内容が古くなっている場合があります。
(2019.10.5 図に誤りがあったため差し替えた。)
・速度規格
・UHS規格
・A1規格
これらをどう評価して、どのSDメモリカードを目的に応じて選択すべきなのか。
▪️基本の理解のために
SDメモリカード(厳密にはSDHC、SDXCメモリカード)を購入しようとすると、容量だけでなく様々な規格があり特に転送速度の規格が複数あるため、どの規格をどのように評価して選択すべきか悩むかもしれない。
SDメモリカードの転送速度を示す規格は2019年現在、[スピードクラス][ビデオスピードクラス][UHSスピードクラス][A1]の4種ある。
このうちA1規格は従来の速度規格と異なるため、用途ごと求められる転送速度を説明する段で触れることにする。
なおSDメモリカード(厳密にはSDHC、SDXCメモリカード)には通常の大きさのもののほか、(ほとんど使用されなくなった)mini SDカード、(主流になりつつある)micro SDカードとサイズの違いがあるが、ここではすべてSDメモリカードと書き表すことにする。
これらのうち[スピードクラス][ビデオスピードクラス]はマーク(略号)に表示されている数字にだけ注目すればよいし、両者は転送速度にだけ注目するなら同じ意味であると考えて問題ない。各数字は転送速度を表し、それぞれの数字にMB/秒をつければ最低転送速度になる。
図中に記述したが、SDHCメモリカード規格が制定されたとき先ず[スピードクラス]が制定された。だが当初想定されていなかった30MB/秒を超える転送速度の製品がつくられるようになり、あらためて[ビデオスピードクラス]が制定された。このとき次世代フラッシュメモリに使用される3D NANDに対応した規格になった。[スピードクラス][ビデオスピードクラス]は地続きの規格なのだ。
したがって、併記されるときは[スピードクラス]=6 / [ビデオスピードクラス]=V6のように対応し、[スピードクラス]=6 / [ビデオスピードクラス]=V90 のようになることはない。
次に、[UHSスピードクラス]はSDHC I / SDXC Iまたは(普及していないが)SDHC II / SDHC IIは従来のメモリカードと互換性はあるが、対応機器でないと高速な転送速度を十分に活かしきれない別規格のカードの転送速度の目安を示している。
2017年にUHS-III規格が登場したが、これも普及しているとは言い難い現状だ。
上図に示した通り、SD / SDHC / SDXCメモリカードの接点に、SDHC II / SDXC IIでは更に接点が増えている。SDHCメモリカードが使える機器ではSDHC IおよびSDHC II メモリカードを、SDXCメモリカードが使える機器ではSDXC IおよびSDXC IIメモリカードが使えるが、UHS I / II対応でないなら前述のように性能を完全に引き出せない。
UHS I / II対応でない場合は、表示されている[スピードクラス][ビデオスピードクラス]が転送速度の目安になる。
▪️用途
SDメモリカードの転送速度の目安として、動画で要求性能が高いことと動画規格を当てはめるとわかりやすいため多くのケースで動画データサイズが参考値にされている。当ページでも、この慣習にしたがって作図した。
動画撮影では参考値の通りであり、動画を記録するドライブレコーダーでは[スピードクラス]10以上、[ビデオスピードクラス]V10以上が要求される。
デジタルスチルカメラの場合、高速連写を続けるのでなければ低速なSDメモリカードでも記録できるが、保存に時間がかかりなかなかブレビューできないなど問題が生じる。
動画と写真ではアスペクト比が違うので動画規格とスチルの画素数を単純に比較できないし、時間軸に従い記録しつづける動画と基本的に一枚絵である写真の違いもあって事情は同じではない。ただフルHDがたった1920×1080ピクセルでしかないことを考えると高画素機にはそれなりの[ビデオスピードクラス]のSDメモリカードを使用したい。
音楽データをSDメモリカードに保存してプレイヤーで聴く用途では、転送速度への要求は低いので高速なメモリカードを選択する必要はない。書類等も同様だ。
━━ A1規格
スマートフォンではアプリケーションソフトをSDメモリカードに保存して起動させる需要がある。外部ストレージであるmicroSDカードを内部ストレージのように使う場合、SDメモリカードの低速性が動作のもっさり感につながり、場合によってはアプリの起動や動作が不可能になるケースもある。
アプリケーションソフトだけではなく、書類などを保存して開いて書き換える場合にも、保存先の外部ストレージであるmicroSDカードが低速では作業効率が悪いだけでなくアプリの動作に差し障りが出ることもある。
このため「内部ストレージと同じように扱って使える」(同じ転送速度ではないが不自由なく使える)microSDカードに対して、A1[Application Performance Class 1]規格が制定された。
A1と他の速度規格の違いは、ランダムアクセスと持続的なシーケンシャルアクセス双方の転送速度を総合して定義している点にある。
A1の連続データの最低保証転送速度は10MB/秒であり、[スピードクラス]10、[ビデオスピードクラス]V10、[UHSスピードクラス]Iに相当し、現行のスマートフォンの内蔵ストレージと比べ10MB/秒はあまりに低速である。
このためスマートフォンでの使用で、A1規格準拠でない更に高速なSDメモリカードを使用したほうが結果がよい場合もある。またスマートフォンがA1規格に対応しているか否かも重要になる。
スマートフォン以外の機器でデータを書き込む場合は、いまのところA1規格であるかどうか考慮する必要はまったくない。
A1規格については、更に高速な規格登場が待たれる現状と言える。
▪️その他
上掲の図で各SDメモリカード規格のファイルシステムを表記したが、これは各規格が制定された時点のPC等のハードディスクのファイルシステムをなぞったもので、より大容量のSDメモリカードが求められ新規格が制定されるたび変更を受け図示したようになった。
現在SDメモリカードは絶滅種で、市場に出回っているのはSDHCメモリカードとSDXCメモリカード(SDHC IとSDXC I)だが、それぞれの工場出荷時のファイルシステム(FAT32またはexFAT)は後から別のファイルシステムに置き換えることが可能だ。
SDHC対応機器とSDXC対応機器の違いは、機器がFAT32までしかファイルシステムを読み書きできないか、FAT32だけでなくexFATまで読み書きできるかの違いである。
機器によってはSDメモリカードの容量制限や実際に使える容量が限定されている場合もあるが、ファイルシステムさえ書き換えてやればSDXCに非対応でもSDXCカードが使えるケースが多い。
© Fumihiro Kato.
Unauthorized copying and replication of the contents of this site, text and images are strictly prohibited. All Rights Reserved.