AI AF Micro Nikkor 105mm F2.8Dと8ヶ月過ごした

Ai AD Micro Nikkor 105mm F2.8 D
Ai AD Micro Nikkor 105mm F2.8 D

私は中望遠では135mm、105mmが好みで85mmは被写体との間合いが暑苦しく感じられる。と、歳をとるとともに嗜好が変わった。これらのなかでもっとも肉眼の感覚とシンクロするのが105mmで、この焦点距離はマイクロ(マクロ)レンズがあり被写体との間合いを自由自在に取れるのも好きだ。

現在ニコンには105mmのマイクロと通常のレンズ、DCとカテゴライズされている絞り値ごとボケを最良に設定できるレンズがFマウントにある。DCは特殊としてもマイクロと通常のレンズはどちらもよいレンズなのだけれど、一人でとぼとぼ歩きまわったりドカドカ砂丘に入って行く撮影では大柄なところが玉に瑕になる。もっとコンパクトな105mmが欲しいということで、既に廃盤になって久しいAI AF Micro Nikkor 105mm F2.8Dを年初に中古で買った。

冒頭に書いたように105mmが異常に好きな私は、Ai NIKKOR 105mm F1.8S(https://www.nikon-image.com/enjoy/life/historynikkor/0059/index.html 🔗)を所有してデジタル環境で使用していたことがある。このレンズは実に楽しいレンズで写りに程よさがあったのだが、80年代初頭のレンズだけにパープルフリンジが気になり手放した。フィルムで使うならいまだに利用価値が高いのではないかと思う。

ではAI AF Micro Nikkor 105mm F2.8Dを現代の比較的画素数が多いデジタルカメラで運用してどうだったか、だ。

万人に勧められないが、私は使用しているし、用途がうまくハマるならなかなかのものだ。現代の高性能レンズが重厚長大化し、さらにシビアな雰囲気を纏っているなか、AI AF Micro Nikkor 105mm F2.8D的なレンズはなかなか存在しない。ではAI AF Micro Nikkor 105mm F2.8Dとは?

正直に書くと、やはり「いまふう」ではない。AI AF Micro Nikkor 105mm F2.8Dはフィルムを前提にしてつくられた1993年発売のレンズだ。なにが「いまふう」ではないのかというと、階調の描写が太い(いわゆる線が太いと言われる)傾向がもっとも影響しているように感じる。それによって使えないレンズなのかとなると「使い出はある」。

たぶん、これでは言っていることが伝わらないだろうと思われる。

これまで複数回にわたってAI AF Micro Nikkor 105mm F2.8Dをレビューした記事を掲載した[こちらに一覧と記事へのリンクがある https://pixel-gallery.xyz/?s=AI+AF+Micro+Nikkor+105mm+F2.8D 🔗]。異なる絞り値、異なる撮影条件、異なる被写体を撮影し、現行Gタイプの105mm マイクロと同条件での比較もした。とうぜんのこととして、光線状態が厳しければ絞り開放付近で年代なりのパープルフリンジが出るし、解像性能はマイクロ(マクロ)とあってもともと優秀なのだが現行品より劣っている。パープルフリンジは悪条件で出るのだし、現行品より解像性能が劣っているとしても撮影像を見てがっかりするどころか「ぱっと見」ではまったく気づかないくらいである。

階調の描写が太い点が、Gタイプのマイクロとの最大の違いになる。違うといっても両レンズを頻繁に使用する人なら感じるだろうが、こういう比較と無縁な人には「?」だろうと思われる。

階調の描写が太い(いわゆる線が太い)とは、無段階に変化する明暗・濃淡のうち明るい部分や暗い部分が飛んだり潰れたりする状態である。

一般的に線が太いと言う際に立体感描写について語られるのは稀れで、漠然と細い・太いと指摘されるだけだったり、人間のまつげや木々の枝のような細い物体の描写を表現していたりする。これは「線が太い」という言葉を頻繁に使う人にとっては納得が行く説明なのだろうが、写真の描写のもっとも重要なものへの洞察が甚だしく欠けている。階調性が乏しく「線が太い」なら、針金のように細い物体がどうこうという問題ではなく全ての物体の立体感描写に難が出るのである。

立体感描写に難が出る理由は上掲の模式図を見てもらえばわかるだろう。

ただしレンズは面白いもので、レンズAと比較してレンズBの何かが劣るとしても存在意義は使用者しだいだ。

たとえば階調性がやや劣ることで陰影の描写が割り切りよくなり、線がざらっとした描写になり、モノクロでは独特の迫力が増す場合がある。

また、存在意義は光学性能に限った話ではない。

ここで話が戻って携帯性である。AI AF Micro Nikkor 105mm F2.8Dはいまどきのデジタル高画素対応で手ぶれ補正内蔵のレンズと比べて太さ、長さが小さめで重量が軽い。また精神的なものだろうが、とても気軽に持ち出せて気軽に使える。このメリットと現行Gタイプのマイクロの太く長く重い点を天秤にかけると、大荷物を背負って潮風・海風・砂塵のなかへ深い砂を踏んでは入り込むときはAI AF Micro Nikkor 105mm F2.8Dを選択したくなる。

私は紛争地帯で撮影するタイプではないが、そういう場所に単焦点の中望遠かつマイクロ(マクロ)を持ち込む必要があるならAI AF Micro Nikkor 105mm F2.8Dをカメラバッグに詰め込むかもしれない。

とはいえ「いまふう」ではないところとして、特定の条件で階調の描写が現代のレンズに慣れた目から何か違うもののように写ることがある。語弊がある表現だがAI AF Micro Nikkor 105mm F2.8Dは現代の感覚では「平面的」な描写だ。

このレンズが登場した1993年当時の同年代のレンズを、ライカ判ではキヤノンを使用していたが、AI AF Micro Nikkor 105mm F2.8Dの描写はあの時代の写りを彷彿させるものがある。厳密にはまったく違うのだろうが雰囲気が似ている。

たぶん(いやぜったい)作例をここに貼っても、誰もわかってくれず共感が得られないだろうが幾度となく掲載した写真を紹介する。

AI AF Micro Nikkor 105mm F2.8D + D850

現行Gタイプと比較したテスト撮影(D810とD850での比較を含む)の結果が以下になる。カンバスの質感、枝と果実の描写を見比べるとわかりやすい。(クリックまたはタップすると画像が拡大され比較しやすくなる)

これらは仕事場でざっくりストロボ光を与えた作例だが、風景を撮っても80年代の半ば以降から90年代の写真を彷彿とさせる立体感になる(ような気がする)。

風景ではこんな感じ。

たぶん撮影した私にしかわからないのだろうが、上下2枚のカットでは上の写真に顕著に感じられる。もし「?」なら、AI AF Micro Nikkor 105mm F2.8Dを現代のデジタル環境で現代のレンズと混ぜて使用しても苦になることはないだろう。

過去に紹介した作例を再び掲載する。

AI AF Micro Nikkor 105mm F2.8D・F8

いまどきの感覚で使える万能性は乏しいか存在しない。しかし別の側面に美点を見出すなら使い所がある。これからの時代に再び描写の頂点をマークできる機会がくるわけではないし、程度のよい中古が2万円程度として価格を超える使い出があるかどうかは使用者しだいだ。私は1本持っておいてよかったと感じるけれど、さらなる高画素化にどこまで対応できるか不透明ではある。

オートフォーカスでなければ撮影できない人には、AFとMをクラッチで切り替える方式はともかく速度に不満が爆発するだろう。手ぶれ補正が内蔵されていない点に不安を覚える人には、そもそも向いていない。

したがって手放しで他人に勧められるレンズではないし、90年代のレンズで現代の感覚が通用するものはないと断言できる。それでも8ヶ月付き合い続けて、あっちにもこっちにも持ち歩くくらいの関係なのだ。

© Fumihiro Kato.
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・スタジオ助手、写真家として活動の後、広告代理店に入社。 ・2000年代初頭の休止期間を除き写真家として活動。(本名名義のほかHiro.K名義他) ・広告代理店、広告制作会社勤務を経てフリー。 ・不二家CI、サントリークォータリー企画、取材 ・Life and Beuty SUNTORY MUSEUM OF ART 【サントリー美術館の軌跡と未来】、日野自動車東京モーターショー企業広告 武田薬品工業広告 ・アウトレットモール広告、各種イベント、TV放送宣材 ・MIT Museum 収蔵品撮影 他。 ・歌劇 Takarazuka revue ・月刊IJ創刊、編集企画、取材、雑誌連載、コラム、他。 ・長編小説「厨師流浪」(日本経済新聞社)で作家デビュー。「花開富貴」「電光の男」(文藝春秋)その他。 ・小説のほか、エッセイ等を執筆・発表。 ・獅子文六研究。 ・インタビュー & ポートレイト誌「月刊 IJ」を企画し英知出版より創刊。同誌の企画、編集、取材、執筆、エッセイに携わる。 ・「静謐なる人生展」 ・写真集「HUMIDITY」他
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