリングのせいかもしれない。たぶん両方かなあ。アップサンプリングを強引に画像操作に喩えるなら、解像度dpiを高くしつつ同時に画素補完してサイズを大きくする操作に似ている。元データにはない部分を、隣接して存在するデータから類推しつくりあげる。画像の場合は劣化を意味するけれど、時間軸に沿って変化する音においてはより緻密に推移を再現することになる(のだと思う)。影響は、聴きやすさという感覚となって、たぶん感じられる。と、いった具合だ。
ただし、CDの元の録音や盤への記録に効果が大きく左右されるのを感じた。材質を吟味したハイスペックCD、録音とミックスが優れたアルバムは効果が大きいが、これらが並以下のものはちょっとね、と。逆に、不可逆圧縮のACCだからとバカにしたものでなく、録音とミックスがよく、AACに最適化したうえで圧縮しているらしい音源はアップサンプリングの効果がある。そりゃ、ハイレゾや可逆圧縮と比較したら劣るけれど。かなり頑張ってくれるのだ。
こうした経験を踏まえて、「iPod touch 128GBを音楽再生専用にして、高音質で聴く楽曲とほどほどの音質で聴くものに整理し、さほど重要視しない楽曲はwi-fi経由のAACで」が導き出された。具体的には、128GBの容量を最大限に生かすため、ALAC 16bit 44.1 kHでリッピングして転送するソース、ALAC 24bit以上 96.000 kHz でリッピングして転送するソース、Apple Musicでみつけて聴き放題という会費制で落とすソースに分けることになった。そして、Apple Music用にミュージック.app、他はHF PlayerやNePLAYERを使用。前述のようにミュージック.appは16bit 44.1 kH以上に対応していないので、24bit以上 96.000 kHzのソースは手動でiPod touch 128GBに転送同期している。
iPod touch 128GBを買った意図は、iPod classicのハードディスクが満杯になったこと、そしてApple Musicであれこれ試し聴きしたりまじめに聴いたりするためだった。しばしばApple Musicの配信はAACだからダメと言う人がいるが、AACの性質については前述したような要素があるし、既知未知問わず膨大な音源を聴けるメリットを私は感じているのだ。で、真性ハイレゾを聴きこむだけが音楽の聴き方ではないということだ。また真性ハイレゾを聴き込みたくても環境が揃わなくては、である。
こうしてiPod touch 128GBを用途に即して調教している訳だが、なぜHF PlayerやNePLAYERふたつのアプリケーションを使用しているかである。私の好みを言えば、ONKYOのHF Playerがわずかに好みの音かもしれない。NePLAYERは「radius AL-LCS22S」でメモリー容量を拡張する予定のため、どんなものかなと、いろいろ慣れておかなければとインストールした。
iosデバイスはメモリーを単純には拡張できない。仕様なのだし、わかった上でApple Musicの恩恵を受けるため、iPod touch 128GBを買ったのだから、これは納得している。もしメモリーを拡張したければ、専用の読み取りアプリとメモリーを一対で導入することになる。つまり、読み取りアプリの性質と使い勝手でどの銘柄のメモリーを買うかが決まる。冒頭に書いたように、私は「iPod touch 128GBを音楽再生専用」にしたので、読み取りアプリは音楽重視で選ぶことになる。となれば、現状では「NePLAYER」と「radius AL-LCS22S」の一対一択だ。
「radius AL-LCS22S」は中途半端である、という声がある。ライトニングコネクタが占有されればDACへの接続方法がなくなるから、こういう目的ではハイレゾ再生をうたっているNePLAYERは宝の持ち腐れと言いたい人の気持ちはわかる。また、iPod touch のイヤホン出力の上限規定があるから、ハイレゾ音源を保存しても無意味と言いたい人もいるだろう。もし、ライトニングコネクタを占有したとしてもハブ機能のようなものがあれば、USB DACを経由してイヤホンやヘッドホン、はたまたスピーカーに出力できるのにと言いたい人もいるはずである。私も、ハブ機能のようなものは欲しい。だけれど、ALAC、ALAC 24bit以上 96.000 kHzといった音源を入れるだけでもよいのではないか。
実際のところ微々たる差ではあるけれど、気持ちの上でちょっとだけ贅沢なソースを聴きたい。また、AACではなく可逆圧縮音源としてリッピングし、日々増加するアルバムを保存しなければならない(ならないと感じるのは私個人の気持ちだが)のだから、内蔵メモリーの工面にあたふたするよりよいのではないか、と。つまり、こういった用途が「radius AL-LCS22S」のメリットを活かせるだろう。ハイレゾだよ! と訴求されているけれど、まあそれは流行だし、実際のところハイレゾ音源をNePLAYERで再生できるからだし、で。ハイレゾと、そこそこの音質のフォーマットの違いを聴きとれるけれど、小型のデバイスを持ち出す機会でハイレゾを堪能するような環境は極々稀れだろうしね。
Fumihiro Kato. © 2016 –
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