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フィルムからデジタル画像をつくったことがある人なら、総ピクセル数が同じで、似た構成(構図、輝度分布など)のデジタル撮影された画像よりスキャン後の画像のほうが容量が大きい点に気づいているだろう。これは、フィルムの銀塩粒子が不規則に分布しているためだ。諸々の画像形式の中でもJPEGで顕著である。JPEGは、圧縮前の画像から8ピクセル四方をサンプリングした上で、似た輝度と彩度があれば同一の値にしてファイルサイズを減らす。不規則に銀塩粒子(カラーであれば色素)が分布していれば、似た輝度・彩度としてまとめられる区画が減る。
このように大きさ様々、並びもまちまちの粒子感がフィルムならではの描写の鍵だ。しかし、ときとしてファイルサイズが大きいことで不都合が生じたり、アウトプットする媒体の物理的なサイズによっては粒子がかたちづくるノイズが過剰すぎるケースがある。前者はフィルムから紙焼きの段階では問題にならなかったし、後者は拡大するほど鮮鋭度が極端に落ちることから見過ごされてきたが、デジタル化された画像の使い道を考えると看過できないときがある。
銀塩または色素粒子のノイズがファイルサイズを増大させ困ったり、ザラザラ感が鼻につく場合はRAW現像ソフトに持ち込み「ノイズ軽減」処理をかければよいだろう。RAW現像ソフトでなくても、PhotoshopのRAW現像ツールを使用しても可能だ。ただし、どちらのツールを使用しても、塗り絵調、あるいは汚れたマダラ調になりかねないことに注意したい。ノイズ軽減処理は、元画像がアナログだろうとデジタルだろうと、不規則な輝度・彩度分布を平均化しザラザラ感を軽減している。不規則な輝度・彩度分布はノイズであると同時に、ディティールを形成する要素でもあり、これを平均化すれば質感が失われたり不自然になるのを自明の道理だ。
したがって、ノイズ軽減処理をする場合は画像中の何箇所かを拡大して点検しつつ適応量を加減しなくてはならない。また、アウトプットする(使用する際)の物理サイズを考えながら調整する。たとえばネットに画像を掲載するなら、最大でも長辺2000ピクセルくらいの画像に収まるだろうから、かなり強めにノイズ軽減処理をしてファイルサイズを小さくしても鑑賞者に違和感を与えないだろう。しかしA3以上にプリントする場合は、ネット用画像のように強めにノイズ軽減処理をかけるとフィルムの持ち味が台無しになるばかりか、塗り絵調あるいは汚れたマダラ調が目立つ。もし様々な用途にスキャン画像を使用する可能性があるなら、元画像に処理後のデータを上書きするのではなく、新規書き出しで用途ごとアウトプットするのがよいだろう。
スキャン時の画像は後の処理を想定して可逆圧縮可能な形式で保存すべきで、DNGまたはTIFF形式が妥当だろう。
Fumihiro Kato. © 2016 –
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