HUSKYその他、三脚の考え方

私は三脚といえばハスキー一択だが、人それぞれいろいろ思うところ、信頼できるものなど通り一遍ではないはずだ。念のためハスキー一択の理由を書くなら、壊れない、雲台がするっと動いてピタッと止まる、安定している、不具合が生じてもいつの年代のものであっても自分で修理できる、結果的に価格が安いところが素晴らしい。しかも8×10さえ載せられる。ただ、大判カメラさえ載せられる点は重厚長大と言え、もっとこじんまりした三脚で十分と考える人がいて当然だし、実際のところフルサイズミラーレスに中望遠以下の組み合わせならもっと軽量な三脚で十分だ。

ここが以前とだいぶ変わった点だろう。フィルム中判以上のフォーマットが必須だった撮影領域を、ミラーレスとレフレックスの違い問わずライカ判フルサイズで撮影可能になった現在、超望遠を使わないなら対荷重は3kgくらいあれば日常的にはまったく問題ない。また高感度設定であっても画像の劣化が少ない最近のデジタルカメラなら、三脚を使わなくて済むシーンだって増えた。なのに、ハスキーだけでなく堅牢なタイプの三脚を持ち歩くのでは労多くして得るものが少ない。だから、私の場合はハスキーへの絶対的信頼感から機材の中心に位置づけているけれど、同時にハスキーの雲台を取り付けたジッツォのトラベル三脚も使用している。なおメーカーがカタログに掲載している耐荷重はメーカー独自評価値であって、CIPAのような統一された基準にしたがっている訳ではないので鵜呑みにできない。

まずハスキーについて述べる。

ハスキーは世界初のジュラルミン三脚でアメリカ製(クイックセット社)だったが、現在はかつての輸入商社トヨ商事が製造販売している。エレベーター機構付きセンターポールもハスキーが世界初だ。ちなみに私が使用しているハスキーはアメリカ製のもので、この時代からトヨ商事は輸入された製品の検品が厳しく、アタリが出ていないものは部品交換をしたり再整備したうえで出荷していたので日本で絶大な信頼を勝ち得た。1960年代に現在のハスキーの特徴が完全に決定されたが、1940年代からすでに現行機種に通じるモデルを製造していた。半世紀以上何も変わっていないのは完成され尽くしているからであり、ハスキーまたはジッツォの三脚を真似にならないよう改良しているのが他社の動向で、両社の製品の周りをくるくる巡りながら現在に至っている。

ハスキーを買う場合は中核モデルの3段ではなく4段を買えと意見する人がいるのだが、目的に合わせて「どちらでもよい」。どちらでもよい理由は、1)4段全段伸ばす機会がいったいどれくらいあるか。2)4段全段伸ばしたとき開脚量が大きくなり、この開脚面積が許される撮影ばかりではない。3)脚が一段増えれば、自ずと重量が増す。4)3段で足りないケースが発生したら、残りの1段分の脚だけ買って自分で取り付けることができる。と、いったことを考えて好きなものを買えばよいだけだ。なおハスキーは(ジッツオとともに)重いと言われるが、同等サイズのカーボン三脚と比較したとき大差ないか同じくらいの重量だ。

ハスキーの堅牢さは全段伸ばしても全くしならない脚の頑丈さのほか、(分解可能だが)雲台とセンターポールが一体化している点も重要だ。なのだけれど、そもそもが堅牢そのものなので、これから買う人は一体型タイプではなく脚部と雲台別体型を購入するほうが応用範囲が広がるだろう。ハスキーの雲台はかなり優秀なので、私はジッツォのトラベラーにも取り付けている。ただし雲台だけ購入するとパン棒が2本とも短パン棒なので、長パン棒H-20も同時に手に入れるべきだ。もちろんパン棒を緩めて外して取り替えるだけである。

ハスキーを買ったらまずストラップを取りはずす。あればあったで使うのだろうが、ストラップがついているとセンターポールを逆さまにする低位置セッティングができない。取りはずしの方法は簡単だが、やり方がわからないなら検索すれば丁寧な説明がいくつも見つかる。これで、倒しても、投げても、転がっても壊れず一生モノの三脚が即戦力になる。

ハスキーと同等サイズのカーボン三脚の重量が変わらない点については前述の通りだ。しかし、このサイズの三脚が重いというのであればもっと軽量でコンパクトなものを使ったほうがよい。では、どのような三脚がよいのか。

ジッツォの小さい(軽い)のを買っておけば間違いないのは事実だが、結構なお値段でもある。またメーカーでひとくくりにできない部分もある。こうなっては実物をチェックするほかない。最近は通販が便利になったけれど、他人が説明して勧めるものが常に自分にとって最善とは限らず(私のハスキー推しもまた)、ことに三脚は個々の製品ごと千差万別で何台も買うものではないから、やはり実店舗に行くほかないのだ。

その前に、自分の体力、腕力、用途をかなり厳しく見積もっておく。店舗で全前段脚を伸ばした状態で雲台にやや力を加え、脚がズズッと広がりつつたわむかたわまないか調べる。このたわみが前述の体力、腕力、用途の見積もりから許容できるか否か判断する。ちなみに私が使用しているジッツォのトラベラーはハスキーのような頑強モデルではないから脚がたわむ。たわむけれど、ヘロい訳ではないし軽いので持ち運びが容易で重宝している。だいたいにおいて三脚は、大きめと小さめ(軽め)の2台必要になるのを肝に命じておけばよいと思う。

三脚と雲台の接続は1/4ネジ(細ネジ)と3/8ネジ(太ネジ)の2種がある。国産三脚の中サイズ以下はだいたい1/4ネジであるが、国産では大きめな三脚にも細ネジタイプがある。普通の用途であればたぶん細ネジでも堅牢性は問題ないのだろうが、年寄りの私は太いほうが安心できる。国際的にはここは太ネジにするのが通例であり、したがって雲台側も世界的には太ネジのメスになっている。細ネジと太ネジは変換アダプターがあるのでなんとでもなるけれど、雲台側の細ネジのメスを太ネジのオスに対応させるのは無理。なぜ国産三脚はいつまでも細ネジを使っているのだろうと首をかしげざるを得ないのだが、首をかしげていても事は前に進まないのでどちらも太ネジの製品を買っておくのが最善な気がする。雲台はスムースに動いてピタッと止まるのが鉄則で、なんといっても工作精度と強度が求められる三脚の命とも言える部分だ。自由雲台は2つめに買うものであって本筋ではないから、3ウエイ雲台のしっかりしたものを買いたい。

次に脚の締め付け方式。レバー式とスクリュー式があり、マンフロットはなぜか三脚に限らずレバー式を採用しがちなのだが、圧倒的にスクリュー式の方が長寿命であり確実だ。レバー式の方が素早く止められるなんてことはまったくないし、そんなに慌てて止めなければならない用途があるはずがない。

最後にメンテナンス。全バラシできてパーツがすべて手に入れられるハスキーを勧めるのもメンテナンス性にあるのだけど、ここまでやらなくても可能な限り自分で整備できるものを買うべきだ。三脚は壊れるはずがない無骨モノと思われているし、実際に大手メーカーの製品は投げたくらいでは壊れない。しかし、使えば使うほど知らず知らず劣化するのはカタチあるものの宿命で三脚だって例外ではない。稼働部分が多い雲台、エレベーター、脚の締め付けといった箇所は汚れや埃が溜まることでスムースさを失い、場合によったらピタッと止まらなくなる。なので掃除してやり、古いグリースを拭き取るとともに薄く塗る。グリースは自動車やバイク整備用の数十グラム単位(300〜500円程度)で販売されているものが持て余さないのでよいだろう。リチウム、モリブデン、シリコーン、ウレアとさまざまな種類があるけれど、三脚のメンテナンス用ならこれらいずれでもあっても問題ない。いろいろ気になる人は、それぞれのグリースの特徴を研究して選択するのがよいだろう。自動車やバイク整備用なら粘性も適度だ。クレ556はグリースではないし、必要なグリース成分を洗い流してしまうので使ってはならない。

三脚は消耗品ではない。また、ちゃんと考えて買えば一生のうち何台も買い換えるものではない。またこうした特性から、買い替えが億劫になったり、買い物の失敗を買い替えでカバーするのが心理的につらくなりやすい。だからこそ中途半端な買い物はすべきでなく、使い続けるためにはメンテナンスが不可欠だ。

以前ならハスキーを買っとけで済んだし、写真学校はハスキーは買わせているしで、これ1台あれば他に別用途用を買うくらいで一生涯使えた。しかし、冒頭に書いたようにハスキーやジッツォでなくても万能な使い方が可能な三脚が、写真のデジタル化で選択できるようになった。とはいえ、この世のすべての三脚が後悔なく使えるかとなると、けっこうダメな製品が多い。 三脚を使う目的はカメラを固定して安定させるためなので、そもそも安定させるため強度と重量が必要で、強度を落とすほか軽量化は困難であるのは理解しなければならない。カーボンであっても強度を出そうとすれば自ずと重くなる。また重くなければ安定しない、と堂々巡りなのである。

自分の体力、腕力、用途を厳しく見積もる。
大と小の2台を買うことになる。
大小それぞれのサイズ感は、人それぞれの撮影スタイルで変わる。(メーカーが分類したり推奨するカテゴリーとは無関係)
大と小の中間は必要ない。
太ネジなら互換性が担保できる。
新機軸・新機能は人柱になった人の報告が出揃ってから取り入れる。
実物を確かめないで買うのはイメージだけで買うのと変わりない。
三脚はメンテナンスをしながら使う機材。

三脚選びはカメラ選びより難しいのだ。

Fumihiro Kato.  © 2018 –

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Profile

F.Hiro.K
加藤(文)文宏 / Fumihiro Bun Kato a.k.a Hiro.K
写真家・作家 / Photographer Author
・北海道北見市生まれ。
・大学卒業時までに詩集「無題あるいはサラバ」、同「Cadenza」発表(共に絶版、在庫なし。「Cafebza」別装丁私家版のみあり)。
・スタジオ助手、写真家として活動の後、広告代理店に入社。
・2000年代初頭の休止期間を除き写真家として活動。(本名名義のほかHiro.K名義他)
・広告代理店、広告制作会社勤務を経てフリー。
・不二家CI、サントリークォータリー企画・取材、Life and Beuty SUNTORY MUSEUM OF ART 【サントリー美術館の軌跡と未来】、日野自動車東京モーターショー企業広告、武田薬品工業広告、他。アウトレットモール広告、各種イベント、TV放送宣材、MIT Museum 収蔵品撮影 他。
月刊IJ創刊、編集企画、取材、雑誌連載、コラム、他。
・長編小説「厨師流浪」で作家デビュー。「花開富貴」「電光の男」他、小説のほか、エッセイ等を執筆・発表。
・獅子文六研究。
・インタビュー & ポートレイト誌「月刊 IJ」を企画し英知出版より創刊。同誌の企画、編集、取材、執筆、エッセイに携わる。
・各メディアにおけるスチル撮影。
・オリジナルプリントの製作、販売。
・JSAHP正会員
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