水平画角の相関関係と体感

(文末に14mm〜800mmまでの画角図を追加しました)

画角X°と言われても理解しにくいので、ライカ判での焦点距離で水平画角の比較をざっくり図にした。

焦点距離が1/2あるいは2倍になると画角もまた2倍あるは1/2になれば話は早いのだが、焦点距離が長くなるほど画角の変化がすくなくなる。画角の変化がすくなくなるのだから、撮影できる範囲の変化もすくない。

これは以下の計算から導き出せる。

画角は
・撮像媒体の横幅dを、焦点距離fの2倍で割る ・三角関数で、その値に対する角度θを求める ・求めたものの2倍が水平画角となる。

私が推奨している最小限のレンズ構成「スタンダードラインナップ」を例にして焦点距離と画角について考えてみたいと思う。

スタンダードラインナップ」は(ライカ判)50mmを基準または中核にして、広角・望遠双方に画角を拡張するとき最小のレンズ数で最大の効果を得ようとするものだ。人によって基準にするレンズは50mmに限らないので、ここは任意の焦点距離にする。具体的な内容は前掲リンク以外にも書いているので記事を探してもらうとして、50mmを基準にした場合、広角を28mm、望遠を105(100)mmとしている。これでは迫力が得られないと感じるだろうが、基本形を整えるための「スタンダードラインナップ」なのだからより焦点距離を離すのは各自の自由だ。「スタンダードラインナップ」はこれさえあればルポルタージュ的な仕事はこなせるだろうという、レンズ間のつながりに極端な差が出るのを嫌った基本形なのだ。

スタンダードラインナップで長焦点側が105mm(マクロを推奨)なのは、85mmでは画角の変化が足りず105mmあたりからパースの圧縮がはじまるためワーキングディスタンスの違いだけでなく絵に明らかな変化をもたらすことができる。広角側を28mmにしたのは、35mmでは先の85mm同様に画角の変化が足りず、24mmではパースの誇張がかなり大きくなり35mm的な絵づくりがかぎりなく難しくなるからだ。

24mmの水平画角73.7°は50mmの水平画角39.6°の1.86倍、28mmの65.5°は1.65倍、35mmの54.4°は1.37倍になる。85mmの23.9°は50mmの水平画角39.6°の0.6倍、105mmの19.5°は0.49倍、135mmの15.2°は0.38倍になる。この関係を図示すると以下のようになる。

レンズ間のつながりが極端になるのを嫌った28mm、50mm、105mmだが上図のような画角の違いがちゃんと現れる。28mmを中途半端な焦点距離と思う傾向がいまどきはあり、単焦点なら24mmを選ぶ人が多いようだが、50mmを基準にして広角・望遠に拡張する基本形として28mmは自然な広さを得られる画角なのだ。特にワーキングディスタンスを固定して望遠、標準、広角と使い分ける際は「説明」から「全容」まで自然に視線の広さ狭さを使いわけられると言える。

次に24-70mmズームレンズについて考えてみる。

24-70mmの中間の焦点距離は47mmなので図では45mmの位置に緑のマークを置いた。24-70mmズームは広角端から標準域までの変化は過不足ないのだが、往往にして望遠側の変化が少なく感じる。これは長焦点側で焦点距離1mmの差で得られる画角の変化が小さいためであり、ここに標準から中望遠のパースの誇張が消えておとなしい描写になる性格が輪をかけている。70mmは75mmとしてライカ伝統の焦点距離として存在するが、現在は単焦点では珍しい部類だろう。85mmより短い70〜75mmは、50mmと40〜45mmのような微妙な違いを好きな人がけっこういる面白い焦点距離としても24-70mmでは使い所が曖昧になりがちだ。

また24mmから70mmの画角までカバーするのは、超広角の手前から中望遠に至るのだから設計が難しそうなのが光学素人の私にもわかる。あと一息85mmまで望遠端を伸ばすとか、パースの圧縮が目に見えて生じる120mmくらいにすれば理想的なのかもしれず、こうした望遠側が長い標準ズームもあるが主力製品が70mm止まりなのは設計の難しさによるためだろう。このためか、どのメーカーの標準ズームもあっちを立てればこっちが立たずな傾向がある。

光学性能のデメリットは別として、24mmから50mmにかけての特性の変化を長焦点側にも求めるなら24-120mmズームがふさわしいのだろう。24-120mmをスタンダードラインナップ的に解釈すると、28mmに24mmのおまけ、105mmに120mmのおまけがついて大盤振る舞いの万々歳と言える。いつどんなとき使うのか「?」な可能性があるものの、たった一本のレンズでおおよそほとんどの撮影ができそうな安心感はある。上図では85mm以上120mm以下として黄色のポイントを置いた。

便利そうだし、理想的なのだが「120mmは必要なのか問題」があるから24-70mmでメーカーとユーザーがお茶を濁しているのが現状だ。様々な撮影実態を思い巡らすと、120mmが必要になる頻度は極めて稀だ。もし120mmが使用頻度の高い焦点距離なら135mm単焦点がもっと売れてよいだろうと感じる。また標準ズームの望遠端を使うより70-200mmズームのほうが光学性能が安定して高水準でもある。レンズ1本に絞り込まざるを得ない登山等の用途を除けば、多くの人が標準ズームと70-200mmズームを使っているはずでもある。ならば、標準ズームはもっと割り切った使い方にしたほうがよい。

以前、24-70mmズームレンズは「広角ズームにおまけの70mmがついているレンズ」と書いた。24-70mmの中間位置は47mmで、標準を基点にして画角を広く狭くする目的のズームなのは間違いないが、このまま使うと望遠側に不満が残る。そこで35mmを基点に超広角の手前まで画角を広くでき、標準の先まで狭くできるズームとして再定義すると割り切りがよくなる。「24-50mmズームに余裕の70mmまで着いているお得なレンズ」とするのだ。以下の比較図を見るまでもなく、実際に使用しても50mmから35mm、さらに24mmまでズームした場合の描写の変化が著しい。24-50mmズームなんて現在のところ存在していないと思うが、この間を使うだけでも守備範囲はかなり広い。こうなると、24-70mmズームの選びどころは長焦点側の画質ではなく24-50mm間の性能如何になるだろう。

写真撮影は感覚や感情に大きく影響されるものなので、使用するレンズの焦点距離を画角から一律にどうこう言えるものではない。「スタンダードラインナップ」にしても、最小のレンズ構成にするにはどうしたらよいか考えたものにすぎないし、ルポルタージュのように比較的客観性がもとめられる組み写真を違和感なくつくるのを想定している。客観性と違和感もまた杓子定規に定義できるものではない。

私は海景と題した一連の作品をつくる際、スタンダードラインナップとかけ離れたレンズ群を使用している。15mm、45mm、135mm。15mm、24-70mm、135mm。15mm、45mm、85mm。これらから長焦点側を抜きにしたパターンも使用頻度が高い。24-70mmを含むケースは撮影地の状況が事前に読めない場合だけといってよい。今後パターンが変わるすれば、15mm、24mm、45mmになるかもしれない。いずれにしろかなり偏った構成だがスタンダードラインナップの画角相関は頭の片隅にあり、そこからどれだけ逸脱すればどうなるかを考えている。

とはいえ画角X°と言われてもぼんやりした理解にしかならず、撮影慣れした人ほど焦点距離ごと自己流の固定観念が生じているため一覧比較図にしてみたのが今回の記事だ。高画素機が一般化した現在、レンズの画角選択にトリミングで詰められるかどうかの判断を加えてもよいだろう。画素数が十分に多いとき、ライカ判から1.5倍に拡大するに等しいAPS-C判相当余裕をもって切り詰められる場合が多い。先の例では35mmで撮影して50mm相当の画角にしても印刷等で破綻することはない。しかし、35mmの画角から70mm、105mm相当の画角に切り出すのは(使用サイズによって違うとしても)再サンプリング・リサイズ処理するとしても避けたいところだ。

おまけ)

 

Fumihiro Kato.  © 2018 –

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Profile

F.Hiro.K
加藤(文)文宏 / Fumihiro Bun Kato a.k.a Hiro.K
写真家・作家 / Photographer Author
・北海道北見市生まれ。
・大学卒業時までに詩集「無題あるいはサラバ」、同「Cadenza」発表(共に絶版、在庫なし。「Cafebza」別装丁私家版のみあり)。
・スタジオ助手、写真家として活動の後、広告代理店に入社。
・2000年代初頭の休止期間を除き写真家として活動。(本名名義のほかHiro.K名義他)
・広告代理店、広告制作会社勤務を経てフリー。
・不二家CI、サントリークォータリー企画・取材、Life and Beuty SUNTORY MUSEUM OF ART 【サントリー美術館の軌跡と未来】、日野自動車東京モーターショー企業広告、武田薬品工業広告、他。アウトレットモール広告、各種イベント、TV放送宣材、MIT Museum 収蔵品撮影 他。
月刊IJ創刊、編集企画、取材、雑誌連載、コラム、他。
・長編小説「厨師流浪」で作家デビュー。「花開富貴」「電光の男」他、小説のほか、エッセイ等を執筆・発表。
・獅子文六研究。
・インタビュー & ポートレイト誌「月刊 IJ」を企画し英知出版より創刊。同誌の企画、編集、取材、執筆、エッセイに携わる。
・各メディアにおけるスチル撮影。
・オリジナルプリントの製作、販売。
・JSAHP正会員
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