Mac OSでオーディオ 2

美しいものごとが欠乏すると人間は腐食する。腐食した心は、人間が本来持ち合わせている美しさをも腐らせる。美しいものを日常に比較的簡単な方法で持ち込める音楽をおろそかにしたくない。ライブこそ音楽をあるがままに体験できる唯一の方法だけれど、録音された音楽だってバカにはできない。では、不可逆圧縮された音源はどうだろうか。MP3とかAACとか。

ちゃんとミックスされてちゃんと圧縮されたAACフォーマットの音源なら蛇蝎のように嫌うことはない、と私は思う。最近、MP3フォーマットに圧縮された音楽を聴いてないのだけれど、たしかにMP3化された音楽ははっきり劣化が気になる。具体的には、元の録音物にあった音が無くなっているし、音が消えていく隙間の部分がどうも変だ。AACにも同じ傾向があるのだが、MP3よりよっぽどよい。で、運転しながらカーオーディオで聞く場合はノイズが多い環境だし、音楽だけに気持ちを向けていられないから、こういう用途では前述のように毛嫌いするほどではない。

私は手持ちにないアルバムは、まず月々980円のApplemusicで聴く。店頭での視聴みたいなものだし、未知の音楽、曲がどこまで本気で好きなのか試す機会になっている。気になったアルバムから、ジャケ買いのような気持ちで選択するアルバムまで、文字通りジュークボックスのようにiTunesやMusic.appを使用する。これらApplemusicで聴くことができる音楽は著作権保護をされたAAC音源だ。

こうやって聴いたアルバムから本当に好きなものが選抜されて、これらはCDで買うことになる。なぜなら、圧縮されたAAC音源を蛇蝎のようには嫌わないけれど、やはりCD音質と別物だからである。こうして購入したCDは16bit 44.1kHz のWAVフォーマットだ。これを例外はあるもののiTunesでリッピングするのではなく、大概はXLDでリッピングする。このときおまじないとして24bit 96.0kHzでALACにする。WAVは無圧縮、ALACは可逆圧縮でともにデジタルデータではあるけれど、デジタル画像を別形式のファイルに書き出す(変換する)とき使用するアプリケーションによって差が出るように、XLDのアルゴリズムで変換したほうが結果がよいようだ。ただ、24bit 96.0kHz化はおまじないであり、元のWAVファイルが高音質化する保証はまったくもってない。最小の音量と最大の音量のダイナミックレンジを決めるbit深度を、変換時に上げたところで、でしょう? ノイズに埋もれていた音がノイズを押しのけたり、大音量になった瞬間に歪んだ音が復活するとは到底思えない。サンプリングレート96.0kHz化についてはもうすこし効果がある気がするけれど。

で、サンプリングレート44.1kHz のWAVファイルの音源(CD音源)を96.0kHz化すると、アップサンプリングによって元ファイルにない音をつくることになる。1秒間44,100回の速度でサンプリングしたものを、96,000回で再サンプリングして、原音が描く曲線による音の変化に近づける、という。画素補完して画像のピクセル数を増やすようなものだ。ない音を勝手につくってしまってよいものか、とは思うのだけれどわずかながら「自然な感じ」になる「気がする」。気がする、話なのでおまじないである。

いずれにしても不可逆圧縮することで音を間引いたAACファイルと比較し、音を間引かず可逆圧縮したALACでは明らかに聴こえが違う。聴感が聴き取りにくい部分を間引くアルゴリズムなのだろうが、楽器の1パートがほとんど聴こえなくなったり、余韻が雑な感じになったり、これらが総合して音圧が貧弱になったり、である。聴き比べると、まったく別の音楽のように聴こえる。美しさという点でも劣るのだ。でも、カーオーディオで聴くなら、なのだ。

iTunesは16bit 44.1kHzを超える音源を聴くことはできても、他のiOS機器に転送できない。iOS機器は16bit 44.1kHzを超える音源を聴けない。これはこれでひとつの定見であり、そういうものだと納得すべきところだろう。したがって、おまじない気分で24bit 96.0kHzでリッピングしたALACファイルをiOS機器で聴くため、私はONKYOのHF Player for iOSを使用している。iTunesからの自動転送ではなく、ドラッグ&ドロップでファイルをコピーだ。副産物的な効果だけれど、iTunesはiCloudと連携してリッピングした楽曲をクラウドに転送保存し、挙動が不明なのだけれどダウンロードしようとするのだが、16bit 44.1kHzを超える音源はこれが抑止される。つまり、iCloudにアップされ、ダウンロード時に否応無くAACに不可逆圧縮されたものにすり替えられることがなくなるのだ。iTunesの環境設定で「自動的にダウンロード → ミュージック」からチェックマークを外していても、ダウンロードしようとしているのだよなあ。

いずれにしても音の世界は、画像と違い体感の精度がやたら低い。だからオカルトが横行する。おまじない、もその分野だけれど。でも、なるべく美しい音楽を聴きたくて試行錯誤するのだ。

Fumihiro Kato.  © 2016 –

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Profile

F.Hiro.K
加藤(文)文宏 / Fumihiro Bun Kato a.k.a Hiro.K
写真家・作家 / Photographer Author
・北海道北見市生まれ。
・大学卒業時までに詩集「無題あるいはサラバ」、同「Cadenza」発表(共に絶版、在庫なし。「Cafebza」別装丁私家版のみあり)。
・スタジオ助手、写真家として活動の後、広告代理店に入社。
・2000年代初頭の休止期間を除き写真家として活動。(本名名義のほかHiro.K名義他)
・広告代理店、広告制作会社勤務を経てフリー。
・不二家CI、サントリークォータリー企画・取材、Life and Beuty SUNTORY MUSEUM OF ART 【サントリー美術館の軌跡と未来】、日野自動車東京モーターショー企業広告、武田薬品工業広告、他。アウトレットモール広告、各種イベント、TV放送宣材、MIT Museum 収蔵品撮影 他。
月刊IJ創刊、編集企画、取材、雑誌連載、コラム、他。
・長編小説「厨師流浪」で作家デビュー。「花開富貴」「電光の男」他、小説のほか、エッセイ等を執筆・発表。
・獅子文六研究。
・インタビュー & ポートレイト誌「月刊 IJ」を企画し英知出版より創刊。同誌の企画、編集、取材、執筆、エッセイに携わる。
・各メディアにおけるスチル撮影。
・オリジナルプリントの製作、販売。
・JSAHP正会員
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