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30年前の話になるけれど、私が撮影アシスタントをしたり写真の仕事をいただいたりしつつ広告代理店にもぐりこんだ20代はじめの頃、モノブロックだけでなくジェネ式大型ストロボで多くの人がPROPET製品を使用していたものだ。ところが、気がつくといつの間にか国産大型ストロボメーカーのなかでも地味な部類になり、ここしばらく製品の更新が足踏み状態になっていた。
このためPROPETには申し訳ないが、AC電源でもリチウムイオンバッテリーでも駆動できるMONO300Bの開発が発表され実機が公開されても話がぽしゃるのではなかろうかと心配した。こうした心配は杞憂だったようで、カタログが公開されたり体験会が催されたりと発売に向けて順調にコトが進んでいる。
MONO300BはPROPETにとって10年ぶりの新製品なのだそうだ。大型ストロボはそうそう新機軸の製品が登場するジャンルではないのでカメラやレンズの製品サイクルと同一視できないのだが、この10年は電源のDC化=リチウムイオンバッテリー化を進めた会社が覇権を取る構図となり「どうして国産メーカーは積極的に製品開発しないのだろう」と思う人が増えたように思う。もちろん国産メーカーにもバッテリー式の大型ストロボはあるのだが、いまひとつピンとこないというかProfotoやGodoxがあまりに目立つ状態だ。
PROPETのモノブロックを使用している私は前述のように同社の元気のなさにがっくりきていたので欲目もあってMONO300Bに期待しているのかもしれないけれど、MONO300Bはなかなかよさそうに感じる。
私がよいと感じるのは、
まずは
1.リチウムイオンバッテリーがMaxell製の汎用品である点
2.従来のモノブロック同様の余計な構造のない発光部
3.出力300W
の3点だ。
バッテリーパックBPL1420はMaxellでも同じ型番でラインナップされているリチウムイオンバッテリーパックで、電動工具等の用途に向けて出力・容量違いがシリーズ製品として揃っている。BPL1420はもっとも小型で、BPL-1440、BPL-2520A、BPL-2540Aと同一規格のまま大型化して行く。ちなみに電池パック:国内製造、充電器:中国製造だ。
リチウムイオンバッテリーを使う製品にまつわる煩わしさに、専用品ゆえに割高な価格設定になっていたり専用品が廃盤になったときの対応がある。Maxell製汎用バッテリーもいつか廃盤になる日があるだろうが、汎用品ゆえにコロコロと規格が変わったりしない。となれば入手性がよいはずだ。
次に発光部。従来のモノブロックまたは大型ストロボの発光部となんら変わらないMONO300Bの発光部は、Ω型のチューブ、LEDモデリングランプ、リフレクターで構成されている。そっけないと言えばそれまでだが、このなんでもない発光部だからいろいろ工夫できるのであってむしろ余計な構造やアクセサリーは不要だ。
リフレクター等のアクセサリーマウントはPROPET用で、プロペットSマウントはコメットCXと共通している。またこのマウントからボーエンズに変換するアダプターも社外品が発売されていて、純正以外のリフレクターや様々なアクセサリーを装着可能だ。
そして出力300W。写真がデジタル化されたことで比較的高ISO感度で撮影しても画質が極端に悪化しなくなり、照明機材の出力がフィルムを使用する場合より小さくてもよいようになった。とはいえ、できるだけ低い感度で撮影したいし、ライティングの自由度を確保するためにも余裕のある出力がほしい。こうなったとき現実的な解として300Wは頃合いがよいように感じる。
以上3点が揃ったうえで、
1.AC駆動が可能
2.Full〜1/128と広い調光範囲(および色温度変化が少ないCOLORモード)
3.筐体一体のハンドルとともにパン棒がある
以上3点が使い勝手をよくしている。
ACまたはDCどちらか専用機を使っていて、ふとした場面または切羽詰まった場面でAC/DC両用ならよかったのにと思うことがある。ところが塩梅よく両用できる機種は知る限りない(可能でもあれこれ気になる点がある)。MONO300BではAC使用時のアダプターPAD160が、AC専用モノブロックの電源コードが本体から直接伸びるのと違い邪魔になる可能性もあるけれど、これくらいは受け入れられる範囲だろうと感じる。AC使用が充電を兼ねないのもむしろよい。
調光範囲が広い点をデメリットに感じる人はいないだろうが、PROPETのことなのでカタログ通りの値で調光できるだろうし、なにより色温度の変化を最小にするモードを選択できるのがよい。これはあたりまえの話をしているのだが、最近の製品はよくなっているとはいえリチウムイオンバッテリーを採用するGodoxは条件次第で色温度がばらつくので割り切って付き合う必要がある。
そしてパン棒。モノブロックストロボの筐体に一体型のハンドルは最近の製品デザインのトレンドなので珍しくないが、パン棒があるのとないのでは使いやすさが歴然と違う。
あとは実売価格がどの程度で落ち着くか、だ。
というのもGodoxによる価格破壊で、Godox品質とGodox価格のバランスではなく、ストロボは光れば同じという理屈でGodox価格が正義とされる風潮がある。MONO300Bは本体のみ¥148,000、ワイヤレスリモートコントローラーRFR-1は¥34,000という価格設定で、Godox価格に慣れた人たちにはProfoto並みに高いと思われるだろう。そういう人はターゲットではないのかもしれないが、大型ストロボ市場の裾野を広げたのはGodox価格を正義とするユーザーたちだ。
1.リチウムイオンバッテリーがMaxell製の汎用品である点
2.従来のモノブロック同様の余計な構造のない発光部
3.出力300W
この辺りの素っ気なさ、美点、あたりまえすぎるくらいのあたりまえが「これでいいんだよ」とわかってもらえるだろうかと考えてしまうのは、「PROPETのストロボを手に入れられたなら、やりたいことをやりたいままに撮影できるはず」と憧れた世代だからかもしれない。
とはいえ、うまくまとめた何かとちょうどよい製品と思うのだがいかがだろうか。
© Fumihiro Kato.
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