ギャラの請求の話2

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前回は、自分の料金表をつくる、なんだかんだあるけど相手が口にする金額を額面通り受け取ってはならない、といったことを書いた。対策として、料金表より高い金額を相手に示す、これが結論であった。だったら料金表は意味がないのでは、と感じられるかもしれない。いやいや自分基準の料金表がなかったら、こういったやりとりを冷静に進められない。

で、冷静に話を進めて合意にいたっても安泰ではない。以前にもまったく別の意図で書いたけれど、出版社の倒産によってギャラ、ポジ、原稿を失った。原稿はデータが手元にあるけれど、ギャラとポジを失ったのは痛い。債権者集会やら弁護士による説明会などあったけれど、百万円単位の債権者など末席も末席であり千万、億単位の債権者が優先され、何も戻ってこなかった。

倒産に至る直前、ギャラが未払いになっていて「ちゃんと処理して」と言った矢先にこれだ。仕事の規模が大きくなるほど支払い条件が厳しくなるのが常で、フリーランスの人では○ヶ月の手形でというケースはないだろうけれど、振り込みが納品日からかなり先になったりは在り得る。納品日、締め日、支払い日についてはちゃんとちゃんと確認して、一般的な条件と比べておかしな点があったら口に出して、さらにメールとして残して要望を述べるべきだろう。

会社相手の仕事でギャラが振り込まれるのは、着手日からではなく締め日を起点とした月末だ。仮に7月1日から3日にかけて仕事をしたとする。納品は7月4日だった。相手先の締め日は、7月20日。締め日直後に支払われるならよいが、翌月末に支払いという場合がある。と、なると7月1日から3日にかけて行った仕事のギャラは8月末に支払われる。なんやかやと長期間拘束される仕事では、着手した日より思いの外に先の振り込みになる。締め日をまたいで請求だったときなど、特にである。

で、だ。7月1日から3日にかけて仕事をして納品は7月4日で相手先の締め日が7月20日だったとする。支払いは締め日直後という条件だったので、7月の末に通帳を記帳しに銀行に出かけたがギャラが振り込まれていなかったらどうなるである。カレンダーの曜日の並びによっては、8月になって相手先に確認の電話を入れることになる。このとき経理部門に直接電話を掛けてもラチがあかないというか、仕事を直接担当した人でなければ詳細がわからない。また経理に直接こちらから問い合わせというのはご法度であったりする。担当者がいつ請求書を経理に上げたか等々の問題があるから、いっしょに仕事をした人をつかまえなくてはならない。いざ担当者に電話を入れたら、早々と8月の夏季休暇に入りましたなんてこともある。こうなると、いろいろ後手後手になる。

担当者が経理に請求書を上げ忘れていたというミスはありがち。場合によっては、私のように気がついて対応しはじめたら「倒産」なんてこともある。

会社が危ないことを察知できればよいが、だいたいが察知できないか、察知できてもそもそも相手先の資金繰りが狂っているので即支払いをしてもらえないかだ。ギャラについて自分の料金表をつくる際は、単に自身の日当と手間賃と材料費だけでなく、不測の事態に至ってお金が振り込まれなかった場合の保険を加味しなくてはならない。また前回書いた相手との料金交渉で、お金に対してすっきりしない態度の相手には、相応の+αを乗せておくべきだろう。

いろいろ変な取り引きを経験してきたけれど、なかには担当者が制作費を管理しきれず「請求書は制作費○○万円、あとの残りは○○費の名目で別途請求して」「一回の請求で落としきれないので、今月と来月の2回に分けて」なんてこともあった。こうなると後の祭りで、もちろんそんなことできないのですっきり制作費で請求させろ、一回の請求で約束の日に満額でと言っても、会社の都合というか担当者の都合で無い袖は振れない事態に陥りがちだ。こんなことになったら二度と付き合わないのがベスト。いずれもっと甚大な何らかの金銭トラブルを抱えることになるだろう。論外なのは、「請求書は制作費○○万円、あとの残りはキャバクラに連れていってあげる」的な話だ。キャバクラなんて行きたくもないし、キャバクラでなかったとしても制作費がおかしなことになっている証拠で危険極まりない。

極端な例を挙げたけれど、制作費を管理できない、あるいは正しいお金の管理から逸脱している会社や担当者は前述のようにいつかやらかすのである。最近は税務関係が広告業界の内情に詳しくなったのでひどい事例は減ったが、大昔は制作費をふところに入れてマンションを買った担当者などという話がごろごろしていた。ちゃんとお金を管理していれば、請求書を分けるなんてことにはならないのである。また「悪いけど、空の請求書をちょうだい?」とかなんとかの悪巧みに加担する必要などまったくない。「君はお金に汚いね」なんて言われても、もっと汚いのが当人であるから気にしなくてよいだろう。お金がないのに、モノ、人手はほしい。こういった連中のほうが、よっぽどお金に汚く下衆なのだという態度で対応しても罰なんか当たらないのである。

Fumihiro Kato.  © 2016 –

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・スタジオ助手、写真家として活動の後、広告代理店に入社。 ・2000年代初頭の休止期間を除き写真家として活動。(本名名義のほかHiro.K名義他) ・広告代理店、広告制作会社勤務を経てフリー。 ・不二家CI、サントリークォータリー企画、取材 ・Life and Beuty SUNTORY MUSEUM OF ART 【サントリー美術館の軌跡と未来】、日野自動車東京モーターショー企業広告 武田薬品工業広告 ・アウトレットモール広告、各種イベント、TV放送宣材 ・MIT Museum 収蔵品撮影 他。 ・歌劇 Takarazuka revue ・月刊IJ創刊、編集企画、取材、雑誌連載、コラム、他。 ・長編小説「厨師流浪」(日本経済新聞社)で作家デビュー。「花開富貴」「電光の男」(文藝春秋)その他。 ・小説のほか、エッセイ等を執筆・発表。 ・獅子文六研究。 ・インタビュー & ポートレイト誌「月刊 IJ」を企画し英知出版より創刊。同誌の企画、編集、取材、執筆、エッセイに携わる。 ・「静謐なり人生展」 ・写真集「HUMIDITY」他
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