ある街に感じた違和感とこの先と

日記です。つらい話を避けたいかたは読まないほうがよいと思います。なんとか結論を希望へ向けたいのだけど。

みんな耐えているな、がんばっているなと思う日々だ。

過日ゆえあって首都圏の郊外というか綺麗に整備されたベッドタウンへ出かけた。どのあたりの、どの街かは具体的にしたくないので仮にAと呼ぶことにする。

雨が降る中をAの街の顔と言えそうな駅とバスターミナル周辺で時間をつぶしていたのだけど、開発から二十年以上経過しているとは思えないくらい整然としているのはよいとして雰囲気がどことなく尋常でない気がしたのだった。

マクドナルドには客が入っているし、ドラッグストアには数量限定ではないマスクがたくさんぶらさがっているから今年の3月より前の風景に近い。長雨のせいで気温が低いこともあって、まさに2月とか3月初旬を体感しているみたいだった。だけどビル1階のガラス張りのテナントが退去済みになっていたり、閉業した店があったりする。だから雰囲気によからぬものを感じるかというと、これだけではなかった。

Aには以前にも立ち寄ったことがあり、某スーパーマーケットの生鮮食品の品揃えのよさが気に入っていた。特に鮮魚に見るものがあった。こうした特徴はそうそう変わるものではないだろうにあまりにつまらない魚屋になっていた。

Aは海沿いの街ではないが、このスーパーマーケットの鮮魚売り場では磯の魚が何種類か丸っとパック詰めされていたりするよさがあった。魚屋は売れなくても見せるための魚を陳列することがあるとしても、いつも数パック並んでいたから買う人がいて仕入れていたものだろう。買う人に余裕があり、仕入れる店にも余裕があったことになるが、こういった余裕を感じさせる売り物がまったくなかった。

COVID-19の患者数が急増して外出自粛が叫ばれ緊急事態宣言が出たあたりで、飲食店が仕入れていた高級だったり上質な鮮魚や冷凍魚が行き場を失いスーパーマーケットの鮮魚部に格安で並んだ。この時期のAの店がどうだったかは知らないけれど、現在の落差はいったいなんだと驚くくらい品揃えの傾向が変わっていた。

人々の買い物への意欲がひどく落ち込んでいるのを感じた。天気が悪い日だったから停滞感があったのかもしれないし、単なる気のせいかもしれないが私はそう思わずにいられなかった。

Aで閉業していたのはカラオケ店や飲食店などで、やはりCOVID-19の影響だろう。先日の日記に旅行業界と周辺の産業がもう耐えきれないところまできたと書いたが、業種はやや違うとはいえ事情はまったく同じだ。緊急事態宣言で飲食店が営業できなくなって魚の流通が狂ったように、ホテルや旅館、カラオケ店が困窮しているだけでなく取り引きがある業界が苦境に立たされているのをここで忘れてはならない。

不要不急の商売がどうこう言っている段階は既に終わり、負の連鎖は他の業種に拡大している。「夜の街」がクラスターの温床とか糾弾されているけれど、水商売だけが孤立した世界で商売しているのではなく店には大家がいるし、飲食物を卸している業界があるし、リネン類や清掃の業界とも関係している。いやいやもっと多岐にわたって関係しているだろう。

連鎖と言えば、人々の移動が制限されたり自粛せざるを得なくなっただけでなく物流の量が減ったことでガソリンスタンドが苦境に立たされている。ANAが来年度は新規採用しない方針を明らかにしたのも原因は同じだ。この社会は隅々まで連鎖のうえバランスをとりつつ成り立っていた訳で、COVID-19はあらゆるものをなぎ倒してしまったと言える。

写真の世界について考えれば世界的規模でどんなカメラも用品も売れなくなるし、進行中の新規開発や研究にブレーキがかかる。さらに写真撮影の仕事も世の中の連鎖と無縁ではない。

世の中を知らない幼い考えの人たちは「そんな業界は潰れてしまえ」とか「時代遅れになったのだから、別の業種に転職しろ」と軽々と言い放つ。造船不況や鉄鋼不況などで明らかだったように、業種や業界がひとつつぶれると都市そのものが死ぬのだから転職どころの話ではない。しかも今回は地方都市ひとつどころの話ではなく全国でほぼ同時にドミノ倒しがはじまる。

「トヨタ流国内需要喚起策、新車価格10万円値下げ」と報じられている。自動車が売れないから値を下げれば、トヨタだけでなくディーラーも影響を被らない訳がなく、値下げ分はこれらの従業員の給与に影響し部品業界にも圧力として働く。きっと他の自動車メーカーも追随する。さらなる救いようがないデフレへ地獄の釜の蓋が開いたのである。

Aで暮らす人々は首都圏のベッドタウンしかも多様な業種の人々だから肌感覚で察知しているし、こうした街の店舗事情は状況を敏感に反映する。

どうしたらよいのかわからないことが多すぎるし状況は予測不可能だけど、はっきりしているのは国がふんだんに財政出動すればよいという事実だ。孫子へ借金を残すとか、財政が赤字とかの経済の仕組みからして嘘とわかる話をいつまでも垂れ流すばかりの人々はご退場願いたいところだ。

© Fumihiro Kato.
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・スタジオ助手、写真家として活動の後、広告代理店に入社。 ・2000年代初頭の休止期間を除き写真家として活動。(本名名義のほかHiro.K名義他) ・広告代理店、広告制作会社勤務を経てフリー。 ・不二家CI、サントリークォータリー企画、取材 ・Life and Beuty SUNTORY MUSEUM OF ART 【サントリー美術館の軌跡と未来】、日野自動車東京モーターショー企業広告 武田薬品工業広告 ・アウトレットモール広告、各種イベント、TV放送宣材 ・MIT Museum 収蔵品撮影 他。 ・歌劇 Takarazuka revue ・月刊IJ創刊、編集企画、取材、雑誌連載、コラム、他。 ・長編小説「厨師流浪」(日本経済新聞社)で作家デビュー。「花開富貴」「電光の男」(文藝春秋)その他。 ・小説のほか、エッセイ等を執筆・発表。 ・獅子文六研究。 ・インタビュー & ポートレイト誌「月刊 IJ」を企画し英知出版より創刊。同誌の企画、編集、取材、執筆、エッセイに携わる。 ・「静謐なる人生展」 ・写真集「HUMIDITY」他
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