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私の結論は、作業用や常時読み出し用として使用するストレージと別の保管用メディアはバルクのハードディスクがもっとも容量あたりの単価が安上がりで安全性もそこそこ高く、書き込み・読み出しにストレスがないということになる。ハードディスクをリムーバルディスクのように取り出して保管するのだ。
でも人それぞれ求めるものが違うはずなので……コスト・使い勝手などを検討しながら私なりのやり方について説明しようと思う。
画像データのメイン保管庫にしているハードディスクがマウントできなくなり顔面蒼白茫然自失の体となったことがある。Macの場合、OSに付随している[ディスクユーティリティ]で修復可能なケースがほとんどなのだが、エラーが出てそれさえできなかった。そうこうしているうちに別途最重要なデータのみ保存しているディスクまでマウントが解除されて認識できないありさまに陥った。嗚呼、と天を仰ぐほかない状況だった。
このとき使用していたハードディスクを5台まで装填できるケースに問題がありそうだったので、皆さん大好き[裸族のお立ち台(むき出しのままハードディスクを装着し使用する販売元センチュリーの製品)]で問題のハードディスクを確認してみた。結果はメインの保管庫側はまったく問題なし、重要データのみ保存していた側はフォーマットがいかれていたので初期化せざるを得なくなった。こんなこともあるのでお買い得価格な[裸族のお立ち台]を手元に準備しておくことをお勧めする。
⬜︎ データ復旧サービスについて
ハードディスク、SSDなどのデータが読み出せなくなったり、フォーマットしてしまった場合にデータの復旧を依頼できるサービスがある。
ただし、かなり悪質な業者があり見積もり額以上の金額を請求し支払わなければデータを返さないといったトラブルが多発している。また技能がないにも関わらずデータ復旧を請け負い、復旧しないにも関わらず作業料を取るといった業者もあるようだ(何もしてないのに金を取るというあくどさ)。
[バッファロー]のデータ復旧サービスはかなり信頼できる。https://www.buffalo.jp/contents/service/recovery/(新しいタブで開く)
同社は復旧サービスの拠点を東・阪・名・横浜に置き、ユーザーがWEB上で予約のうえストレージを送付するか持ち込むことで修理・復旧を行なっている。利用できるのはバッファローの製品に限らず、店舗購入と通販購入の別を問わない。
論理障害と物理障害双方に対応し、物理障害では同型のストレージから部品取りして修復復旧する場合もある。もちろん完全にデータが復旧できなかったり、まったく復旧できないケースもあり得るができるかぎりの作業をしてくれるうえに、価格が明朗会計かつ良心的である。
⬜︎ RAWおよび画像データは運用用と保管用に分ける
どのような方法でデータを保存・保管しているとしても、RAWデータと画像データは随時作業で使うものと保管用を完全に分離して別ものにしたほうがよい。
つまりRAIDを組んでいても、保存したデータを読み込んで作業をして、その結果を書き込むのなら、これとは別にデータを保管するためのストレージが必要になる。
ハードディスクだろうとSSDだろうと物理的破損以外は書き込み・読み込み時のトラブル、マウント・アンマウント時のトラブルで論理障害に陥るのだ。作業で頻繁に使用するストレージともっぱら保管に使うストレージ、そして保管するためだけの手段の三段構えが理想的だろう。
⬜︎ 写真データの理想的な保管
1 RAIDなら安全か
冒頭に紹介したトラブルはRAIDを組んでいなかったことに問題がある。私のCamera RAWデータはRAIDが一般的になる前からのもので、RAID 1(ミラーリング)でバックアップするには莫大な量のCamera RAWと完成品のTIFF画像等を長時間かけてコピーしなくてはならなかった。これをさぼって、手動でちまちまバックアップしていたのである。
ということで、腹を決めRAID 1(ミラーリング)と手動バックアップの二本立てで運用することになり現在に至っている。
近頃はSSDの値崩れが著しいとはいえ、SSDで数TB以上になり日々増えて行くデータを保存するのにはまだ価格が高い。したがって3.5inchハードディスクでRAIDと手動バックアップを取っている。ここは皆さんも異論なきところだろう。
では、RAIDを組みさえすれば十分なのか?
私は十分ではないと思う。なぜなら、前述のトラブルはハードディスクを装填していたケース側に問題が生じてディスク内のデータが破壊された。RAIDを組んでいてもミラーリングしているすべてのディスクが異常をきたす可能性があるのだ。だからといってハードディスクケースばかりいくつもPCに接続するのは馬鹿馬鹿しい。
2 クラウドか光学ディスクか
クラウドストレージにデータを転送しておけば、ストレージの運営母体が倒産したりトラブルを起こさないかぎり自宅が災害で被災してもデータを失うことはない。ただし、数TB以上ある画像データをまるまる転送するのはたいへんで、さらにストレージの使用量もうなぎのぼりなる。
これらをものともしない人は信頼がおけるクラウドストレージに全データを保管すればよいし、なんだったら最重要なデータのみ転送して保管する手もある。
クラウドストレージを嫌うなら、光学ディスクという手もある。
光学ディスクはデータ容量からDVDかBlu-rayが適格だろうが問題は保存性だ。色素を変化させてデータを記録するタイプの光学ディスクは保管状態が悪いと数年、太陽光を浴び続ければ数十時間でデータの読み出しが不可能になると思ったほうがよい。そこで[M-Disc]だ。色素にデータを記録するのではなく、[M-Disc]は製品版のCDと同様に凹凸でデータを記録するのでデータの長期保管に向いている。なお[M-Disc]は追記不可である。
[M-Disc]にはDVDとBlu-rayがあり、容量の違いによって適切なほうを選択すればよい。[M-Disc]を焼くには、[M-Disc]対応の光学ドライブが必要だ。読み出しはDVDまたはBlu-rayに対応していればいずれのドライブからも可能である。もともと光学ドライブの基幹部を製造しているメーカーは限られているうえ、そうそう多くのタイプがあるわけではないので、最近の製品ならほとんどが[M-Disc]に対応している。そして安価に買うことができる。
[M-Disc]1枚あたりの実勢価格はDVDまたはBlu-rayディスクとさほど変わらない。したがって光学ディスクに保存するなら[M-Disc]を選択したほうが賢い。
なのだけれど、私は[M-Disc]など光学ディスクが好きではない。クラウドストレージでアップロードとダウンロードにたいそう時間がかかるように、光学ディスクは焼きあがりまでと使用時のダウンロードに時間がかかりすぎる。
3 Macの場合Time Machineのバックアップはどうか
MacユーザーならTime Machine機能を使用している人が多いと思う。ほとんどノーメンテナンスで、いざというときかなり古い記録にまで遡れ、差分ごと保存されているのでそこそこの容量に収まっているなどTime Machineは実に気の利いた機能だ。
したがって外部ストレージのCamera RAWや画像データもTime Machineでバックアップしている人もいるだろうが、これらのデータが日々増えると3TB程度のストレージではバックアップが収まらなくなる。このためデータ容量が少ない間だけ有効な方法だ。
いくら10TBの3.5inchハードディスクが手頃な価格になったとはいえ、いずれ10TBでも追いつかなくなる可能性がある。また10TB程度のストレージに収まったとしても、常に稼働し続けているTime Machine用ディスクがトラブルを起こさないとは言い切れないところがある。
逐次ファイルの状態を監視して差分を保存する必要がないなら、RAID1で保存先を二重化したり別のストレージに手動で保存をかけたりすれば済むためTime Machineでなくても十分と言える。
4 一周回ってハードディスクに保存
光学ディスクが好きではない理由は、書き込み・読み込み速度が遅く、書き込みエラーの頻度を0にすることが不可能だからだ。書き込みが遅いのに輪をかけてエラーになったらがっくりくる。こうした点が面倒になりバックアップをつくる頻度が落ちると、そういうときに限ってデータが飛んだりする。ただ総容量100GBまでのデータを分類して保存するのには向いているし、ディスクは小さく薄いので保管場所に困ることもない。
ではせっかちな私はどうしているかというと、バルクで販売されているハードディスクに長期保管用のデータをコピーして、コピー後は防湿庫で保管している。保管時はシリコン製のジャケットをかぶせているが、シリコンジャケットに限らず保管用ケースは数百円から千円台で販売されている。この方法のメリットは、書き込み・読み込み速度が光学ディスクより速く、もちろん追記可能で、容量あたりの価格がさほど高くない点だ。
現在ハードディスクの価格は3〜4TBで1万円以下から、6TBくらいになると2万円台といったところ。1枚100GBで5枚組み(計500GB)の[M-Disc]がAmazon等で6000円程度なので、焼き損じでロスする分も考えるとハードディスクのほうが圧倒的にリーズナブルなのがわかる。
ハードディスクの銘柄は人それぞれ推しがあるので、これまで使用してきてもっとも信頼できるものを選べばよいだろう。私はウェスタンデジタルで嫌な目を見たことがないのでREDまたはBLACKを使用している。最近は7200rpmのBLACKと5400rpmのREDの価格差がほとんどないので前者を選ぶ機会が多い。
冒頭に[裸族のお立ち台]を紹介したが、このシリーズにはPCを介さずクレドールにハードディスクを2台装填してまるまるコピーが可能な製品もある。もちろんハードディスクを複数装填できるストレージケースにハードディスクを入れてコピーしてもよいが、圧倒的に[裸族のお立ち台]のほうが作業が楽だ。
数TBのディスクに適宜時期をみてバックアップすれば、このときハードディスクに通電され軸受のグリスが偏って固着するのを防げるし、容量がいっぱいになったディスクも年に1回程度通電してやればよい。ハードディスクが壊れるのは、稼働中の振動によるハードの損傷、読み書きを繰り返すなかでエラーが蓄積された場合であり、保管用として適切に年1〜数回扱うくらいならそうそう壊れることはない。こうしたメンテナンス等に[裸族のお立ち台]に限らずディスクを裸のまま取っ替え引っ替えできるクレドールが便利なのだ。
では大容量のSDカードはどうか。
私は経験していないが、SD、CFカードの類はデータの保存性が悪く保管中にデータが消えるとされている。まあ価格がこなれているSDカードに一時的にデータを退避させるのはアリだと思う。
⬜︎ 人それぞれではあるけれど
この記事をここまで読んでくれた方のなかには、まだデータの総容量が数TB、数十TB……と溜まりに溜まっていない人もいることだろう。このような人は、あと数ヶ月もしくは数年内にデータが雪だるま式に増えるのは確実で、こうして増えることを想定しない付け焼き刃の保管方法を取ると出費がかさむだけでなくデータを失う痛手を負うのは間違いないと考えておいたほうがよい。
クラウドストレージ、ローカルストレージ。ローカルストレージは外付けディスク、リムーバルディスク、さらにハードディスク、シリコンディスク、光学ディスク。これらのうち何を使用するか、どれを組み合わせるか人それぞれの運用のクセもあるし、求めるものの違いによって絶対正解と断言できるものはないだろう。
でも膨大な画像データを抱え込んでしまった私には、ハードディクでRAIDを組み更にバルクのハードディスクにコピーして防湿庫で保管という方法がもっとも経済的で現実的だった。さらに作業終了ごと手動で別ストレージにコピーしている。
私の方法を最初から組むなら、初期投資はだいたい次のようになる。
ハードディスクを2機/(2機でRAID 1 ミラーリング)
———3TB×2なら2〜3万円、6TB×2なら4〜5万円
ハードディスクケース・USB接続・数台装填可能 / 2万円程度
裸族のお立ち台的なナニカ / 数千円
保管用のハードディスクを随時購入、シリコンジャケット等を購入。
なお保管用のハードディスクの容量はほどほどがよい。容量が大きいものに追記を重ね、これが破損した場合はすべてのデータを失う痛手を負うことになる。危険は分散したほうがよい。
すでに手のつけようがないほどデータが増えた方も、いつかは手をつけなければならないのだし、ネガやポジを扱っていた時代以上に原版を失う危険性が高いデジタルデータなので根本的な対策を早めに取ることをお勧めする。
© Fumihiro Kato.
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古い写真。