撮影はスマートフォンで十分なのか不十分なのか

タイトルからして雑で、そんなものは何を撮影したいか、撮影したものをどうしたいかで判断が分かれるのはわかりきった話だ。でも雑なまま話を進めると、135フィルムをライカ判で撮影して写真屋さんでサービスサイズに焼いていた用途はスマホのカメラで十分だ。はいこれでおしまい、では寂しいのでつらつら思うことを書いてみたいと思う。

いずれ私は歳をとってレンズ交換式カメラやこうした機材と三脚という撮影が体力的に不可能になる。だったら今のうちからスマホのカメラで撮影するノウハウを得ておいたほうがよいなと考えるようになった。その頃カメラやスマホがどのように変化しているかわかったものではないが無駄にはなるまい。そこでiPhoneにAdobe Lightroomをインストールしたのだった。これならDNG形式のRAWデータが得られるうえにマニュアル操作も可能だ。DNG形式のRAWデータが必須だったのは、ずっと以前からスマホのカメラが出力するJPEGの質がよくなって前述のような用途なら十分になっていたが、この手のJPEG画像をほんのすこし補正しようとするだけで途端に画像が破綻するからだ。これはiPhoneに限らずだし、そもそもJPEGだし、ビット深度が浅いし。

スマホのカメラの出力に感じるのは、きれいに見えても端正さが足りない点だ。実は苦労して「端正」という言葉をひねりだしたのであって、これは「粗い」と書くとピクセルがセルとして見えるような印象や、画素数の足りなさだけの話につながりかねないためだ。端正ではない粗さとは、具体的にはディティールが圧倒的に不足しているところをシャープネス効果などでカバーしているのを言っている。ディティールが乏しいのは画素数が原因というより、やはりレンズのせいでありビット深度の浅さゆえなのだろう。せせこましいスペースに収められたレンズであれだけ撮影できるのはすごいとは思うが、やはりドーピングして得られた画像である。なのでスマホ撮って出しのJPEGに軽くシャープネスの要素をかけると不自然なまでに細部が神経質な写りになる。露光量をすこしだけ増やそうとすると美しくない色ノイズが現れる。

これはiPheneからDNG形式で出力して、さまざまなレンズとカメラのネガティブ要素を取り除くDxO PLで現像してもあたりまえだが発症する。DNGは画像にする以前のデモザイクされていないデータだから、現像耐性、修正耐性はJPEGをはるかに超えたものなのだがやはりレンズ性能やビット深度によって限界値が低くなる。

Adobe CCの契約でiOS用Lightroomがインストールされていれば、PCにLightroomも必然的にインストールされていることになる。なのになぜDxO PLなのか。私のメイン現像ソフトは(レンズ交換式カメラの場合)Capture Oneだ。DxO PLは主にレンズのネガティブ要素をプロファイルを利用して取り除き、ついでに若干狂った水平などを補正してDNG出力するために使用している。このトリートメントされたRAWデータをCapture Oneで現像するのだ。現像時にビネット効果を加え周辺減光させたりすることもあるが、不気味なほどレンズのクセが消し去られた画像は現像していて心地よいし、加工時の自由度があがるのだった。ではLightroomはというと、Lightroom classicをパノラマ合成につかったり印刷時の母艦ソフトとして利用している。スマホのRAWデータをDxOに持ち込むのはスマホのレンズとカメラのネガティブな要素を取り除くためにほかならない。DxOから再びDNGとして出力することもあればJPEGで書き出すこともある。繰り返しになるけれどDxOで作業する過程で、マイクロコントラスト(Capture Oneの「構成」と類似した機能)やシャープネス系の機能を操作すると、修正量がわずかであっても不自然なまでに細部が神経質な写りになる。ここは要注意点で、どの現像ソフトでも限界値の低さが露呈しやすいから撮影から現像までレンズ交換式カメラと発想を変えて取り組まなくてならない。

iOS用Lightroomが使いやすいかとなると、旧態然としたカメラの操作に慣れきっている私にはどうしようもないくらい使いにくい。カメラの軍艦部に並ぶ操作系、レンズ周りの操作系がいくら複雑化しても、こういう物理的な装置を扱うほうが直感的に扱えミスがない。でも高齢者になった際に戸惑わないため訓練としてスマホのカメラを使っているのだから修行であると自分を納得させている。iOS用LightroomはRAW現像も可能でレンダリングを自動的に行えるし、現像ソフトとしてのLightroomなのだから手動でも操作もできる。もともとPC版Lightroomでの現像作業が性に合わないのもあるが、やはり27inchのディスプレイで現像するようにはいかないスマホ版アプリなのでこちらも好きになれないし機能が足りない。だとしても、いまのところiOS用Lightroomはスマホ用カメラ、スマホ用現像ソフトとしてよくできできていると感じる。

私はiOS用Lightroomで撮影してDNG形式で保存、Lightroom classicではなく簡易版のLightroom CCでiPhoneから吸い出し、これをDNGのままローカルストレージに分類保存する流れで使っている。もっと賢い管理方法があるのかもしれないが、いまところこれが簡単であり間違いがない(あくまでも私的に)。現状ではあまり凝った作品づくりに持ち込まないのでDxO PLで補正して終了。そして注意深くRAWデータを扱うなら十分作品づくりに使えると結論した。かつてスマホが登場して間もない頃、上等なトイカメラのように使ったり、カメラ専用機ではないものを敢えて使う意味を問うたりする撮影行為があった。こういった変化球というかビザールな趣味ではなく、直球ど真ん中の作品のための撮影が可能だと思う。私のいつものタッチで現像したものをこれまでの作品に混ぜたらどちらがどちらか他人にはわからないし、どちらがどちらと分別する意味はまったくない。たとえばライカ判で撮影したものとAPS-C判で撮影した同趣向の作品を混ぜても、カメラオタクの人は別としてフォーマットの違いに意味がないのと同じだ。

ではなぜ、それでもレンズ交換式のカメラ=撮影専用カメラ(という表現はおかしいとしても)を使うのかと言えば、やはりスマホが出力するデータは端正ではない粗いものだからにつきる。いっけんきれいに見えるデータより、あとから不要なディテールは捨てるとしても十分にディティールが記録されたデータが欲しいのだ。記録されるデータはビット深度がより深いものであってほしいしビット深度の容器をたっぷり満たすだけのデータが欲しい。レンズ交換式カメラの図体が大きいのも、レンズが巨大なのも必然性があるのだ。世の中にはカメラ機能を売り物にするスマホがあり、こうした新製品は昨今とても話題になる。カメラ重視のスマホはレンズやセンサーへのこだわりが他ともちろん違うのだろうが、こうした物理的装置の限界を画像処理で補っている部分が大きい。きれいな絵にするため小さなレンズと小さなセンサーの弱点を補い整えているし、ハイダイナミックレンジ効果のようなものをうっすらかけたりだ。

スマホのカメラ機能がここまで進化するとどうしてもコンデジの影が薄くなる。カメラとしての基礎体力はぜったいコンデジが上でも、コンデジを持って出かけるのは必須ではないがスマホは命の次に大切な人が多いのだからとうぜんだ。またまた冒頭に戻るけれど、スマホのカメラで十分な用途がほとんどだ。現状でiOS版Lightroomで現像するのは趣味というか暇つぶしの域を出ていない。もしPC環境に現像ソフトがインストールされているなら、操作性も機能もこちらのほうが上だからスマホ内で現像するのは面倒だ。そしてこうした環境をスマホに整えても、多くの人はスマホで現像するだけでなくPCに持ち込んで現像するのもやがて頻度が減る。iOS版LightroomとRAWデータについてWEBを検索すれば一目瞭然だが、入門ガイドはいくつかあれど、そこから先に突っ込んだ話題はほぼなしという現状である。入門ガイドもLightroomで撮影してスマホで現像に取り掛かる直前までの手順しか説明していない。これらを書いている人の多くがRAW現像の実務を知らないのだろうなという書き振りだ。RAWデータの現像は慣れていない人には面倒くさいものだから最初は面白くてもやがて大きな壁にぶつかりがちで、PC環境で現像する人は少数派だ。だから現状はRAWデータを取得できるカメラソフトもスマホの現像ソフトもギークのためのおもちゃ的位置付けにある。最大限にメリットを絞り尽くしている人もいるのだろうけど。

というのが世間一般なのだけど、私はけっこうおもしろがってRAWデータ供給元として使っている。だってカメラを持ち歩かない場面でも撮影できてRAWデータも手に入るなんてすごいことだよね。

Fumihiro Kato.  © 2018 –

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・スタジオ助手、写真家として活動の後、広告代理店に入社。 ・2000年代初頭の休止期間を除き写真家として活動。(本名名義のほかHiro.K名義他) ・広告代理店、広告制作会社勤務を経てフリー。 ・不二家CI、サントリークォータリー企画、取材 ・Life and Beuty SUNTORY MUSEUM OF ART 【サントリー美術館の軌跡と未来】、日野自動車東京モーターショー企業広告 武田薬品工業広告 ・アウトレットモール広告、各種イベント、TV放送宣材 ・MIT Museum 収蔵品撮影 他。 ・歌劇 Takarazuka revue ・月刊IJ創刊、編集企画、取材、雑誌連載、コラム、他。 ・長編小説「厨師流浪」(日本経済新聞社)で作家デビュー。「花開富貴」「電光の男」(文藝春秋)その他。 ・小説のほか、エッセイ等を執筆・発表。 ・獅子文六研究。 ・インタビュー & ポートレイト誌「月刊 IJ」を企画し英知出版より創刊。同誌の企画、編集、取材、執筆、エッセイに携わる。 ・「静謐なり人生展」 ・写真集「HUMIDITY」他
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