撮影、靴、移動、見た目

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タイトル通りの話をしようと思う。

撮影と服装と靴は一筋縄ではいかないものがあって、撮影のTPOに合わせる必要はあるし、TPOなんて関係ない自然や出来事を相手に効率と安全を追求したりとまあ大変である。

それでも服装のほうは(ダサイかどうか言い出さなければ)選択が楽なのだけど靴はどうしようもないくらい悩んだりする。シビアに用途と性能が問われるからだ。

もしかしたら私が異常なのかもしれないが、たいした甲斐性もないくせに靴の趣味のストライクゾーンが狭いのも問題に拍車をかけている。ということもあって革靴が求められたり、そのほうがいいかなという時の選択肢に応える靴はフォーマルからカジュアルまで完備されている。

問題は実用性のある靴が必要なシーン。

そんなのラバーソールの靴ならなんだってよいだろ、というわけにいかない。

動きやすく、滑らず、蒸れず、疲れず、運転しやすくとか、どうしても考えてしまう。スニーカー的なものが万能そうだけど、これではカジュアルすぎるときもたまにあるし、深い砂とか磯とか泥濘地とかガシガシ歩くのはスニーカー向きではない。

スニーカーではカジュアルすぎるシーンではラバーソールのローファーを用意している。脱いだり履いたりが楽なうえに、ラバーソールだから革底のように気を遣う必要がない。

では、深い砂とか磯とか泥濘地とかガシガシ歩くにはどうしたらよいか。

実用性だけで言うと、ちゃんとつくられた長靴がいちばんなのですよ。だから私のクルマには職人さんが現場で履くタイプの長靴を積んでいる。

長靴は作品づくりの撮影で自然のなかに入るとき履いて重宝しているけれど、運転しにくいし大袈裟すぎるときもあるしもう少しスニーカーに近い感覚で防水性があり、滑りにくくて、多少傷がつこうと汚れようと構わないものを探し続けてきた。

「アウトドア用の靴があるだろ」と、当初は私も考えた。だけど見かけがいい防水が効いたブーツなんて履いたら、けっこう気を遣うだろうなと自分の性格から想像される。またアウトドア用という街中で履くファッションと化しているし。もっとさあ長靴的なものでいいのにと。

そうなのだ、長靴の実用性が最高だけど長靴そのまんまでは困るシーンがあるから探し物をしているのだ。

いろいろ手にとってみたり、実際に使ってみたりしたあげく、ついにお手上げになってみなさん大好きなコレを買った。

Workmanの雨靴として知られたPVC防水シューズ。画像は売れ筋のグリーン+ブラックだけど、買ったのはブラック+ホワイト。

1500円だからラーメンに餃子つけたくらいの金額なんだろうけど、安物買いの銭失いの悔しさは味わいたくないのだった。

ちなみにコレ、Workmanの靴と認識されていて実際にもほぼWorkman用の専売品ぽくなっているけれど九州に本社があるスター・トレーディングが中国で生産している靴だ。同社のAmazon内のショップでも販売されている。

で、履いてみてどうか。

ほとんど必要最低限のデザインしかされてなく余計な装飾や意味づけがないので、写真や店頭陳列で見て想像していた絵づらより無難に履けた。そりゃもちろんおしゃれではないけどね。

ある時期までつくりが荒くて金型から出したあとのバリ取りが雑だったりしたのだけど、買うかやめるか迷って結果的に観察していたら最近あきらかに仕事が丁寧になってきた。ずっとこのままかわからないとしても。

ブラック+ホワイトにしたのはグリーンがあまり有名すぎるのと、全体的に黒っぽい撮影仕様の服装なので。ホワイトのつま先とソールは汚れや傷が目立つかなとは思うけれど、水をかけてこすればなんとでもなる。傷がつくのは、そういう靴なんだし。

この靴の素材PVCはもともと柔軟と言い難く、しかも結構厚いPVC製なので足を入れにくい。ハイカットの靴ということもあって靴紐を結んだままでは足は入らないし、靴紐を解いても柔軟性に限界があるから足を入れるのは一苦労だ。ということで、脱ぐときもスパッとは脱げない。

これは1サイズ上にしても変わらないので、履きやすさ脱ぎやすさを考えずフィット感だけでサイズを決めたほうがよい。そして1サイズ上でもPVC生地の足への密着感が変わらずぴったりしているから、小指の側面、足指の付け根あたりの圧迫感と踵(かかと)の収まりを基準にしてサイズを決めるのがよいと思う。

柔軟性に乏しく伸び縮みがほとんどないPVCであることを考えると、いつもの靴のサイズより1サイズ上を検討してもよいと思う。履いたり脱いだりするとき柔軟でないだけでなく、履いているうちに足型に従ってフィット感が出ることもないのだ。

PVC防水シューズは細かいことを言わなければ私の足にフィットしていて、やや気になるのは踵(かかと)だけだ。で、この踵の微妙な浮き具合からして大多数の人は同じ感想を抱くと思われる。試し履きしてしっかりフィットしたら金型とのラッキーな一致と言ってよいだろう。

踵(かかと)がフィットするか否かは重要で歩きやすさや疲れにくさと直結するし、下手をすると踵が擦れて靴擦れを起こす。特にブーツ状の靴では踵の靴擦れを起こしやすい。もし違和感があるなら、迷わず好みの中敷/インソールを買って調整したほうがよい。

で、PVC生地の足への密着性とともに通気性が皆無なので、夏場はもとより距離を歩いたり長時間履きっぱなしだと足が蒸れる。これは防水性とトレードオフの関係で、この靴は防水を売りにしているアウトドアシューズと比較にならないくらい長靴ライクな仕様になっている。

収縮しないとか蒸れるとか結構難儀な素材のように感じられると思うが、防水性、耐摩耗性などは他の追随を許さないので、そんじょそこらの防水靴とは差が歴然としている。

アウトドアシューズと比較して耐えられる水深は同じようなものだが、水に浸かる時間、出たり入ったりかぶったりの頻度で差がつくと思ってよい。なぜなら合成皮革でもゴアテックスでも防水性フィルムをサンドした布でもなく、PVC製で長靴そのものだからだ。

必要十分な性能だけど、ソールはごくごく普通の長靴タイプで特別に滑りに強いわけではない。また小石が入り込みやすいソールパターンだ。なお注意すべき点は温度低下で硬化する傾向があるPVC素材なので、寒冷地では靴そのものが硬直しがちだろうしソールのグリップが落ちるので滑りにくさに期待しないほうがよいところだ。

ということで、大絶賛して最強の防水靴と言ってしまっては大袈裟すぎる。ひとつひとつの機能で、この靴を上回るものはいくらでもある。そして、ひざ下丈のほんものの長靴こそが最強の防水靴だ。

でも雨降りの市街地では十分すぎる性能だし、庭仕事などでも活躍できそうだし、海辺や川べりに近づいたり堤防の上を歩くのに向いている。泥濘地を歩いてドロドロになっても洗えば汚れは落とせる。1500円と言っても使い捨て性能ではなく、毎日履かないならソールは長持ちするだろう。

なんだけど、結局のところ最大のメリットはほとんどデザインされていない外観とラーメンと餃子を注文するくらいの値段であまり期待せず買って期待せず履けるところだ。

期待しちゃダメ。デザインも機能も期待しないままサクっと買って、あれっ思ったよりいいやとなるべき靴(長靴)なんだと思う。この靴はあくまでも長靴の一種で、アウトドアシューズでもおしゃれなスニーカーでもないのだ。

撮影用に限って言えば、撮影に集中すべきとき靴周りで不具合が出るのは靴のデザイン云々関係なくほんとうにダサい話だ。自分一人でダサダサになっているのはどうでもよいけれど、誰かが関係しているとき流れの足を引っ張るのは救いようがないほどダメだ。

そして悪目立ちせず、実用と割り切って見ることができる防水靴としてPVC防水シューズは悪いものではないと思うのだ。

© Fumihiro Kato.
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・スタジオ助手、写真家として活動の後、広告代理店に入社。 ・2000年代初頭の休止期間を除き写真家として活動。(本名名義のほかHiro.K名義他) ・広告代理店、広告制作会社勤務を経てフリー。 ・不二家CI、サントリークォータリー企画、取材 ・Life and Beuty SUNTORY MUSEUM OF ART 【サントリー美術館の軌跡と未来】、日野自動車東京モーターショー企業広告 武田薬品工業広告 ・アウトレットモール広告、各種イベント、TV放送宣材 ・MIT Museum 収蔵品撮影 他。 ・歌劇 Takarazuka revue ・月刊IJ創刊、編集企画、取材、雑誌連載、コラム、他。 ・長編小説「厨師流浪」(日本経済新聞社)で作家デビュー。「花開富貴」「電光の男」(文藝春秋)その他。 ・小説のほか、エッセイ等を執筆・発表。 ・獅子文六研究。 ・インタビュー & ポートレイト誌「月刊 IJ」を企画し英知出版より創刊。同誌の企画、編集、取材、執筆、エッセイに携わる。 ・「静謐なる人生展」 ・写真集「HUMIDITY」他
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