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[ライティングは工夫なんですよ!]
ここで言うストロボはクリップオンの大光量と大型ストロボだが、もちろん小型のストロボでもそれなりに便利に使えるだろう簡易ブースを説明する。
ホームセンターへ行くと容易に湾曲できる樹脂の薄板が売られている。さまざまなサイズがあるので長辺1m程度の完全白色のものを買おう。たとえ被写体が10数cm程度の高さであっても、この板は2〜3倍くらいの高さになるようにしたい。もちろん大きければ大きいほどよいが、あまりに持て余すサイズは避けたいので各自判断してもらいたい。次に黒ケント紙だが、100均でA3サイズのもの数枚組が売られているのでこれで十分だ。ライティングではトレーシングペーパーが必須だが設置を考えるとやや面倒になるため紹介した材料と、あとは白ケントまたは白色のボード(発泡スチロール)で完結するようにしている。
数千円以上するブツ撮り簡易ブースがなくても、これでまったく困らないレベルで撮影できる。また工夫のしどころが大きいため、簡単に照度比を調整することができる。材料の中でもっとも価格が高いのは樹脂の薄板だが、1枚買っておくと後々他の撮影用途でも使えるので無駄がない。
次のように設置するのだが、大型ストロボはリフレクターのみ、クリップオンストロボも直射を使用する。
以上でほぼ説明完了。ストロボは天井バウンス。樹脂板をU字型に湾曲させて固定する。どの程度の湾曲にするかはケースバイケースだ。薄板はどんな方法で固定しても問題ないが、ペットボトルに水を入れたものを樹脂板の外側から使うとやや形状は不恰好だがちゃんと機能するU字型にできる。またこの程度の反発力になる薄板を買おう。物体下側からレフ効果で光を回すには、樹脂板でも発泡スチロールでもケント紙でも、なんだったらコピー用紙でよいからU字型の内側を満たし、物体からカメラ側の手前に伸びるように敷けばよい。はい、完了。あとは被写体をU字型の内側のどこに置くか考えてもらいたい。
もちろん工夫しなくてはならない点はある。天井バウンスをどのような角度で与えるか、だ。U字型ブースの直近から垂直に近い角度で光を照射すれば、角度のないトップライトになる。それ以外は角度のあるトップライトになる。いずれの場合も十分に光が回ったライティングになる。
もし物体の左右で照度差を与えたいなら、以下のように黒ケントを使う。
アンダーにしたい側に黒ケントを置くだけだ。このとき背景を白色にしたいから黒ケントの奥行き側の位置だけは気をつけたい。
被写体の正面へのレフ効果が弱いなら、白色の門紙をカメラのレンズ前あるいは切りぬき部分を大きくして被写体に近づけて設置する。逆の効果では物体下側の白紙などを除くほか、黒の門紙を設置すれば反射面への写り込み等を防げる。門紙が銀色の反射面なら主張が強いレフになるが、アルミホイルを貼る等するならくしゃくしゃに揉んで不規則な凹凸をつくってからにしよう。アルミホイルを平らに貼ると、わずかな歪みが反映され見苦しいまだらの反射光になる。門紙は光軸上の任意の位置または切り抜き部分にレンズの鏡胴を通して使ってもよい。
デスク等に敷いた白い板または紙に被写体を直置きしたくないなら、白い箱または透明アクリ等が必要だ。直置きの問題点は、撮影アングルが限定されるところにある。俯角で撮影する際にスタジオで言えば床面にあたる部分が写りこむし、この設定では場合によってU字の背景と白い板また紙の境界が写りこむ。こうした背景の継ぎ目の写り込みは販売されている簡易ブースでも発生する。
あとは材料のサイズから湾曲のさせかた、ストロボの位置と光の角度を工夫してもらいたい。天井バウンスは軽くみられる傾向があるけれど、なんといっても大面積の面光源が得られるすぐれものだ。トップからソフトボックスやアンブレラで照明しようとすると、天井高の問題やライトスタンドとブームの問題が発生するし、どんなにがんばっても天井バウンスより小さな面光源しか得られない。
以上は自宅や事務所でぱぱっと済ませたい場合の工夫だが、出先で撮影するときも十分使える。このくらいの荷物なら出先での撮影であっても苦労がないし、あっという間に設置できる。凝った設定をつくり込めるならよいが、いろいろ運び込んでやたらと時間を費やするよりよっぽどよい場合がある。また製品版のお手軽ブツ撮りブースを持ち込んで「あらこの人、アマゾンで売ってるコレを使って済ますんだって……」と軽く見られるのも癪な話だ。
もし天井バウンスの不確定要素をなくしたいなら、U字上部にトレペを張り巡らしトップからストロボを発光させればよい。パイプを組みたてて机型の形状にし、机の天板にあたる部分にトレペを設置すればよいだけだ。
Fumihiro Kato. © 2019 –
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