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人物撮影の日中シンクロは、例外はあるとしても光源と人物の距離はかなり接近させることができる。しかし、風景・景観を撮影する場合は被写体が遠距離にあったり画角を比較的広く取るため光源との距離は遠くならざるを得ない。こうした場合、光は距離に従い減衰するのでかなり大きな出力が必要であるし、距離によっては高出力の光源でも太陽光に太刀打ちできない結果になる。ハイスピード発光・FP発光と呼ばれる点滅発光の場合、通常の発光より総出力が小さくなるので風景・景観ではなおさら使いにくい。
以前、8m以遠の被写体は日中シンクロは向かず、効果があるのはせいぜい5mくらいまでだとした。
現在のところクリップオンストロボは最高でも80Wくらいの出力だ。たった80Wの出力なのにかなり強い光量が得られるのは発光部にフレネルレンズが取り付けられているためだ。しかし、80Wでは8m以遠の被写体に対して露光を左右するほどの能力はない。
クリップオンストロボのように使える200Wから300Wくらいの出力のストロボがある。GODOXのAD200(200W)やAD360(360W)といった製品だ。これらのうちAD200にはフレネルレンズがあり、AD360はフリレクターの装着が前提なのでオプションがない。AD200をフレネルレンズ付きで使用したとき、快晴以上の明るさEV15〜16で5.6〜8m以内なら逆光気味のやや暗くなった箇所を持ち上げて明るくする能力がある。ただし劇的な効果を与えるほどではない。私はAD360IIを所有しているので、もうすこしどうにかならないだろうかと考えたすえ、定常光に用いるAputure COB 120d 用フレネルレンズを手に入れた。AD200のオプションのフレネルレンズより集光性能が高い製品で、12〜42°の間で照射角を変えられるボーエンズマウントの装置だ。Aputure COB 120d用フレネルレンズ はKPIケンコーの直販で買うのが最安かつ確実で価格は7,900円。
フレネルレンズは凸レンズの曲面を同心円状の溝に置き換え、厚さを可能な限り薄くしたレンズだ。同等の屈折率の凸レンズと比較し、厚さをかなり薄くでき重量もまた大幅に軽減できる。こうした特性から灯台の光源に用いられている。Aputure COB 120d 用フレネルレンズは灯台に用いられるフレネルレンズとまったく同じ働きをするので、集光された光は遠方に到達して露光にある程度の影響を与える可能性が高くなる。カタログ上では14,000luxを0.5mで100,000luxにすると書かれているが、アバウトな表現なので実効値を推察するくらいに留めておきたい。ちなみに14,000luxはやや暗めの曇りの日中、100,000luxはドピーカンといった感じだ。EV値では3〜4段程度の差を与えられることになる。
このようにストロボ光がAputure COB 120d 用フレネルレンズによって高効率化されても、光が距離に応じて減衰するのは変わらない。したがって晴天時は太陽に伍する影響を遠方の被写体に与えるのは無理だが、フレネルレンズ付きのAD200やクリップオンストロボで日中シンクロするより大きく幅広い効果を得られる。レンズが円形かつガラス製で配光にムラが少なく、筐体がグラスファイバー製で軽いのがうれしい。照射角42°はライカ判45mm、12°は180mmの水平画角に近い。一般的なクリップオンストロボのフレネルレンズは縦横に比を持つ四角形のなので形状なりの四角形に光を照射するが、Aputure COB 120d 用フレネルレンズは光を円形に照射しAD360IIのチューブの特性を生かした配光になる。また縦横の別がないので照射角と実際に照射される範囲を想定しやすい。
このフレネルレンズが用意されているAputure COB 120dはLED式の定常光装置で、主にムービーを想定してつくられている。同じ機能を持つ定常光用のフレネルレンズには、他にやや安価なプラ製でボーエンズマウントの製品があるが現在のところ入手が難しくなっている。Ptofotoにもフレネルレンズがラインナップされていて、こちらは205,200円(実売190,000円程度)2.6kgとかなり重厚長大になる。
Fumihiro Kato. © 2018 –
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