光の減衰など特性と日中シンクロの効果

晴天の屋外で懐中電灯を灯しても、夜道を照らすように明るくなることはない。まさに昼行灯である。では、晴天の太陽光が照らす環境に向けてストロボを発光させて効果があるだろうか。あるとしたら、どのくらいの出力で発光したときなのだろうか。

この問いは少々雑だ。効果とは、どのようなものか。光源と対象の距離はどのくらい離れているか。これらに無頓着である。だから雑なままに答えると、効果がある場合もない場合もある、になる。「風景をライティングする話再び」と題した記事で、この問いのように雑なまま、
EV12=曇り
EV11=雨曇り
EV10=陳列棚
EV9=明るい部屋
EV8=エレベータ
EV7=体育館
EV6=廊下
EV5=休憩室
くらいならはっきり効果があるように感じるし、EV5以下の明るさではうっかりすると環境光を凌駕してバランスが崩れる(ストロボ光が支配的になる)よね、と書いた。うっかりしていたら、EV12だってストロボ光が支配的になり得るけれどギリギリいっぱいということでEV5を境界にしたにすぎない。そして日中シンクロでは5mくらいまでが効果的な距離で、環境光次第ではあるけれどせいぜい10mが限度だろうとも書いた。このあたりを正確性を期すために説明を補足する。

光源の出力を問わず、光は距離に応じ図のように減衰する。(距離)1.0m、1.4m、2.0m、2.8m、4.0m、5.6m、8.0mで、それぞれ1EVずつ減衰するのだ。どこかで見たことのある数字と思うはずで、絞り値の並びと同じで、EVの変化も同じである。「風景をライティングする話再び」で、慣れてしまえばストロボ測光可能な反射式露出計を使わなくても屋外の日中シンクロの効果がわかると書いたが、目測で距離がわかればストロボ光がどの程度の影響を与えるかほぼわかるのだ。

日中シンクロでは5mくらいまでが効果的な距離で、環境光次第ではあるがせいぜい10mが限度、としたのは大出力のクリップオンストロボ(100W未満程度)の発光が-5EVくらい減衰してもある程度の効果は期待できるが、10mを超えるとなると期待するほどの効果はなくなるということなのだ。環境光が晴れの太陽光だった場合、明部はEV14くらいある。ここに物体によって光が遮られて陰になっている場所が存在しEV12もしくはEV11程度なら、陰を完全に消してEV14にするのは不可能だったとしても0.25EV〜1EVくらい持ち上げられたら日中シンクロする意義が十分ある。この暗部にあるディティールを相当量描画できるのだ。もし暗部と光源が1m以内なら、暗部の露光をストロボが支配できるだろう。

そうだとしても問題はストロボの出力である。またストロボの出力はW数やガイドナンバーで表示されているのだが、これがわかるようでわからない。大型ストロボや一部の大光量クリップオンストロボは出力がW数で表示されている。これらは発光部に様々な拡散装置等を使用するし(あるいは使用しないし)、単体露出計で露光量を決定するのでGNで出力を示すことがない。クリップオンストロボの大多数はGNで出力を表示するが、ISO100 50mmレンズでGNxであったり、ISO100 200mmでGNxであったりして条件付けによって数値が変わるところが把握を難しくしているかもしれない。条件付けはズーム機能のあるクリップオンストロボの集光度によって光量が変わるためで、メーカーとしてはより大きなGNを記載したいのでもっとも効率が高い値を表示するのだ(ガイドナンバー(GN)=距離(m)×絞り値(F値)である)。W数をGNに換算したり、GNをW数に換算したくても不可能なのは前述のように条件を統一させられないからだ。またクリップオンストロボの出力をW数で示せないことはないが、ズーム機能によって集光度が変わる場合などは実際の照度と連携させにくいので表示する意義が薄い。だとしても、両者の関係を知りたいのが人情だろう。

強引に比較してみると、大型ストロボ350から400Wの発光(リフレクター前面に拡散度が低いディフューザー装着)とGN40クラスのクリップオンストロボ直射で実現される照度は同程度かなあ、と経験的に思う。ディフューザーなどの大型ストロボの発光部側の仕様にもよるが、クリップオンストロボの直射は案外効率がよいのだ。場合によったら500Wくらいの大型ストロボの発光と互角になるかもしれない。クリップオンストロボは筐体が小さくチューブは小型だが、発光部前面のレンズによって集光度を高めて高効率化しているのである。さらに、大型ストロボの発光部だから光の減衰が弱く、クリップオンストロボだから減衰が強く光が到達しにくいということもない。光の減衰率は前述のように、どのような光源でも同じである。クリップオンストロボであっても使い方によってはかなり明るい条件下での日中シンクロで効果を出せ、また「風景をライティングする話再び」で大型ストロボを大動員しても太陽光に伍するのは難しいとしたのもこういった経験から導いた答えなのだ。また私が静物(ブツ撮り)で大型ストロボとGODOXの大光量クリップオンストロボを混ぜて使用している理由もわかってもらえると思う。このようにして、風景や景観を含む撮影で、カメラにブラケットを固定し複数台の大光量クリップオンストロボを複数配置したり、可能ならライトスタンドなどを使う機材構成に至ったのだ。
※大型ストロボとクリップオンストロボの光量比較は厳密には不可能であり、おおよその使用感に基づくものとして読んでもらいたい。また条件が変われば、この通りではなくなるものだ。

ストロボを筆頭に人工光源は、エアブラシやスプレー塗料のように考えて扱うのがよいだろう。

完全暗黒にストロボで照度を与えるのは、白い塗料を噴射して黒いボードを塗装するようなものだ。噴射時間が同じとき、エアブラシやスプレーのノズルが近ければ噴射を受ける範囲が狭く、塗料の霧は密で白さが強く塗装される。ノズルが遠くなるほど噴射を受ける範囲が広く、塗料の霧は疎となって白さは弱く塗装される。ストロボの場合、発光出力と発光時間が同じとき、発光部に近ければ光が照射される範囲は狭く、減衰が少ないためより明るい。発光部が遠くなるほど照射される範囲は広く、減衰によってより暗くなる。

エアブラシやスプレーで白い塗料を噴射するとき、黒いボードとグレーのボードがあるなら、輝度比が大きな黒いボードのほうが明度の対比(コントラスト)が高く見える。ストロボの場合、環境光が暗い部分と明るい部分があるなら、輝度比が大きい暗い部分ほど照射された光の効果が見た目ではっきり現れる。しかし、人間が知覚できる最大輝度を超えたところに光を照射しても更に明るく見える訳ではない。また、環境光より暗い照度を与えたからといって暗さ増す訳ではない。

環境光がある空間でストロボを発光するのは、グレーのボードに塗料を噴射するようなものだ。環境光が限りなく少なくなるのと、ボードの明度が限りなく低くなるのは似ていなくもない。ただし、まったく同じではない。ストロボを発光させ写真を撮影するとき環境光の影響は、シャッター速度よって制御できる。環境光がある空間で、シャッター速度をシンクロ上限から遅くしていけばストロボによって与えられた照度は変わらないまま環境光の影響が増して行く。

日中シンクロの効果は、発光量、ストロボから対象までの距離、環境光の強さによって左右される。このうち撮影者が完全に制御できるのは発光量だけで、ある程度制御できる可能性があるのはストロボから対象までの距離、環境光の強さはまったく制御できないがシャッター速度を遅くして環境光を積算すればストロボ光との比率を変えることができる。よりシャッター速度を増してもシンクロ可能なら、ますます比率を変える可能性が高まる。

ここから環境の明るさとストロボ光の比率、効果について話を進める。適正露光量は標準反射率18%を基準して導き出される。この世界の反射率の平均が18%であるとする基準だ。明るい場所であっても暗い場所であっても、適正露光量を与えるなら概ねこの明るさとして写真は描画される。このとき環境の中(画角内)に人間が知覚できる明るさの最大値から暗黒までの輝度が散らばっていたとする。明るさの最大値にいくら照度を与えても人間は更に明るくなったと感じない。また比較的明るい箇所に照度を与えても結果は差が大きく感じられない。だいたい標準反射率より明るいあたりから暗黒までの輝度に対して、日中シンクロの効果がはっきりするように思われる。効果の幅への評価が撮影者個々の感覚に依存するとしても、以上がコントロールできるだいたいの幅としてよいかもしれない。ただし日中シンクロをTTL調光で制御するなら、環境光で標準反射率相当の輝度を持った箇所についてはシンクロ不要と判断され、より暗い箇所が標準反射率相応になるように発光がコントロールされる。したがって(発光量を補正しないなら)陰になっている部分を起こす程度の効果までが、TTL調光が対応できる範囲である。

標準反射率18%を基準した標準露光量に基づいた日中シンクロからはずれて環境光の照度を基準にしないなら、日中シンクロの効果と環境の照度の比率を変えることが可能だ。

フォーカルプレンシャッターではシンクロ速度の上限があり調整の幅が狭いとしても、一旦これを忘れて日中シンクロで環境光への露光量を自由に変えられるものとする。

環境光への露光量を増加させたとき、画角内に点在している明るさの最大値は人間には更に明るくなったとは感じられず、それ以下の輝度を持つ領域は増加させた露光量に準じて明るく描画される。日中シンクロさせたストロボ光によって照度を与えられた他の部分のうち、比較的明るい箇所に照度を与えても結果は差が大きく感じられないが、中庸な明るさ以下の箇所に「環境光への露光量の増加」と関係なく影響を与える。

環境光への露光量を減少させたとき、画角内に点在している明るさの最大値は輝度を下げ描画され、それ以下の輝度を持つ領域もまた減少させた露光量に準じて暗く描画される。しかし、明るさの最大値のうち人間が知覚できないだけのより明るい箇所は多少露光量を下げたくらいでは暗くはならないだろう。日中シンクロさせたストロボ光によって照度を与えられた他の部分の反応は、これまで説明したものと変わりない。

最後に照度以外による効果について書く。ストロボの位置は撮影者が自由に設定できる。カメラ付近からレンズの光軸が向く方向へ光を照射するのも、別の位置に発光部を設置するのも可能だ。環境光が太陽であるとき、太陽光の差し込む方向と矛盾した側から強く発光させると不自然な描画になるケースもあるが、この違和感を生かす方法もある。


この写真は日中シンクロで撮影している。ただし明るさを増す効果を狙ったのではなく、標識その他の近景を浮かびあがらせ、浮かび上がる様を特異な感じにするための太陽光と矛盾した強めの日中シンクロだ。

Fumihiro Kato.  © 2017 –

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・スタジオ助手、写真家として活動の後、広告代理店に入社。 ・2000年代初頭の休止期間を除き写真家として活動。(本名名義のほかHiro.K名義他) ・広告代理店、広告制作会社勤務を経てフリー。 ・不二家CI、サントリークォータリー企画、取材 ・Life and Beuty SUNTORY MUSEUM OF ART 【サントリー美術館の軌跡と未来】、日野自動車東京モーターショー企業広告 武田薬品工業広告 ・アウトレットモール広告、各種イベント、TV放送宣材 ・MIT Museum 収蔵品撮影 他。 ・歌劇 Takarazuka revue ・月刊IJ創刊、編集企画、取材、雑誌連載、コラム、他。 ・長編小説「厨師流浪」(日本経済新聞社)で作家デビュー。「花開富貴」「電光の男」(文藝春秋)その他。 ・小説のほか、エッセイ等を執筆・発表。 ・獅子文六研究。 ・インタビュー & ポートレイト誌「月刊 IJ」を企画し英知出版より創刊。同誌の企画、編集、取材、執筆、エッセイに携わる。 ・「静謐なり人生展」 ・写真集「HUMIDITY」他
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