照度ムラなどライティングの気になるトラブル

自然光撮影ではなくライティングをして撮影する場合、わざわざ照明するのだから「意図」があるはずで、意図を忠実に反映できないときイライラが募るし、撮影結果も狙いからはずれて不本意なものになる。

たとえばーー。

背景を均一な照度でライティングして、均一な明るさとして表現したかったとする。しかし同心円状や特定方向へグラデーションがかかる照度ムラが生じることがある。

こんな単純なトラブルなら解決は簡単と言えればよいが、こんな簡単なことが照明の位置や出力を調整してもなかなか思い通りならず作業が泥沼化してはいないだろうか。

では、何がどうなって泥沼化しがちなのか、どうやって問題を回避したらよいか考えて行こう。

狙いは均一な明るさの背景なのだが、以下のようにムラが生じたのでライティングを修正しなければならないとする。(グラデーションを描いたりはっきりした明暗をつけようとしている場合も以下の説明が当てはまる。ただし、ここでは話を単純化させるためムラを解決する例を挙げる)


なお被写体を人物として模式図で図示するが、静物を撮影する際にも問題点と解決策はまったく同じである。

背景の明るさを均一にしたい狙いがあるなら、被写体を照らす光源からの光を使って成り行きで背景をライティングせず、背景は背景用の別の光源を使っているのではないか。

背景左右にそれぞれ光源を置いているかもしれないし、スペースの関係からある一方向から照明しているかもしれない。

と、すると背景用の照明機材を調整して問題の解決に取り掛かるはずだ。

暗いなら出力を上げ、明るすぎるなら出力を下げる。もしくは背景と照明機材との距離、位置を変える。複数の照明機材を使っているなら、それぞれのバランスを整える。

だが、いっこうに解決しない。

ライティングは出力の増減と距離によって照度の違いの基本がつくられ、そのほかに拡散、透過、反射で照度とともに光の質が変わる。これらを理屈通りに変えて修正できないとしたら、別の何かが間違っていると頭を切り替えよう。

思い通りにならず作業が泥沼化する原因はひとつではないが、うっかり見落とされがちなのが[画角とアングル]と[背景と被写体の関係]だ。

まずレンズの画角は円錐形の広がりを持っていて、写真に写り込むのは円錐内を2:3や3:4などのアスペクト比を持つ四角形で切り取った範囲だ。

そして被写体の高さと幅方向に対する余白(背景)は、ファインダー像やテザー撮影でディスプレイに表示された像など二次元に落とし込まれた像に対しての背景の広さ感より、実際にはかなり広い範囲である。

また上下、左右へのアングルの違いでとうぜん写り込む範囲が変わるのだが、撮影者には大した違いがないように感じられる場合があるし、前述の画角の実情とともに背景と被写体の関係を[三次元的]に理解する習慣がない撮影者や理解していない撮影者さえいる。

さらに背景と被写体間の距離の違いによっても写り込む背景の範囲は変わる。

これは壁際ぴったりに立った人物を撮影したときと、壁から離れた人物を撮影したときを想像すれば理解できるだろう。

被写体を画角内に同じ大きさで収めるなら、壁際ぴったりに立つ人の背景範囲はファインダーを見たままの余白部分であり、壁から離れて立つ人は離れれば離れるほど写り込む背景の範囲が広がる。

いま撮影しようとしている背景は、いったいどこからどこまで、ムラが生じている範囲はどこか把握できていないなら、むやみやたらにライティングを修正していることになる。写り込む背景の範囲とムラが生じている箇所を見誤っているのだから作業が泥沼化するのは当然だ。

前記断り書きの通り、ムラが発生したときだけでなく思い通りのグラデーションや明暗比を描けない場合も同様に問題を整理しなければならない。グラデーションやはっきりした明暗をつけようとしているなら、[画角とアングル]と[背景と被写体の関係]によってそれぞれが開始される背景内の位置、終了する位置が変わる。

つまり均一な明るさをつくる場合と、光の演出でグラデーションや明暗をつくる場合を問わず、被写体と背景の関係を正確に把握しておかなければならない。

ライティングを設計して照明機材を配置する。露出計で適正な照度になっているか計測する。いずれも背景、被写体、カメラの位置、アングルといった関係をはっきり意識したうえで作業しよう。

ムラ、思い通りにならないグラデーションなどの問題だけでなく、必要以上に広く背景を想定してしまい撮影に必要なあらゆる要素が大型化するなんて馬鹿らしい。ライティング機材の数を正確に割り出せず大荷物になるのも、現場で足りないことに気づくのもどちらも困った話である。

背景のムラやグラデーション、明暗比が思い通りにならない、理屈通りにならない原因には、被写体用や演出用の照明機材の光が悪影響を及ぼしている場合もある。

また背景や演出用の照明機材の光が被写体に悪影響を及ぼしている場合もある。

[画角とアングル]と[背景と被写体の関係]の検討だけでは悪さをしているものの原因を発見し修正できないケースがあるのは注意したい。理屈通りの操作で思い通りにならないときは冷静に問題の切り分けをしよう。

写真がデジタル化された現代なら、背景、被写体、その他と特定の照明機材だけ発光させてテスト撮影をして行っても大して苦にならないだろうから試してみる価値はある。

[画角とアングル]と[背景と被写体の関係]の検討に、なんだったらズームレンズで画角を変えてテストしてみる手もある。

© Fumihiro Kato.
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・スタジオ助手、写真家として活動の後、広告代理店に入社。 ・2000年代初頭の休止期間を除き写真家として活動。(本名名義のほかHiro.K名義他) ・広告代理店、広告制作会社勤務を経てフリー。 ・不二家CI、サントリークォータリー企画、取材 ・Life and Beuty SUNTORY MUSEUM OF ART 【サントリー美術館の軌跡と未来】、日野自動車東京モーターショー企業広告 武田薬品工業広告 ・アウトレットモール広告、各種イベント、TV放送宣材 ・MIT Museum 収蔵品撮影 他。 ・歌劇 Takarazuka revue ・月刊IJ創刊、編集企画、取材、雑誌連載、コラム、他。 ・長編小説「厨師流浪」(日本経済新聞社)で作家デビュー。「花開富貴」「電光の男」(文藝春秋)その他。 ・小説のほか、エッセイ等を執筆・発表。 ・獅子文六研究。 ・インタビュー & ポートレイト誌「月刊 IJ」を企画し英知出版より創刊。同誌の企画、編集、取材、執筆、エッセイに携わる。 ・「静謐なる人生展」 ・写真集「HUMIDITY」他
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