肉体とカメラの同期

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ウエストレベルファインダーで垂直水平を出す」と題して、まさにタイトル通りにコツらしきアレコレを書いた。で、ふと思った。肉体とカメラが同期できるか否かが、けっこう写真にとって重要な意味を持っているのではないだろうか。

私はライカMを使用していたことがあり、システムがコンパクトに収まるのはルポに好適なのだが、ファインダーのアバウトさがなんだなーだった。また被写体に0.7mより近づきたいときはビゾフレックスを使うしかないだろという点が、どうも肉体の感覚と同期しがたい部分だった。でも別の人にとってはライカこそ思い通りの写真を撮るため不可欠な存在になっている。

さて「ウエストレベルファインダーで垂直水平を出す」方法は作法で解決できる「肉体との同期」だけれど、ライカの場合は作法云々では済まない整理感覚にまつわるものだ。構図についてのアバウトさはそのままで、一眼レフなみに寄れるレンジファインダーライカが存在したら、私はもっとライカを好きになれただろう。とはいえ、主要な機構が機械式である安心感と前述のコンパクトさはありがたいものだといまだに思ってはいる。

こういう出会いと別離の理由は、一眼レフかレンジファインダーかの違いだけでなくカメラごとの様々な特徴によって生じるはずだ。そういう意味では、一眼レフで写真をはじめ、中判は蛇腹を伸ばせば伸ばしただけ被写体に寄れるマミヤの各機を使ってきたことが、「私にとっての写真」を決定したように思う。それと手の大きさだ。

私の手のサイズなんか誰も知りたくないだろうが、とにかく分厚くて大きい。欧米サイズのXLの手袋さえ窮屈で、ときとして手がはいらないくらい大きい。なので6×7判の各社一眼レフがふんわり両手に収まる。ま、重いのは耐えられないけれど。こうなるとチマチマした操作系より、グワシとノブとノブが並んだ中判くらいが気持ちよい。しかも手持ちが(若いときは)苦にならなかった。さらにブローニーフィルムは120であってもカット数になんら不足を感じない。これもまた「私にとっての写真」を決定したように思う。

たとえば左手が利き手の人、左目が利き目の人、手が小さな人は私とまったく別の感覚でカメラを通して世界を見て、私と違う写真観を持っているような気がする。こういった肉体とカメラの同期具合は、その人の写真そのものを他の人と違うものにしているかもしれない。

しばしば最初に買ったカメラのメーカーに対して、まるで信徒であるかのように頑なになる人がいる。これで機材と生理感覚とが一致しているならよいけれど、幸福と言い難い出会いであったら時間がもったいないと思う。私にとって中判フォーマットは迷いがなかったが、ライカ判はミノルタに始まりキヤノン、ほんのすこし同時進行でオリンパス、ライカと、ニコンに至るまで落ち着くところなく転々とした。それぞれのメーカーはそれぞれによいところがある。しかし、ニコンのカチっとしたナニカでなければ肉体がシンクロできなかったのだ。結果的にロートル*とも言える年齢に至りニコンと出会えたから、彷徨い歩いたのは無駄ではなかった。ただし彷徨ったからニコンに出会えたとも言える。

ロートル:蛇足だろうが、ロートルは老頭児で老人の意。ここでは年齢だけでなく、隠語としての「役立たず、時代遅れ」の意味も含めて。

ミノルタが悪かった、キヤノンが悪かった、オリンパスが悪かった、ライカが悪かったとは言いたくない。ニコンでなかったから写真が失敗したとは口が裂けても言わない。いやー、過去の写真をネガで振り返るとけっこうよいのがあるからね。ただはっきりしているのは、私はフィルム中判に育ててもらい、写真の定義そのものが中判から大判寄りにあるということだ。すくなくとも根っからのライカ判の人間ではないなと感じる。スピグラ一式が目の前にあったら一眼レフではないがすんなり肉体と同期しそうで怖いので、中古店ではプレスカメラに近づかないようにしている。シートフィルム1カット、1シャッターでも構わない体質で、いつまでも被写体の前で決めかねているのが苦手なのだ。

Fumihiro Kato.  © 2016 –

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・スタジオ助手、写真家として活動の後、広告代理店に入社。 ・2000年代初頭の休止期間を除き写真家として活動。(本名名義のほかHiro.K名義他) ・広告代理店、広告制作会社勤務を経てフリー。 ・不二家CI、サントリークォータリー企画、取材 ・Life and Beuty SUNTORY MUSEUM OF ART 【サントリー美術館の軌跡と未来】、日野自動車東京モーターショー企業広告 武田薬品工業広告 ・アウトレットモール広告、各種イベント、TV放送宣材 ・MIT Museum 収蔵品撮影 他。 ・歌劇 Takarazuka revue ・月刊IJ創刊、編集企画、取材、雑誌連載、コラム、他。 ・長編小説「厨師流浪」(日本経済新聞社)で作家デビュー。「花開富貴」「電光の男」(文藝春秋)その他。 ・小説のほか、エッセイ等を執筆・発表。 ・獅子文六研究。 ・インタビュー & ポートレイト誌「月刊 IJ」を企画し英知出版より創刊。同誌の企画、編集、取材、執筆、エッセイに携わる。 ・「静謐なり人生展」 ・写真集「HUMIDITY」他
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