ライティング機材の選び方を一考する

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1. ストロボの選び方
2. 拡散光用装置(アクセサリー)の選び方
3. 用途に応じた柔軟な考え方

カメラはマウントによって、その後の機材構成もまた決定される。一方、ライティング機材は自由に入れ替えができるように思われているが、どっこいそんなことはないのだった。まず価格と効果の縛りがあり、ストロボにもマウントの制限がつきまとうのだ。価格と効果の縛りとは、何か。ジェネを使用する大型ストロボは大変高価であるし、モノブロックも安い買い物ではない。高価であれば買い替えは慎重にならざるを得ないし、安い買い物ではない微妙な価格であってもブランドごとのライティング効果の差がほとんどなくむしろテクニックや工夫次第なので買い替えの踏ん切りがつきにくくなるのだ。そしてここにアクセサリーとの結合マウントの問題が関係してくる。カメラにマウントアダプターがあるように、ストロボにもマウントアダプターがある。ストロボ用マウントアダプターには、特定ストロボブランド(メーカー)と他の規格のアクセサリーをつなぐものと、汎用マンウントと呼ばれるストロボブランドを選ばないものとがある。ところが汎用と言いながらストロボブランドによっては結合できなかったりするのだ。こうしたマウントの制限はカメラとレンズにおける制限とそっくりで、ストロボもしくは拡散装置をあるマウントで統一した後は、他のブランドに鞍替えしにくい状況になる。なので、ストロボ、拡散光用装置ともにブランド(または規格)選びは慎重に行いたいものだ。

1. ストロボの選び方
まずストロボをどうするか、から考えるのが本筋だろう。出力だが、大きければ大きい方が自由度が高い。最大出力が大きくても出力を絞って使用できるので、まさに大は小を兼ねるだ。最大出力が100W、200W程度のモノブロックがあるが、このような低出力では後々不便極まりなくなるだろう。100W、200W程度のモノブロックは概ね中国製かつ最近はバッテリータイプのものが増えていて安価で便利っぽいが、だったらGODOXの(クリップオン的に使える)ADシリーズにしたほうが圧倒的によい。ADシリーズのメリットはクリップオン的に使える点より、むしろ小型であることだ。低出力とはいえ100W、200W程度のモノブロックは300W以上のモノブロックと変わらぬサイズと重量であり、このことだけ考えても使い手のない代物と理解されるだろう。ではジェネ使用の電源・発光部別体型はとなると、私見だがスタジオは別にして何かと重厚長大・高価格でダウンサイジングが進む昨今のストロボ事情からは勧めにくいものとなっている。また最近の動向としてTTL調光可能な製品も現れているけれど、知りたい、反映させたい露光量は反射光式露出計で計測できるようなものではないので、クリップオンなら別だが大型のストロボには不要だろう。

では発光部は何台所有すべきか、だ。3台あれば困ることはないだろう。2台でも十分かもしれず、4台以上は多分いらない。メイン1灯、サブでもう1灯、設置場所の制限があるならサブは大出力クリップオンにするほうが何事も単純化できる。300W以上の出力を持つモノブロックを2、3台と大出力クリップオン1〜2台あればかなり色々できるだろう。

ここで冒頭に書いたマウントの話になる。アンブレラはマウントと関係なくリフレクターに開けられた穴次第でいくらでも使い回しできるが、他のアクセサリーはストロボ発光部のマウントによって選択肢が制限される。このため独自マウントを採用しているストロボメーカーはソフトボックスなどアクセサリーも製造販売している。なのだが、価格が高かったり、サイズの選択肢が少なかったりと純正品だけではどうにもならないケースがある。かつてカメラにおいてライカLマウントやM42マウントがユニバーサルなマウントであったように、ストロボではボーエンズ社の通称ボーエンズマウントに対応したアクセサリーが増えてきた。ところがストロボ側でボーエンズマウントを採用しているのは中華製品くらいで、国産および海外の有名どころは独自マウントである。そこで専用あるいは汎用アダプターの出番なのだが、専用アダプターが販売されていないストロボブランドや汎用アダプターでも適応できないブランドがあるのだ。なので、どこのストロボを買うか決め難いときは(1)ブランド専用の装置の豊富さ (2)ブランド専用のアダプターの豊富さ (3)汎用アダプターが対応できるブランドかどうか を基準に考えるのがよいだろう。

(3)の汎用アダプターが対応できないブランドだが、マイナーなストロボメーカーは情報が収集しにくいし、メジャーであってもプロペット(Propet)などは現在のところ構造的に使用できる汎用アダプターが少ない(存在しているが、ボーエンズマウントに変換するものは皆無?)。だからといってプロペット製品が劣るかとなると、まったくそういうことはない。またプロペット以外のブランドで汎用品がかならず使えるかとなるとそうでもない。ストロボのマウントはカメラのマウントのように精密なものではないので簡単な工作で乗り切ることができる場合が多い。昔からある手法で多くの人が行なっている例を紹介する。

ストロボのマウントの多くが突起と切り欠きを噛み合わせる構造になっている。カメラのマウントにバヨネットとスピゴットがあるように、本体側が突起になるか切り込みになるかの違いもある。ボーエンズマウントは本体側がアクセサリーの突起を受けるスピゴットマウントである。難なく工作できるのは、本体側が突起のケースだ。以下の写真は上からプロペットのリフレクター、サンスターのリフレクター、サンスターのコンバインヘッドで、これらは本体側に突起を持つものである。

こうした構造に対して汎用マウントアダプターは突起より手前側(開口部側)の筐体をネジ等で締め付けて固定するようになっている。例えばプロペットの場合、突起より手前側(開口部側)がかなり短い(浅い)ため締め付け強度が出ず、アダプターが固定できてたとしてもアクセサリーの重量を支えることができない。プロペットに限らず同様の問題がある場合は、発光部のマウントを延長する筒をつくることでアダプターの固定が可能になる。

厚さ0.2〜0.3mm程度の金属板(銅、真鍮、鋼)をマウント部に装着するのに必要な幅、長さ(円周)で切り取る。幅はマウントアダプターの固定部の深さに合わせるのがよいだろう。ここに噛み合わせの切り込みを入れる。筒をつくり強力なピンチなどで合わせ目を固定し鑞付けする。素材を銅、真鍮、鋼(トタンなど)としたのはアルミでは鑞付け(半田付け)ができないからだ。こうした素材は0.5mmを超えると曲げ加工が難しくなるが技術がある人なら問題はない。金属板は数百円程度、金属を切るハサミは千円以内でホームセンターで入手可能だ。切り込みは電動ドリルで連続した穴を開けることでつくることができる。マウント部やアダプターを採寸したら厚紙を工作して装着してから、これに合わせて金属を加工すれば間違いはない。ただこれは何があってもつくった人の責任であるし、面倒くさいとなれば最初から専用マウントアダプターや汎用マウントアダプターが揃っているブランドのストロボを買ったほうがよい。

写真を撮ること、ライティングをすること、いずれも(ふとしたきっかけで)工作が不可欠になるから前記したような工具は持っていて損はないと思う。

2.拡散光用装置(アクセサリー)の選び方
前述したようにソフトボックスは製品ごと(ブランドごと)の違いが大きく構造の差もまた大きい。そもそもソフトボックスの定義からして曖昧で、発光部が被写体側を向いているものを指す場合が多いが、アンブレラ同様に反射光を使用するものもある。光の質の好みは人それぞれ、目的によってばらばらなので、定義からして曖昧なソフトボックスを主語が大きなまま良いとか悪いとか、性質はこのようなものだとか言えたものではない。とはいえ大雑把に定義すると、ソフトボックスはストロボなど光源を覆い尽くした上でディフューザー越しに照明する装置と言えるだろう。代表的な構造のソフトボックスで検討しなければならないのは次の図中のポイントだ。

ソフトボックスは開口部の形状そのままの光が使えると思われているが誤解である。ストロボのチューブの形状は様々だが、被写体のサイズからしたら点が発光しているのと変わりない。発光する点からの光は球形に拡散される。ソフトボックス内面の反射があるので円形の光ではないが、ソフトボックスから被写体が遠ざかるほどに四隅の光は使いものにならなくなる。使い物にならないのは、光量が中心部と比べかなり減り拡散装置の個性が消えるからだ。もっとも有効な光は開口部の最大内径以下の円形である、と考えたほうがよい。良いソフトボックスとは、光の質以前に有効な光の領域が広い製品のことだ。さらに、開口部の一辺が長い製品では長辺側はほとんど使い物にならない光しか被写体に投じない。こうした長方形の開口部を持つソフトボックスの存在意義がまったくないとは言わないが、長辺側にあまり期待しないほうがよいだろう。

次はアンブレラについて考える。アンブレラは私がもっとも好むアクセサリーだ。傘を広げるだけで用意でき、特殊なアタッチメントがなくても使用でき、装置ごと光の質が大きく変わることもない。また価格が安いこと、ストロボに出力さえあればかなり大型のアンブレラを使えるのもよい。一般的にアンブレラの光はソフトボックスのような直進性がなく、どこへ飛ぶかわからないと言われる。これはソフトボックスの多くがストロボを被写体に向けてセットするのに対して、アンブレラでは傘に向けて発光させた光を反射させて使うことによる。たしかにこういった傾向はなきにしもあらずだが、光量差が生じる数センチ、数十センチの違いを意識せざるを得ない撮影は厳密であることを求められるブツ撮り、静物撮影に限られるし、こういった場合は遮光でなんとかするか、別のアタッチメントやライティング方法があるのだから神経質になってアンブレラはダメだとクサす必要はないだろう。どこへ飛ぶかわからない指向性の低さと言ったところで、だいたいは傘が開口している方向を照明できるのだから見当がつかない訳ではない。

ソフトボックスで一辺180cmの製品となると、開口部の大きさ以上に背後にかなりサイズが大きくなるし、背後の深さは光の助走区間なので距離をケチった省スペース型の製品では有効な光の面積が稼げなくなる。確かに直径180cmの開口部を持つアンブレラは巨大ではあるが、最近はグラスファイバー製の骨が採用されるなど扱いがとても楽になっている。また箱型の構造物を維持するより、まさに傘そのものの構造の方が強度を得るのに合理的で、軽量でもある。もちろんソフトボックス同様に開口部の面積そのものや形状そのものの光が使い物になる訳ではないが、ほぼ円形の開口と単純な構造から使える光の領域を想定しやすい。人体の全身立像や腰掛けた像を撮影するとき、長方形の開口部を持つソフトボックスを使用するより、150cmとか180cmほどの大きなアンブレラを使う方が話が早いように私は思う。光量を稼ぎたいなら(光の質は変わるが)反射面が銀色のものを使えば、2EVくらい光量増が図れる。そもそもソフトボックスと比較して光がどこへ飛ぶかわからないと言われくらいには、(程度問題ではあるけれど)影響力のある光が広範囲に及ぶのを意味する。

大型のアンブレラのみ有効なのではない。直径40〜50cm程度の小型のものは、光の拡散度がありつつソフトボックスより圧倒的に省スペース、省重量のアタッチメントだ。こうした小型のアンブレラではディフューザー付きの製品はないが、開口部100cm以上になるとディフューザーが装着された製品もある。以前はトレペを細工して開口部に貼ったものだが、使用するたび切ったり貼ったりする必要がない上に光の拡散度が高まるため私も使っている。このようなディフューザー付きのアンブレラが、構造をやや変えてソフトボックスと称して製品化されてもいる。光を一旦面に反射させ、反射面なりの大きさの光源とし、さらにディフューザーで拡散させるため光の質が柔らかく扱いやすい。この考えをさらに進めつつ、ある意味単純化させたのが透過型のトランスルーセントアンブレラの使用だ。

こうして原理を整理して考えれば、装置然としていて、装置ゆえに融通性にやや欠けるソフトボックスにこだわる必要がないのが理解されるのではないだろうか。アンブレラのメリットは、最小限のアタッチメントである点だ。より単純にするなら壁やレフなどを使って反射光かつ面光源をつくったり、大きくディフューザーを張り巡らして直射する方法がある。しかし、こうした方法は場所ごと条件が変わるし、バウンスは別としてディフューザーを張り巡らすのはおおごとになる。そこでアンブレラの活用になる。ではアンブレラが劣っているのかとなれば、あれだけソフトボックスが大流行して猫も杓子もな状況になったがどっこい生き残っている。なぜなら、必要十分かつ簡単極まりないアタッチメントだからだ。

3.用途に応じた柔軟な考え方
ライティングはいかに単純化するか、かける労力を少なくするか考えることからはじまる。しばしば「これが多灯ライティングだ!」とばかり芸当を演じるような人がいて、こうした人が先生をしている場合があるが、はっきり言えば何もライティングがわかっていないし、わかっていてこんなことを教えているなら嘘つきの詐欺師である。太陽がひとつであっても偉大な風景写真が撮影されているように、どこで撮影するか問わず基本は一灯で光をつくらなければならない。何らかの理由から一灯で光を構成できない場合に複数の光源を用いるが、単純化しなければ光の矛盾が生じるだけでなくシンクロミスなどが発生する可能性が高まり、撮影そのものに要する時間を圧迫しかねない。そして大概のケースで一灯もしくは一灯を補助または増強するライティングで事足りるのである。

まずアタッチメントの使用そのものから疑ってかかるくらいでよいように思う。道具をあれこれ使い、あれこれ動き回らないと仕事をした感じがしない人もいるだろうが、こうして仕事のふりをした結果が天井バウンスと結果が変わらないか劣るなら馬鹿馬鹿しい話だ。機材をどう使うかではなく、どのような光を用意したいか考えなくてはならない。これは人物撮影だろうがブツ撮りだろうがなんら変わるものではない。

ライティングをする際は画角に収まる空間と、ライティングのための機材が配置できる可能性のある空間をひとつのものとして「三次元」で理解しなければならないだろう。


これは撮影台を用いたケースを例にしているけれど、他の場合も同様の考えで空間を把握するのがよいだろう。被写体とカメラ、光源のそれぞれの位置を、撮影者のポジションと視点から考える方法はダメだ。もちろんこの視点は重要だが、これだけでは可能性を限りなく少なくし、さらには定型以外の方法を否定することにつながる。いわゆるソフトボックスやアンブレラを持って行き被写体の前方約○度に設置したらOKというお手軽だけど何も考えていない撮影だ。これが定石としても、思考停止していることに変わりない。

 

Fumihiro Kato.  © 2018 –

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・スタジオ助手、写真家として活動の後、広告代理店に入社。 ・2000年代初頭の休止期間を除き写真家として活動。(本名名義のほかHiro.K名義他) ・広告代理店、広告制作会社勤務を経てフリー。 ・不二家CI、サントリークォータリー企画、取材 ・Life and Beuty SUNTORY MUSEUM OF ART 【サントリー美術館の軌跡と未来】、日野自動車東京モーターショー企業広告 武田薬品工業広告 ・アウトレットモール広告、各種イベント、TV放送宣材 ・MIT Museum 収蔵品撮影 他。 ・歌劇 Takarazuka revue ・月刊IJ創刊、編集企画、取材、雑誌連載、コラム、他。 ・長編小説「厨師流浪」(日本経済新聞社)で作家デビュー。「花開富貴」「電光の男」(文藝春秋)その他。 ・小説のほか、エッセイ等を執筆・発表。 ・獅子文六研究。 ・インタビュー & ポートレイト誌「月刊 IJ」を企画し英知出版より創刊。同誌の企画、編集、取材、執筆、エッセイに携わる。 ・「静謐なり人生展」 ・写真集「HUMIDITY」他
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