ストロボを買い増したい、から始まるあれこれ

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写真用品、カメラ周辺機材で写真のデジタル化によって地殻変動が大きかったもののひとつにライティング用品がある。前回、定常光について触れたが今回はもっとざっくりしたストロボの話をしたい。

と、言ってもいつも同じ話をしているような気もする。

デジタル化で撮影感度の変更が簡単になり、さらに高感度でフィルムと比べものにならない高画質が得られるようになった。こうなるとストロボの出力はさほど高くなくてもよいことになり、さらに二次電池にリチウムイオンバッテリーが使われるようになるとモノブロックとクリップオンストロボの境界が曖昧になっていった。

クリップオンとはカメラに直接取り付ける構造のことなので、もちろんモノブロックに分類されるストロボとは違う。しかし今まで電源コードが必須だったモノブロックがコンセントから解放された意味と意義はとてつもなく大きく、使い勝手のうえでクリップオンストロボに限りなく接近した。

ロケ撮影でどこかへ出かけるとき、以前は電源別体式いわゆるジェネを持ち運んで使った。とうぜん撮影先でコンセントをお借りすることになる。では電源が確保できなかったり、しにくい場合はどうするかといえば、諦めるか電源車でも用意するほかなかった。

CM撮影ならまだしもスチル撮影で電源車を確保するなんて、なかなかできたものでない。

大出力でバッテリー駆動のストロボに、実は昔からミニカムがあったが記念撮影、集合写真用に限定される印象がつきまとって幅広く使用されてきたとは言い難い。ここにGODOX AD360が登場してバッテリー式ストロボの概念と価格相場をひっくり返してしまった。ミニカムとAD360の違いは、ニッケル水素・ニッカドバッテリーを電源にするかリチウムイオンバッテリーかにあるくらいのものと考えてよい。

その後のGODOXの製品展開はご存知の通り。また各社リチウムイオンバッテリーを使うモノブロックや発光部別体型のラインナップを続々と充実させて行ったのもご存知の通りだ。

リチウムイオンバッテリー式ストロボには、バッテリーの劣化と劣化後に同型品がちゃんと手に入るのかという問題と、充電が空っぽになったらただの箱問題などがあるけれど、どこでも発光させられブレーカー落ちも気にしなくてよいのは気が楽だ。ということで、もう一組買い増ししたいなと思うことがある。電源をコンセントから取るストロボは既に所有しているから、用途や構造違いのものと割り切ったうえでのバッテリー駆動モノブロックの買い増しだ。

そこで今どのような製品があるのか見回したら案外選択肢がないのだった。

私はGODOX AD360のクリップオンを膨張させたような姿とか(ヘッドとボディの角度を変えられ、スタンドに取り付けたときディスプレイを撮影者側に向けられるとか)、何の工夫もないチューブ周りを評価していて、あわせて出力も適度だと感じている。

もちろんモデリングランプは欲しい。欲しいけれど、現状ではLEDモデリングランプの出力を上げれば発光回数に影響するし、バッテリー容量の限界によって制限を受け出力を下げるとお飾りでしかなくなる。あとはバッテリー共々筐体を大型化させるほかない。

なにもかも自分のペースで、自分でコントロールできる撮影ではLEDモデリングランプを消灯すれば済むかもしれないが、そうではないケースで使いがちなのだから、シャッターを押すまでの待ち時間やなんやかやで(とくに私の性格では)モデリングランプを点けっぱなしにしそうだ。

AD360では色温度の問題がなきにしもあらずとはいえ、その厳密さは期待していない。また、この手のあちこち持ち出す機材として転倒、落下などでダメになっても気が楽な価格というのはありがたい。

ところが、カタログ落ちではないようだけどGODOX AD360の流通量が撃滅して売価があがっているのだった。現時点ではCONONMARK B4と似たり寄ったりの価格かもしれない。CONONMARK B4も気が利いたバッテリー式モノブロックとはいえ、GODOX AD360(厳密にはII)を所有している私は他のブランドを混ぜて複雑化させたくない。変えるなら、いっそすべて変えたい。

AD360について、「あれでいいんだよ」と言いたい。別にGODOXでなくても同類、同等、類似のものがあればそれでよい。実はTTL連動調光もいらないし、ハイスピードシンクロ(FP発光)も優先事項ですらない。単三乾電池8本で駆動するmobilight D200的なものでも要件を満たしているならそれでいい。D200は200Wsだが、TOKISTARのワイドトレーディング扱いで3万円を切る価格、TIROYAブランドのまま売られているものは2万円を切る価格で販売されている。これだったら倒しても水没させても懐の痛みは限りなく少ない。

私はmobilight D200についてカタログ情報しか知らないが、赤い筐体や乾電池駆動にキワモノめいたものを感じるとしても、(個人的な機材勘からだが)たぶん極めて普通と思われる。そしてクリップオンストロボを3〜4台束ねて使うより、初期投資額から使い勝手、撮影結果まで上だろう。200WsといえばGODOX AD200、250WsならProfoto B10などがあるけれど、サイコロ型と赤い筐体と乾電池駆動(ニッケル水素充電池推奨)でもよいなら比較検討して損はない。リサイクルタイム公称約1.8秒だし、むしろ乾電池駆動が大きなメリットになる可能性がある。単三ならどこででも手に入る、飛行機への持ち込みで制限を受けない、ニッケル水素充電池はまだまだ生産が続くだろう。

つらつら書いてきたことに私の好みがはっきり表れている。それは他の人にとって愚にもつかないものかもしれない。

以前、プロペットのMONO300Bを褒めた。従来からのモノブロックスタイルでリチウムイオンバッテリー駆動を実現したストロボだ。300Wsの出力がよいし、従来どおりの簡単なチューブ周りの構造もよいし、バッテリーがマクセル製の汎用品なのもよい。ただしGODOX等のワイヤレスリモートコントローラーの価格に慣れきった人にとってMONO300Bの発信機はかなり割高に感じられるだろう。

いずれにしても、ありふれた発光部、スイッチを入れて調光するだけの操作系が理想で、AD360の無線か赤外線かスレーブかマスターかの設定ですらわずらしく思えるのだった。小型が望ましいし、発光部と電源部は別体のほうがよく、パーツを買いそろえたりあれこれして別体化するより最初から別々であってほしい。そして、いまどき200Wsで十分なのかもしれないけれど300Wsは欲しい。

「案外選択肢がない」と書いたが、これら理想が反映されたものがバッテリー駆動のモノブロックの進化形でなくて当然だろう。なので古典的とも言えるAD360(II)や、なんだったら旧モデルを起点にあれこれ考えざるを得ない。他の人のことはわからないが、私は光が欲しいだけなのだ。GODOX以外だろうとなんだろうと、信頼度が向上した製品があれば喜んで買う。ただそれだけの話のため、ながながと書いてしまった。

© Fumihiro Kato.
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・スタジオ助手、写真家として活動の後、広告代理店に入社。 ・2000年代初頭の休止期間を除き写真家として活動。(本名名義のほかHiro.K名義他) ・広告代理店、広告制作会社勤務を経てフリー。 ・不二家CI、サントリークォータリー企画、取材 ・Life and Beuty SUNTORY MUSEUM OF ART 【サントリー美術館の軌跡と未来】、日野自動車東京モーターショー企業広告 武田薬品工業広告 ・アウトレットモール広告、各種イベント、TV放送宣材 ・MIT Museum 収蔵品撮影 他。 ・歌劇 Takarazuka revue ・月刊IJ創刊、編集企画、取材、雑誌連載、コラム、他。 ・長編小説「厨師流浪」(日本経済新聞社)で作家デビュー。「花開富貴」「電光の男」(文藝春秋)その他。 ・小説のほか、エッセイ等を執筆・発表。 ・獅子文六研究。 ・インタビュー & ポートレイト誌「月刊 IJ」を企画し英知出版より創刊。同誌の企画、編集、取材、執筆、エッセイに携わる。 ・「静謐なる人生展」 ・写真集「HUMIDITY」他
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