シンクロ接点の電圧

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ストロボを発光させるためカメラボディーにはシンクロ接点(PCターミナル)およびホットシューがある。これらに取り付けられたストロボ側の+と-接点が、シャッターを切るとともにショートすることでストロボは発光する。こうした基本的な動作は古いストロボも最新型も変わるものではない。問題は、カメラボディーのPCターミナルおよびホットシューに何ボルトの電圧がかかるかの違いだ。大型ストロボ(ジェネを使うものやモノブロック)は発光そのものに小型ストロボ以上の高圧電流を使い、そもそも100から220Vの電灯線に繋いで使うものなので、もしもの事故の危険性を排除するためシンクロ接点には10V程度の低圧電流をながすように昔からつくられていた(とはいえ必ずしも10V近辺とは限らない)。厄介なのはむしろ気軽に使えるクリップオン型やグリップ型の古い機種だ。

カメラをバネや歯車で動作させていた時代や、せいぜい連動露出計が組み込まれた時代、もう少し高度になり多機能な露出制御の基板が組み込まれた程度の時代は、ストロボをシンクロさせるためストロボから高圧電流を流しても内部が破壊されることはなかった。いくら牧歌的な時代とはいえシンクロ用の回路はボディはもちろん内蔵される他の回路から絶縁されているので、撮影者が感電することもなければ他の回路が破壊されることもほとんどなかったのだ。このためクリップオン型やグリップ型の古い機種では、シンクロ接点やホットシューにストロボで昇圧された200〜300Vの電圧がかかるものがある。仕組みとしては、室内にあかりを灯すため壁のスイッチを入れるのとなんら変わらない。なぜこんなことになっているかと言えば、小型のストロボボディーに発光トリガーのためだけの別回路を組み込むのはサイズの制約からも価格競争力の上からも避けたかったからだ。シンクロのため高圧電流を流すこうしたストロボは高度に電子化された現代のカメラの電気系統を破壊するので注意が必要だ。

古いストロボの話をしたのは、機材をごそごそ漁っていたらグリップタイプのSUNPAKのauto 555が出てきたからだ。auto 555は1990年代初頭くらいの大光量モデル。シンクロ電圧が不明で、もし使えるなら延命措置を取ってもよいが、使えないなら捨てるほかない状態である。SUNPAKに訊いてみる前に情報を探したら、こんなサイトがあった[http://www.botzilla.com/photo/strobeVolts.html]。圧倒的なブランド数、機種数のシンクロ電圧を実測した結果が網羅されている。auto 555は実測値に幅はあるが4.7〜6.9Vに収まっている。めでたしめでたし。

このサイトの冒頭に書かれている概要を読むと、10Vですらやや電圧が高く6V程度を推奨するカメラがあるらしい。またISO規格ではISO準拠カメラは24Vまで耐えられなければならないとされているとも書いてあり、規格が実際には重視されていないともある。ちなみにサイトはCANON EOSで安全に使えるかどうかを目的にしている。なぜEOSか? それはフィルム機含めEOS系はシンクロ電圧6V前後が仕様でへたをすると10V程度の電圧でも故障するためだ。一方でNIKONの一眼レフは許容範囲が広いと言われているが、言われるまま鵜呑みにできる訳でもない。このため昨今は5V以下でシンクロするストロボが多い。

高圧シンクロ型のストロボを現代のカメラで安全に使うには、高電圧を分離する回路をつくってカメラとの間にかます方法は思いつくが自作してシンクロミスなく常に作動するかすこしでも疑念があれば実用とは言えず、ワイヤレストリガーを使う方法くらいしか現実的な解が見つからない。ただし、ワイヤレストリガーの受信機が電圧に耐えられるかは未知数。でも実験によって壊れてもカメラほど痛手ではないのが救いだ。カメラのデジタル化がはじまる以前、フィルムカメラの高度電子化が満遍なく行き渡った頃、つまり1990年代のストロボはほぼ低電圧化されている。高電圧によってカメラが故障する事例が目立ったのは、80年代の後半くらいだった気がするが、だからといって90年代のストロボのすべてが低電圧化されている訳ではない。電圧よし、チェック発光よしでも、こうした年代のストロボは経年劣化によって発光の色温度が規定値よりずれている可能性がある。使えるか、使えないかは使用者が判断しなくてはならない。

カメラ店のジャンクコーナーやオークションサイトに古いストロボが結構出回っている。また防湿庫や機材棚に古いストロボが転がっていたりする。自分で使ったり誰かにあげたりするには、電圧と色温度の問題があるのを理解しておきたい。小さなクリップオンストロボだから電圧は大して高くないだろうなんて思いこみに過ぎず、チューブ内に放電して発光させる仕組みは変わらないのだから古い中型、大型のクリップオンストロボと変わらぬ電圧をPCソケットやホットシューに通電している場合がある。

 

Fumihiro Kato.  © 2018 –

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・スタジオ助手、写真家として活動の後、広告代理店に入社。 ・2000年代初頭の休止期間を除き写真家として活動。(本名名義のほかHiro.K名義他) ・広告代理店、広告制作会社勤務を経てフリー。 ・不二家CI、サントリークォータリー企画、取材 ・Life and Beuty SUNTORY MUSEUM OF ART 【サントリー美術館の軌跡と未来】、日野自動車東京モーターショー企業広告 武田薬品工業広告 ・アウトレットモール広告、各種イベント、TV放送宣材 ・MIT Museum 収蔵品撮影 他。 ・歌劇 Takarazuka revue ・月刊IJ創刊、編集企画、取材、雑誌連載、コラム、他。 ・長編小説「厨師流浪」(日本経済新聞社)で作家デビュー。「花開富貴」「電光の男」(文藝春秋)その他。 ・小説のほか、エッセイ等を執筆・発表。 ・獅子文六研究。 ・インタビュー & ポートレイト誌「月刊 IJ」を企画し英知出版より創刊。同誌の企画、編集、取材、執筆、エッセイに携わる。 ・「静謐なる人生展」 ・写真集「HUMIDITY」他
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