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膨大な写真データの安全な運用・保管の話(https://pixel-gallery.xyz/2019/07/14/膨大な写真データの安全な運用・保管の話/)という記事を書き、「安全確実なデータの運用」に重点を置いて、バルクで販売されている裸のハードディスクをリムーバルディスクか書き込み型Blu-rayディスクのように保管する方法を示した。この記事で省略した点、あとから書き足りなかったと感じる点について今回は書いておこうと思う。
この記事の構成
RAIDを組むとは
-RAIDを導入する際に知っておくべきこと
ディスクの故障、障害の原因は何か
-原因を知り障害を予防するための知識
保管メディア
-どのメディアをストレージとして使うか
ハードディスクの運用
-安全性が高いストレージ運用法
最後に
1 RAIDを組むとは
RAIDとは複数のディスクを1つのディスクとして扱う手法で、容量増や安全性の向上、速度の向上などさまざまなタイプの組み合わせかたがある。
RAID 0からRAID 6までの構成種別のうち、比較的小規模(事務所、自宅)な環境で撮影者が取り入れるのに現実的なのはRAID 0とRAID 1ではないだろうか。
RAID 0 (ストライピング)= 高速性を重視したストレージを実現 / 故障時の復旧不可
RAID 1 (ミラーリング)= 複数のディスクに同時に同じ内容を書き込み安全性を高める / 故障していない側のディスクを使い復旧
RAID 0は複数のハードディスクにデータを分散して保存するので高速性に優れている。RAID 1は組み合わせるディスクのすべてが故障しないかぎり障害を復旧できる。スチル写真家の場合、RAID 0で実現される程度の書き込み速度の向上より安全性第一なのでRAID 1を選択するのがよいだろう。
ではRAID構成のハードディスクを使うにはどうしたらよいのか。
a) ハードウエア方式
>a-1 RAIDを実現するコントローラチップが組み込まれたコントローラカードをPCのマザーボードに挿し、このボードから複数のハードディスクに接続する。
>a-2 ディスクアレイユニットと呼ばれる複数のハードディスクとコントローラチップが組み込まれたハードディスクケースをPCに接続する。
b)ソフトウェア式
>複数のハードディスクをPCに接続してOSの機能またはアプリケーションソフトでRAIDを実現する。
いずれの方法でも結果は同じだ。現在一般的なのは、a-2のディスクアレイユニット式とソフトウェア式のOSでコントロールする方法だ。ディスクアレイユニット式のメリットはPCのCPUに負荷がかからず買ってきたディスクアレイユニットを接続するだけでほぼ使用可能な点。ソフトウェア式のメリットはCPUに負荷がかかるが特別なハードウェアを購入する必要がない点にある。
MacおよびWindowsの現行OSにはRAIDを構成するためのアシスタントとコントロールする機能が付属している。
RAID 1を採用することで安全性は格段と高まるが、危険がまったくなくなったわけではないのを忘れてはならない。ソフトウエアまたはハードウエアの障害でRAIDを組んでいる複数のディスクすべてが故障したりデータが破損することもないとは言えないだ。
2 ディスクの故障、障害の原因は何か
ハードディスクが読み取り不可能になる原因は物理障害と論理障害に大別される。
物理障害とはハードウエアが機械的に壊れる障害だ。
論理障害とは、ディスクの目次に相当する[このディスクは何者か][ディスクのどの部分にどのデータが書き込まれているか]などが記録されているカタログが破損したり、消し去られたり、データそのものが破損または消し去られた障害だ。
物理障害に対して、ハードディスクを分解のうえ同じ型番の製品から部品を取って修理するバッファローが運営する復旧サービスや同様の業者もある。ただし、ニコイチで修理したからといってすべてのデータが復旧できるとは限らない。
論理障害は壊れたり消された目次に相当するカタログファイルを再構築できれば、どこにどのデータがあるかわかるようになりデータにアクセスできるようになる。ただし、完全に復旧できるとは限らない。データそのものが破損したり消し去れられていて、復旧する手がかりがディスク内にないなら復旧は不可能だ。
ハードディスクが読み取り不可能になったら、OS付属の機能でチェックまたは補修、サードパーティーのディスクユーティリーソフトで補修することで問題が解決する場合がある。解決できるのは論理障害だけである。
こうしたチェックと補修で解決できなかった場合は、深い追いして状況を悪化させずデータ復旧サービスを行っている業者に相談するほうがよいだろう。ただし、見積もり金額をはるかに超えた修理費を要求し、支払わないならデータは返さないと人質を取るような真似をする悪徳業者が後を絶たない。また技術力が乏しい素人とさして変わらない業者も多い。
明朗会計で物理障害にはニコイチ復旧手術もするバッファローのサービスは信頼できると思う。https://www.buffalo.jp/contents/service/recovery/ (新規タブで開く)
障害はひどい振動や乱暴な扱いを裂けても、ごくあたりまえな書き込み、OSやソフトのフリーズ、ハードディスクケースやケーブルの故障・接触不良・断線で生じる。しかたない部分もあれば、注意していれば防げるものもある。
次に挙げる保管メディアとしてハードディスクを用いる方法は、書き込み頻度を最小にして、機器との接続機会を減らすことで障害発生を抑えている。
3 保管メディア
Camera RAWデータは撮影ごと増え続け、データ1つの容量が大きい。また一期一会の撮影で得たデータなのに、ディスク障害で一瞬にして消え去ることもある。
撮影直後、Camera RAWデータはカメラからハードディスクに移動させるのが普通だろう。だが前述の通りハードディスクは物理障害や論理障害に見舞われる可能性がある。このためCamera RAW以外にも出力した画像ファイルもバックアップを取って保管している人が多いはずだ。
問題はデータ1つの容量が大きく、撮影ごと増え続けるCamera RAWデータの性質にある。また画像ファイルも動画ほどではないがかなり容量が大きい。
大容量を収められるメディアとして、DVD-RやRW、BD-RやRWといった光学メディアが使用されることが多い。こうした色素に記録するメディアは耐候性がかなり低いため、凹凸で記録する[M-Disc]のDVDやBlu-rayに保存している人もいるだろう。ただし書き込み・読み出し速度があまりにも遅く、書き込みエラーが発生しやすい点が光学メディアのデメリットだ。
最近はSDカードの価格が安くなっているので大容量SDカードにデータをバックアップすることを考えてる人がいるかもしれない。この方法の難点は、不揮発性メモリーカードに記録をいつまで維持できるか不明な点だ。データの読み出しや再書き込みがないと数年で消えるとも言われてる。ただし短期間の保管メディアとしては、物理的なメディアより高速に書き込めメディアのサイズがコンパクトな点で優れている。
さまざま試した結果、私が行き着いたのはハードディスクをリムーバルメディア扱いしてデータを保存する方法と前記事に書いた(https://pixel-gallery.xyz/2019/07/14/膨大な写真データの安全な運用・保管の話/)。こうして取り出したハードディスクを防湿庫で保管している。
手元のディスクに異常が発生したり、遠い過去のデータが必要になったとき、防湿庫からハードディスクを取り出しUSB接続のクレドールに挿して中身を検索する。これが光学ディスクだと検索に時間がかかり、探し出したデータを読み込むのにも時間がかかる。切羽詰まった状況で、これはかなりきつい。

現在ハードディスクをバルク(ケースなしのハードディスクそのもの)で買うと1TBあたり2000〜3000円台となり、光学ディスクを買うより圧倒的安価に大容量を手にすることができる。5〜6TB級のハードディスクには1TBあたり1000円台の製品もある。しかも、SSDには劣るもののそれなりの速度で書き込み・読み出しができる。
他の保管メディアよりハードディスクで懸念されるのは物理障害であるのは前述した通りだ。しかし書き込み・読み出しの頻度が少なく、PCにマウントする機会が圧倒的に少ない保管メディアとしてならほとんど物理障害と論理障害の心配はしなくてよいだろう。
ただ動かさない保管状態のハードディスクは軸受のグリスが偏ったり固着する可能性があるので、ときどき通電してやるべきだ。数ヶ月から1年ごと通電する習慣をつけるとよいだろう。
4 ハードディスクの運用
私は次のようにハードディスクを分類している。
[日常的に使用するデータを保存するディスク]
[日常的にバックアップするためのディスク]
[恒久的にデータを保管するためのディスク]
恒久的に残すデータ
このうち[恒久的にデータを保管するためのディスク]は必要なとき作成したりマウントするだけだ。どのようなバックアップにするか、いくつか方法がある。
a) 常にすべてのデータを1つのディスクに保存して行く。
毎回、過去から現在に至るすべてのデータをハードディスクに保存する。こうしたディスクがいくつも保管されていても無駄なので直近のものくらいだけを残す。10TB級のハードディスクがそこそこの価格で買えるので不可能な方法ではない。ただしデータが増えるごとバックアップに要する時間が莫大なものになる。
b) 差分のみ保管して行く。
初回のバックアップはすべてのデータを保存する必要があるが、2回目以降は差分のみ保存して行く。ただし保管中に過去のデータがディスク障害で消え失せる可能性がないとは言えない。
C) 差分保存と厳選データの二重保存
差分保存するが、過去のデータのうち最重要なものを別途時期をみて厳選して別ディスクにまとめるか、差分ディスク内に保存する。
現実的なのは b) かC)だ。フィルムのネガ・ポジでも劣化や災害で失われるものが皆無と言い切れないところがあるので、保管しているハードディスクの経年劣化などを心配するのは杞憂かもしれず羹に懲りて膾を吹くそのものかもしれない。
いずれにしろ[恒久的にデータを保管するためのディスク]に入れるべき、失われては困るデータとは何かを各自が定義する必要がある。
日常使用
RAID 1を組んだハードディスクは
[日常的に使用するデータを保存するディスク]
[日常的にバックアップするためのディスク]
のうち、いずれかに使うことになる。
どちらに用いてもよいと思うし、両方RAID 1にして更に冗長性を増してもよいだろう。
私は[日常的に使用するデータを保存するディスク]をRAID 1にしている。というのも、日常の作業に気が取られバックアップがおろそかになるのが普通だからだ。もちろんバックアップを自動化する方法がない訳ではないが、案件ごと事情や手順が違ったり、RAWデータと完成画像だけでなく中間素材などが雑多に出る場合もあるので、とくべつ何もせず二重化できるRAID 1を日常使用に割り当てている。
日常使用といっても、その日その日の作業に必要なデータと出力したデータだけでなく、参照する可能性があるデータも保存してある。ある程度の期間にわたるCamera RAWデータ、現像ソフトのカタログデータ、作業中のデータ、出力したデータといったところだ。こうした写真に直結したデータ以外は別のハードディスクで管理している。
[日常的にバックアップするためのディスク]は、見通しよくフォルダーで管理しているだけでとにかく思いつくたび雑多にデータをコピーして放り込んでいる。日常使用で生成したデータもそうだし、Camera RAWデータを取り込むときこちらにもデータを保存している。ルールを厳格に決めてデータをコピーしていると、厳格な規則に叶うか否か考えるだけで面倒になる可能性がある。したがって、とにかく何かが生じたら放り込んでいる。ただしフォルダーで管理しなとゴミ箱同然になるので、見通しのよい状態にするのが肝心だ。
これだけ雑に放り込んでも3〜6TBのハードディスクがあれば余裕がある。暇な時か、[恒久的にデータを保管するためのディスク]をつくる前に、要不要を識別してざっくりデータを捨てている。これが次回の恒久的に保管するデータになる。
この間、[日常的に使用するデータを保存するディスク]と[日常的にバックアップするためのディスク]のデータはかなり重複している。RAID 1にしているディスクが全滅しても、[日常的にバックアップするためのディスク]が死んでもかなりどうにでもなる状態だ。日常 バックアップがなくてもRAID 1のディスクだけでも十分かもしれないが、納品前に慌てたり、仕事を失う最悪の結果を招くのを避けるためこのように運用している。
5 最後に
前回の記事も今回の記事も、私にとって理想的なストレージの使い方を書いたに過ぎず、他人にとっては無駄であったり無意味だったりするかもしれない。なので、参考になる部分があれば使っていただき、そうでないなら無視していただきたい。また、いずれであっても自己責任でお願いしたい。
私は過去に派手にデータを失う経験をしている。こうした後悔と、もともと面倒臭がりなので簡単なデータバックアップ策を模索して現在の形態にたどりついたところがある。
ここでちょっと面白い話を紹介しよう。
派手にデータを失った際の障害が出たハードディスクを、私は捨てずに保管していた。障害が出た時点で論理的障害の復旧を試みて回復できなかったのだが、ゴミで捨てるにはドリルで穴を開けたり大ゴミ回収か業者に処理を依頼するしかなく捨てるのが面倒だったのだ。保管とはいうが、がらくた箱に放り込んだだけだ。
数年後、このハードディスクを戯れにクレドールに挿し障害復旧をかけたらなんとすべてのデータが蘇ったのだった。
このときひらめいたのが、ハードディスクをリムーバルディスクとして扱うバックアップ法だ。ゴミ同然の扱いでがらくた箱に放り込まれたハードディスクがタイムカプセルになったのだから、ちゃんと保管してやれば過去からの一切合切を保管できるはずである。
写真と画像データは大容量化し扱いに難儀するので、私の経験がお役に立てばと思う。
© Fumihiro Kato.
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古い写真。