D850と810、800Eの共存は可能か

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ここしばらくタイトル通りのことを試写したり本気で撮影しながら考えていた。数ヶ月間、溜め込んでいたことを書こうと思う。

ニコンから便宜を図ってもらっている訳ではないので率直に書くけれど、被写体によってはD850と810、800Eを共存させて、それぞれが混ざった状態で一つのテーマで作品をつくるのは無理かもしれない。これまで有効画素数5000万画素級の(どこのどれとは言わないけれど)別のカメラを試写させてもらった経験からすると、D850の4575万画素は「オバケ」のような存在だ。画素数が増えれば解像感があがるのは理論上の話であるが、D850は解像感もトーンの出かたも異常なくらいだ。810、800Eも優秀なカメラではあるけれど、被写体のディティールや明暗の関係などで「あと一息、トーンが出て欲しい」と感じる場面がこれまであり、Capture OneによるRAW現像時にマスクを施して軽くストラクチャーやシャープネスを与えることがあったけれど、同条件でD850はこうした操作がまったく必要ない。これから先、中判はどうするつもりだろうか。

注意深く書くけれど、単に解像感が向上しただけではないようで、トーンが自然かつ写真的だ。ヌメッとしているし、情報に満ちている。モノクロ化して作業するとき、絶妙なテクニックで現像をした大判フィルムから紙焼きをつくっているような感覚になる。ここが「オバケ」な点であり、他社、他のカメラを悪く言う気は毛頭ないが、これまで経験したことのないデジタル写真であった。なので、810と800Eを前提にして組み上げてきたライティングを微調整する必要に迫られるというか、このままなら別物の写真ができあがるというか。トーンの踏ん張りがすごいのだ。

もう一度書くが、D810と800Eは優秀なカメラだ。ちゃんと撮影して両機から出力する画像は現時点でも有効だ。どこに出しても恥ずかしくないどころか、胸を張りつつ腕のせいと言いつつ心ではカメラのおかげとしみじみ思うくらいだ。しかし、D850はオバケなのだ。

静物撮影でD850と810、800Eを混在させて使うことはほぼないだろうが、もっとも差が出るのが静物をライティングして撮影するときだと私は感じる。もしかしたら撮影者だけがギョッとなるだけで、他の人は違いに気づかないかもしれない。何につけ往往にしてこんなものだ。屋外の景観を撮影するケースでは差は縮まって感じられるかもしれないけれど、自然光が厳しい(しかし面白い)状態のときはトーンの差となって記録画像に現れる。で、こればかりは自分で撮影してみないとわからないもので、あちこちに出回っている他人の写真から伝わるものではまったくない。

D850と810、800Eを共存させるなら、810と800Eは雑に撮影できない。もっとも得意とする感度つまり810ならISO64、800Eなら100で撮影し、もっともトーンを出したい場所を的確な露光値を与えるようにしたくなる。

ずっと考え、こうして書くこともなかった感想などを今頃になってどうして公開したのか。変なものを見てしまったのだ。

ここ何年もお座敷がかかる特定のメーカーの広報マンになっている有名写真家の方が、D850について熱度低く「出し惜しみがない」としか語らず、ファインダー倍率やらの話しかしないのをちらっと見たとき、特定メーカーに囲われるのは嫌だなとつくづく心から思った。発売前に私が聞いて期待していたように、D850のファインダーは秀逸だ。発売とともに、フィルム複写装置が登場し、D850に複写モードのようなものが搭載されたのもトピックだろう。とはいえ、これらしか語れないのではいろいろまずいのである。貸出機を使い現像したなら驚きがあっただろうに。D850は黙っていても売れるから、苦境に立っているメーカーをプッシュするというなら、フリーの広報マンではなく専属の宣伝マンだろう。ひと頃ライカ、ライカと言っていた人々もひどいけれど、撮影者ならではの内容を自由に語れなくなるなら広報宣伝活動なんてやるものではない。教師でもないのに先生! 先生! と呼ばれる環境なんて最低なものだ。

みなさんのところにも届いたかもしれないが、Capture OneのPhase Oneから中判カメラについてのアンケートへの馬鹿丁寧な英文の誘導メールが過日着信した。たぶん同社製品を継続して長年使い続けている人へのものだろうと思われる。不遜ではないけれど、常々けっこうお高くとまっている会社にしては低姿勢で、しかもアンケートに答えるとオマケまでついてくるというのは本気度を感じるし、このようなことはほんと稀だ。アンケートの内容で印象に残ったというか、設問が多かったのは中判機Phase Oneと他のカメラの購入についての部分だ。

中判機にいくらくらい金を出せるか、これから○ヶ月の間にどのようなカメラにいくら支出するつもりか、Phase Oneの中古機・再整備機を買いたいと思うかといった切実な設問だった。誰もが知っているように、かつて中判機が必須だった撮影はライカ判フルサイズ機で十分になり、しかもこうしたカメラのほうが価格が安い。Phase Oneはバック交換機として、将来的に画素数が増えたりセンサーと回路が優秀になった際は本体を買わず済むので経済的にアップグレードできると何年も前は言っていた。もちろん、ここ二、三年はトーンダウンしている。バックだけで数百万円となるとササッと買える撮影者ばかりではないし、だったら本体ごと買い替えてもお釣りがくる製品が続々と他のメーカーから登場した。やはり売りあげが頭打ちで、ビジネスモデルを真剣に考えなくてはならなくなったのだろう。

前述のベンタックスやフジの中判機(にハッセルのミラーレス中判機やライカ中判機を含めたもの)だけが切実さに追い打ちをかけるのではなく、ここは想像でしかないがアンケートの時期からしてD850の影だって感じざるを得ない。設問にプロシューマー用高画素ライカ判フルサイズ機が含まれているのだし。ここには当然、ソニーやキヤノンの高画素機も含まれているだろう。これらの存在は、D800Eが登場して高画素のうえにローパスフィルターが取り払われたときの衝撃とまた違うベクトルへ画質を向上させた衝撃がある。そこに、D850だ。フォーマットが大きければ1画素のサイズに余裕が生まれ高画質と、もう言っていられない現実が積み重なってどうにもこうにもなのである。

Fumihiro Kato.  © 2018 –

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・スタジオ助手、写真家として活動の後、広告代理店に入社。 ・2000年代初頭の休止期間を除き写真家として活動。(本名名義のほかHiro.K名義他) ・広告代理店、広告制作会社勤務を経てフリー。 ・不二家CI、サントリークォータリー企画、取材 ・Life and Beuty SUNTORY MUSEUM OF ART 【サントリー美術館の軌跡と未来】、日野自動車東京モーターショー企業広告 武田薬品工業広告 ・アウトレットモール広告、各種イベント、TV放送宣材 ・MIT Museum 収蔵品撮影 他。 ・歌劇 Takarazuka revue ・月刊IJ創刊、編集企画、取材、雑誌連載、コラム、他。 ・長編小説「厨師流浪」(日本経済新聞社)で作家デビュー。「花開富貴」「電光の男」(文藝春秋)その他。 ・小説のほか、エッセイ等を執筆・発表。 ・獅子文六研究。 ・インタビュー & ポートレイト誌「月刊 IJ」を企画し英知出版より創刊。同誌の企画、編集、取材、執筆、エッセイに携わる。 ・「静謐なる人生展」 ・写真集「HUMIDITY」他
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