Yongnuo YN200にみる中華ストロボの泥仕合

Yongnuoは中華人民共和国の写真用品メーカーもしくは商社で、低価格帯のクリップオンストロボがAmazon等に溢れかえっているので皆さんもどこかで見かけたことがあるはずだ。先日、同じく中華企業のNeewerからリチウムイオンバッテリーを使う300Ws中華モノブロックストロボVISION4が2万円程度で販売されている件を記事にしたが、こんどはYongnuoからYN200を発売するとアナウンスされた。Yongnuo YN200は(これもまた中華メーカの)GODOXが販売しているAD200のパクリ製品である。

しかもYongnuoはGODOXでいうところのX1TまたはX2T、X Proに相当するトリガーの新型を発売する。

この記事を読んでいる方には説明不要かもしれないが、GODOXはスウェーデンに本社を置くProfoto社のクリップオンストロボA1を模倣したV1を発売して抗議されたばかりで、この事件もあったうえで中華ストロボメーカーの市場戦略と製品開発はなんともひどい展開になってきたと言える。

ひどい展開になってきたと言っても、もともとこうしたルールなんて破壊するためにあるとでもいうような生き馬の目を抜く商行為の繰り替えしで成長した中華ストロボ業界だ。いまでこそYongnuoのストロボはGODOXの陰にかくれているけれど、ラジオスレーブを安価に実現するシステムで成長したのがYongnuoだ。ただし、まったくのオリジナルな戦略と製品であったかというとCactusの影響を受けていると言えそうだ。つまりCactusがあったうえでYongnuo、GODOXの連鎖というか模倣がある。また詳細は後述するが、GODOXはA1とV1の関係だけでなくProfotoの戦略を後追いしている。

YongnuoがGODOXに遅れをとった理由だが、ラジオスレーブを目玉に据えたもののYongnuoは製品ライナップが貧弱だった。GODOXも当初はクリップオンストロボと180Wsと360Wsを実現する大型ストロボ・ウィストロシリーズしかラインナップしていなかったものの、360Wsの大出力ストロボが1機種あるだけで撮影の可能性がぐんと向上する。GODOXはYongnuoの戦略を踏襲したうえで、クリップオンだけでなく大出力ストロボを続々とラインナップさせ多機能なトリガーとともにシステムを拡充させた。そしてGODOXにはリチウムイオンバッテリーを電源にした強みもあった。

そしてYN200と、元ネタのAD200だ。私にはGODOX AD200の仕様は魅力的に見えないが、AD200がよいという人がいて支持されている。このため過去から煮え湯を飲まされ続けてきたCactusが用品ショーにAD200と趣向が同じモデルRQ250を出品したがとんと音沙汰なくなっていた。(見比べるとRQ250とAD200は似ていないのだが、凹凸がない最小限サイズのフォルムに大出力を収めた点はコンセプトが似ている。なおRQ250は2018年段階に開発が中止された。公表されていた画像を見ると AD200より光の質が扱いやすい優れたものであったのがわかる)

そうこうしていたら冒頭に記したようにGODOXがPtofoto A1の模倣品V1を発売し、NeewerがGODOXのお株を奪う300WsのVISION4を発売し、さらにGODOX AD200を模倣したYN200が近々発売される展開になったのである。

YN200はAD200と違いヘッドを分離して付け替える構造になっていない。このためチューブヘッドが一体化された形状で発売され、GODOXのラウンドヘッドアクセサリーアダプターのようなものが登場する可能性がないとは言えないが、こうしたアダプターを取り付けるにはチューブ周りに余裕がなく、アダプターをボディーにかぶせるとなるとコールドシューなどを連結させるための1/4インチのネジ穴と干渉しそうだ。とすると、Bowensマウントがついたブラケットにソフトボックスを装着したり、傘用の穴がついたマウントでアンブレラを使うなどの方法のみ想定しているのだろう。

本家AD200はヘッドを分離して電源部・発光部別体型として使えるだけでなく、ブラケットAD-B2を使うとAD200の電源部を2台、発光部を2個使い400Wsの出力が得られる。YN200はヘッドが分離できないだけでなくリチウムイオンバッテリの接続方法がAD200と異なるので、こうした凝った構成で使用する前提で設計されていないのは明白だ。

前述のように私はAD200にメリットをあまり感じないので、好んで使う人の使用実態がイマイチわからないのだが、AD-B2が不要つまり200Ws以上の出力が必要なく、ケーブル経由でヘッドを発光させないのだったら、YN200で十分という人もいるのではないだろうか。

傍から見ていると中華ストロボの仁義なき戦いは面白いけれど、何度も指摘したように「ひどい展開」である。YN200はAD200のあからさまなパクリだが、GODOXはProfoto A1をパクってしらを切ったのだから文句を言える立場にはない。言える立場にないからといって何もしないとは限らないとしても、因果は巡る糸車だ。

中華ストロボ業界がこうなったのは中華圏の商習慣だけでなく、そもそも枯れた技術のうえにストロボが成り立っているからだ。

ここ三、四十年間にストロボは外部測光による調光、TTL測光による調光、ラジオスレイブによる多灯コントロール、FP発光と技術革新があったけれど、カメラにオートフォーカスが導入されたり写真がデジタル化されたときのような大激震と大変革はなかった。価格も高値安定で、どこのどれを選んだところで出力=価格のようなところがあった。安価な製品がなかったため、中華ストロボが安さでシェアを大きく伸ばしたのであり、安価だから何台もストロボが買えラジオスレーブで多灯ライティングする旨味が増した。しかし、これらを実現したあと中華ストロボメーカーは壁に突き当たった。

過去記事に書いたけれど、次の一手を見失ったのである。そして次の一手を創造できないのである。

ストロボのバリエーションは、クリップオンストロボ(とグリップ式のストロボ)、モノブロックストロボ、電源別体式のストロボ、これらの出力違いと電源に何を用いるかで決まる。何らかのブレークスルーがないかぎり、新たな形状や新たなカテゴリーは産まれそうにない。

では現在求められているストロボはどのようなものか。写真がデジタル化されてISO感度をかなり上げられるようになったことと、撮影隊のチーム編成が小さくなって助手を使わない撮影も増えたことで、ほどほどの出力、携行性のよさ、扱いの簡単さがストロボのトレンドになった。また発光回数、チャージタイム、出力のいずれも優れたリチウムイオンバッテリーの使用例が増えた。Profotoがラインナップしている製品はまさにトレンドを反映したもので時代の要請にかなった品揃えになっている。これらをGODOXは安価な製品で取り揃え、ひととおりラインナップが出揃ったあと壁を超えるためProfotoの顧客とProfotoに憧れる人々を奪う戦略へ舵を切った。

壁につきあたり次の一手が提案できないなら、ブレイクスルーが訪れるまで陣取り合戦を繰り広げるほかない。GODOXは模倣品でProfotoの顧客を奪おうとし、NeewerはGODOXより安価な製品を売り出し、Neewerは模倣品でGODOXの顧客を奪おうとしている。次のブレイクスルーはAIを用いた高度な多灯コントロールかもしれないし、電源の全固体電池化かもしれないし、まったく別ものかもしれず、そうそう簡単に新機軸は現れそうにないのでしばらく泥仕合が続くはずだ。

GODOXもYongnuoにパクられて災難ではあるが、荒らされ放題なProfotoが最大の被害者だ。Profotoは価格が高いのが問題と言いたい人もいるだろうしGODOXの果敢に攻める姿勢は素晴らしいという評価もあるだろうが、Profotoが倒産すればGODOXは価格帯を上げるだろうし、元ネタがなくなったあといかなる戦略を打ち出せるか不透明極まりない。こうなったときGODOXにProfotoの後釜がつとまるかというと、現状のままではたぶん無理だ。

安いが一番であるし、落下させようが水没させようが容赦なく使い倒せる機材は本当にありがたい。技術競争だけでなく価格競争もまた市場に必要な要素だ。だとしても、中華ストロボの成長が踊り場に至ったのは間違いない。または折り返し地点と言ってもよい。いずれにしても売りっぱなし、やったもの勝ちの体質から脱皮しないかぎり泥仕合が繰り広げられるのである。

余談:そういえばAD360IIが市場から消えつつあって、AD360用のバッテリーパックが新型に変わるらしいのだが仕様と写真が公開されたまま発売日未定だ。新型バッテリーパックが用意されているなら、AD360IIは廃番になってもIIIが出そうな気配だがどうなんだろうか。

© Fumihiro Kato.
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古い写真。

・スタジオ助手、写真家として活動の後、広告代理店に入社。 ・2000年代初頭の休止期間を除き写真家として活動。(本名名義のほかHiro.K名義他) ・広告代理店、広告制作会社勤務を経てフリー。 ・不二家CI、サントリークォータリー企画、取材 ・Life and Beuty SUNTORY MUSEUM OF ART 【サントリー美術館の軌跡と未来】、日野自動車東京モーターショー企業広告 武田薬品工業広告 ・アウトレットモール広告、各種イベント、TV放送宣材 ・MIT Museum 収蔵品撮影 他。 ・歌劇 Takarazuka revue ・月刊IJ創刊、編集企画、取材、雑誌連載、コラム、他。 ・長編小説「厨師流浪」(日本経済新聞社)で作家デビュー。「花開富貴」「電光の男」(文藝春秋)その他。 ・小説のほか、エッセイ等を執筆・発表。 ・獅子文六研究。 ・インタビュー & ポートレイト誌「月刊 IJ」を企画し英知出版より創刊。同誌の企画、編集、取材、執筆、エッセイに携わる。 ・「静謐なる人生展」 ・写真集「HUMIDITY」他
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