レンズ保護フィルターはどのブランドを選択すべきか

追記1 2019.7.13 KANI HT PRO MC PROTECTOR の枠厚について国内代理店の情報をもとに3.0mmと記述したが、3.5mmの誤りであったため訂正し、訂正に伴い本文を書き換えた。
追記2 2019.7.13 大径薄枠の解釈について追加した。

過日、各社の[薄枠]表示があるレンズ保護フィルターの枠厚についてまとめた。今回はもう少し突っ込んだ話をしてみたいと思う。また各社製品ケンコー(ZXプロテクター/PRO1Dロータスプロテクター)・マルミ(EXUS等[薄枠])・ハクバ(XC-PRO等[薄枠])・ニコン(ARCREST)・KANI(HT PRO MC PROTECTOR)のデータを掲載する。

レンズ保護フィルターが必要か否か、こればかりは撮影者の撮影実態で判断するほかない。いかなるフィルターであってもレンズ前に余計なガラスを入れるのだから、とうぜん何らかの影響が写真の写りになって現れる。だが影響が現れるからフィルターを使用しないと頑なになると、NDフィルターやPLフィルターなど特定の効果を目的にしたフィルターですら使用できなくなる。

私は砂漠、砂丘、海浜など劣悪な環境で撮影する際、潮風と砂塵の汚れで撮影が中断したり、ひどい場合は撮影そのものを取りやめなくてはならなくのでレンズ保護フィルターを使用している。他の場合は使わないのがデフォルトだが、随時前述のロケ地同様にケースバイケースで判断している。汚れがつきにくい、汚れたら用意している予備のフィルーターと交換する、または汚れたら現場で洗浄とレンズの前玉をむき出しにして使用するより圧倒的に始末がよい。これで画質が目に見えて劣化しているなら話は別だが、ちゃんと仕事として成立する品質を保てている。

だが、円形フィルター(ねじ込み式)に問題がないわけではない

現在大手ブランドの保護フィルターやUVフィルターなら目に見えて画質が劣化するものは存在しないが、ガラスがレンズ前にあるのだからとうぜん影響が出る。また枠の厚さ、開口部直径が写りに影響したりフードの装着などに影響する場合がある。

1 ガラスの質、ガラスの厚さ

どのメーカーもガラスに光学ガラスを用いているが、光学ガラスもグレードにより透過率の違いがある。レンズ保護フィルターは0.3〜0.5%程度が一般的な透過率で、さらに高透過率の製品もあり、透過率に関しては各社データを公表している場合が多い。

ガラスの厚さは[薄枠]化の過渡期に1mmに達したが、薄すぎるとガラスに歪みが出る、衝撃への防御性能が低いといった理由から現在は2mm程度で落ち着いている。ケンコー、マルミ、ハクバ、各カメラメーカーの製品でかつて1mm厚のガラスを用いてたものは2mmにリプレイスされたとみてよい。ただし中華メーカーの薄枠製品に1mm厚が残っているほか、こうしたメーカーからOEM供給されているブランドのフィルターも同様である。

2 コーティング

多層膜コーティングが施されているものがほとんどであるが、中華メーカーや中華メーカーからOEM供給されているブランドには単層のものもある。多層だからといってかならずしも品質がよいとは言えないが、国内メーカー品ならレベルが高いうえに大きな差はないように感じられる。

防汚・撥水コーティングが最近のトレンドである。強い潮風に晒される環境で使用すると、防汚・撥水コートの製品の汚れにくさと洗浄のしやすさはとてもありがたい。ただし防汚・撥水コーティングが施されている製品は総じて高価格帯であり、安価なフィルターを予備として持ち歩き取っ替え引っ替え使ったほうが経済的であったり扱いが簡単とする立場も間違いではない。

ところが前記したガラスの歪みへの対処など高付加価値のフィルターが防汚・撥水コーティングの製品である場合がほとんどだ。一部に防汚・撥水コーティングをしていない高付加価値な製品もあるがやはり高価格帯である。

なお防汚・撥水コーティングはメンテナンスが容易でも傷つきにくいわけではない点は気をつけたい。硬度が高い砂や埃がわずかでも付着したまま乱暴に清掃すると擦り傷だらけになるのは、防汚・撥水コーティングしていないものと変わりない。

最近は衝撃に対して強いガラスを使用した保護フィルターがある。ただし、衝撃に対して強いからといって引っ掻き傷がつかない訳ではない。硬度と傷つきにくさは別の要素である。

3 枠厚と開口部直径

広角・超広角レンズは画角が広いのでフィルターのわずかな枠の出っ張りで陰りが生じる。これはレンズフードが長すぎるとき画面四隅がケラれるのと同じで薄暗い影が画像に生じる。どのレンズも周辺減光パターンに偏りがあるので、陰りが特定の隅にだけ目立つ場合が多い。

[薄枠]と表示されている製品なら超広角であっても大きな問題は生じないが、レンズの個体差やフィルターの個体差によって特定の隅にわずかに暗い陰りが現れることがある。これはケラれに違いないが誤差レベルの陰りで、現像ソフトのダスト消しツールでほぼ消せたり、Photoshopの修正ツールで完全に消し去れる程度のものだか気持ちのよいものではない。またレンズとの相性なのでフィルターメーカーにクレームできる問題でもない。

このように、どのレンズとどのフィルターが相性が悪いと一口に言えないので、可能な限り薄枠のフィルターを選択したくなる。

2019年7月現在、各社82mm径までの枠厚は3.4〜4.4mm程度、86mmまた95mm以上で3.9〜5.1mmと案外ばらつきがある。

(追記2ここから)同一ブランドであっても82mmまで同じ枠厚だが86mmまたは95mm以上から枠の規格が変わり枠厚が厚くなるのが普通だ。唯一HT PRO MC PROTECTORがすべての径で3.5mmであると公式サイトに表記されている。

では大径フィルターの5.1mmは薄いと言えるのだろうか。過去に販売されていた大径フィルターと比較すると5.1mmは薄いと言えるが、各社で[薄枠]が製品化される前の一般的な径の枠厚が5.1mm前後であった。ここは頭の片隅に入れておいたほうがよいだろう。(追記2ここまで)

次に開口部直径だ。フィルターのねじ込み部のスクリュー径は規格に則りどの製品も同じだが、ガラスの開口部直径は各社・各製品ごと独自のサイズを設定してている。どのフィルターもスクリューの径より開口部直径が小さいのだが、86mmまたは95mmくらいの大径ではスクリューより外側に枠が張り出しガラスの直径が大きくなる。

このようにスクリューから枠が張り出すとフードと干渉しがちだが、張り出したことで開口部直径が大きくなるならケラれの逃げになりカゲりを避けられる点でメリットになる場合がある。これは1サイズ上のフィルターをステップアップリングを用いて装着してケラれを防ぐのと同じ意味合いになる。ただし1サイズ上のフィルターを使うとフードが装着できなくなるケースがほとんどだ。

4 各社保護フィルターの枠厚(2019年7月現在)

ケンコー
・ZXプロテクター / φ82[枠厚]4.0mm φ86[枠厚]5.1mm φ95[枠厚]5.1mm
・PRO1Dロータスプロテクター / φ82[枠厚]4.4mm φ86[枠厚]5.1mm φ95[枠厚]5.1mm

マルミ
・EXUS / φ82[枠厚]4.0mm φ95[枠厚]5.1mm([薄枠]と表示されるものは皆同一規格)

ニコン
・ARCREST / φ82[枠厚]3.4mm φ95mm[枠厚]3.9mm

ハクバ
・XC-PRO / φ82[枠厚]3.4mm(最大の径が82mmまで。メーカーからULTIMA、SMC-PROも同一の値であると回答された)

KANI
HT PRO MC PROTECTOR / [枠厚]3.5mm(ガラスは1.1mm)*国内代理店サイトに枠厚3.0mmと表記されていますが3.5mmの誤りのため訂正しました。

5 なにを買ったらよいのだろうか

  • 超広角・広角か準広角より狭い画角のレンズか
  • 光学性能をどこまでフィルターに期待し、期待にどれだけコストをかけられるか
  • 使い勝手をどこに求めるか

上記次第で自分にとって必要なレンズ保護フィルターが決まる。

超広角・広角なら枠厚が薄ければ薄いほど安心であり安全である

光学性能は国内メーカーの現行品なら問題ない。ARCRESTが図抜けて高性能。

中華メーカーまたは同OEM品は、細部の詰めでまだイマイチの印象。

以上が概要である。

ニコン・ARCRESTとハクバがもっとも薄枠と言える。ハクバは82mmまでしかラインナップされていないので、82mmを超えるサイズではニコン・ARCREST一択になる。95mmの枠厚3.9mmと他社の5.1mmにはかなりの差がある。ただしニコン・ARCRESTは95mmまでなので、105mmなどはケンコーやマルミを選択するほかない。

ダークホースはハクバだ。ここに挙げた国産品を使用した経験から、安価だからといって目に見えて品質が劣り画像が劣化するようなことはなかった。むしろ枠厚3.4mmのXC-PRO、ULTIMA(SMC-PROは未使用)は心強いし、他社の半値までではないが予備をもう一枚持ち歩いて現場で交換使用しても財布に痛くない価格だ。[薄枠]に期待するならハクバは有力候補にしてよい。

またハクバは同径なら開口部直径が他社(ケンコー、マルミ)より1mmほど大きい。枠が薄いだけでなく、開口部直径が大きいなら更に超広角・広角で有利になる。

価格を苦にせず性能と枠厚にコストをかけるつもりなら、ニコン・ARCRESTがよいのは言うまでもない。現状でARCRESTの性能を隙なく超えるフィルターはないと言ってよく、これでダメなら他もダメである。とはいえ、他社製品の2〜3倍の価格だ。

とはいえ、相性が結果に直結する超広角でいろいろなブランドを試し買うくらいならARCREST一枚で済ますほうがとうぜん安価に収まる。あとかあれこれ不安になる性格の人は、ARCRESTを買ったほうが精神衛生上よいだろう。

ケンコー、マルミはともに優れた製品を送り出していて入手の容易さサイズの豊富さでバランスがよいと言える。

KANIは角型フィルターでシェアを伸ばしている中華メーカーで、入手方法は国内代理店直売かAmazonなど並行輸入品の通販に限られ、ガラス厚が1mmである点で積極的に選択するメーカーとしてよいか現状では不安が残る。ただし、ニコン・ARCRESTより安価に枠厚3.5mmのフィルターが購入できる点は評価してもよいかもしれない。

ちなみにガラスの平坦性はARCRESTを除けば他社はどっこいどっこいのようであり、KANIのようにガラス厚1mmの製品は国内大手なみの枠構造を採用していても平坦性が劣って当然である。

このほか見逃されがちな点を挙げる。

  • 開口部直径と関係するレンズキャップとの相性(大きくても小さくても差し障りが出る場合がある)
  • 枠の内側の構造とレンズキャップとの相性
  • 枠の外側のローレット(ギザ)の形状

レンズキャップとの相性を経験している人は多いと思うが、開口部直径・枠内側の構造(高さ含む)が同一メーカーだから傾向が同じとは限らない。マルミとハクバは[薄枠]製品で同じ規格の枠を使用しているが、ケンコーは規格が異なる枠が製品群のなかに混在している。また86mmまたは95mm以上で各社枠の薄さ、張り出しが変わる点も注意したい。もちろん純正レンズキャップかサードパーティー製かによっても相性の違いがある。

もし相性が著しく悪い場合は、レンズに付属しているレンズポーチや100均で売れられている巾着をかぶせてレンズキャップの代わりにすることができる。

最近は適切にローレットが刻まれている製品ばかりになったが、ローレットの形状しだいで使い勝手に大きな差が出る場合がある。特に張り出しが大きい大径フィルターとフードが干渉するケースで顕著だ。超広角レンズではフィルター枠の張り出しとフードが干渉するため、フードをつけたままフィルターを付けたり外したりしなくてはならないものがある。こうした際に、各自の手のくせにそぐわないローレット形状では操作性が俄然悪くなる。

用品の選択には過去からの経験で「信頼でき安心できるブランド」が決まっている場合があるし、今回検証した要素以外に違いもあるはずなので特定ブランドだけを推すのは無理がある。また冒頭にも書いたが、フィルターは消耗品なので安価なものを使い倒して交換したほうがよいとする合理性だってある。なので、ここに提示したデータ等はあくまで参考値として扱ってもらいたい。

最後に:角型フィルターのUVは保護フィルターの変わりになるか

レンズの前面を覆っているので、角型フィルターと枠の間違に多少の隙間があったとしても汚れた空気や粒子からの保護作用は期待できる。また角型フィルターなら枠を共用できるレンズ間でフィルターもまた共用できるので、使い回しできる点は経済的かもしれない。

ただし枠の価格を考えなければならず、超広角では最大サイズの枠を使う必要がある。最大サイズの角型フィルターなら開口幅が大きく取られているのでケラれにメリットがあるが、レンズと枠を接続するアダプターリングと枠そのものの厚さは[薄枠]の円形フィルターより厚い点は注意したい。

このほか撮影時にレンズにセットするのが角型フィルターの一般的な使用方法で、装着したままカメラバッグやリュックに入れるのはあまりに収まりが悪い。したがって円形保護フィルターのほうが圧倒的に使い勝手がよいと言える。

© Fumihiro Kato.
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古い写真。

・スタジオ助手、写真家として活動の後、広告代理店に入社。 ・2000年代初頭の休止期間を除き写真家として活動。(本名名義のほかHiro.K名義他) ・広告代理店、広告制作会社勤務を経てフリー。 ・不二家CI、サントリークォータリー企画、取材 ・Life and Beuty SUNTORY MUSEUM OF ART 【サントリー美術館の軌跡と未来】、日野自動車東京モーターショー企業広告 武田薬品工業広告 ・アウトレットモール広告、各種イベント、TV放送宣材 ・MIT Museum 収蔵品撮影 他。 ・歌劇 Takarazuka revue ・月刊IJ創刊、編集企画、取材、雑誌連載、コラム、他。 ・長編小説「厨師流浪」(日本経済新聞社)で作家デビュー。「花開富貴」「電光の男」(文藝春秋)その他。 ・小説のほか、エッセイ等を執筆・発表。 ・獅子文六研究。 ・インタビュー & ポートレイト誌「月刊 IJ」を企画し英知出版より創刊。同誌の企画、編集、取材、執筆、エッセイに携わる。 ・「静謐なる人生展」 ・写真集「HUMIDITY」他
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