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写真を撮影するには、撮影以前に道具にお金がかかる。できるだけ無駄が出ないように買い物をしたいけれど、買い物の20%くらいは直近では無駄になると覚悟してもよいように思う。使えると思った機材が、思いのほか用途に向いていなかったなど日常茶飯事だ。でも面白いことに期待して買った割に使えなかった道具が、半年または数年経過したときダークホース的に用途にぴったりはまることがある。
お金を出し渋って、皆さんがなかなか買わないものとしてライティング用品がある。いやいや結構売れている分野であるけれど、カメラやレンズなど所有感や優越感を得られるものではないので地味な分野だろう。でも撮影範囲を広げるうえで、避けて通れないのがライティングだ。
実験精神旺盛な人や、デザイン関係やヘアサロンで撮影もしたい人にとってライティングは必須項目になる。
でも覚悟しなければならないのは、所有感や優越感に浸れない用品を揃えるのに数万円から十数万円必要な点だ。だからこそ、お得な買い方をしたほうがよい。
ストロボや定常光の装置など発光部はお好みのものがあるだろうから、周辺の用品から説明したいと思う。まずライトスタンドだ。
最重要なもの
用品を買えばプロなみの撮影やプロに近い撮影ができると思うのは大間違いだ。ライティングは工夫と工作。用品を改造しないまでも使いやすく工作したり、ライティングを組み立てる際は知恵をフル動員しなければならない。以下に紹介する最低限の用品も工夫次第で効果がだいぶ変わってくる。
ライトスタンドと周辺用品
台数
スタンドは発光部の数より多く揃えないと自由度が狭くてにっちもさっちもいかなくなる。なぜなら発光部を取り付けるだけでなく、レフを立てたりディフューザーを垂らしたり張ったりするのにも使うからだ。発光部1に対して、もう1脚あるのがスタート地点だ。発光部が2台なら、4脚手元に揃えておくことになる。多ければ多いほどよい。
でも最初から何脚も買うのは無理かもしれない。それなら、発光部2台でスタンドは計3脚からはじめよう。常にもう1脚が控えている状態にする。
買い方
背景紙や背景布を当面使うあてがなかったとしても、背景紙スタンド(バックグラウンドサポート)と呼ばれているセットを勧めたい。なおここで言うスタンドはロール紙またはロール布用で、一枚紙を垂らすものではない。
背景紙スタンドは中華製のよくわからないものは別として、国内メーカーのものはメスダボ付きのライトスタンドとロール紙や布を通すポールと両者をジョイントするオスダボで構成されている場合がほとんどだ。単体のライトスタンドを2脚買うのと背景紙スタンドを買うのではポール代が含まれる後者のほうが若干高いが、いずれ背景紙などを使うかもしれないし、ポールは別用途で使えるので無駄にはならない。背景紙スタンドとあと1脚ライトスタンドを買えば、スタンドは計3脚になる。もし背景紙や背景布を使う前提なら、スタンドはさらに必要になる。(画像はエツミの製品)


背景紙スタンドのよい点は、重量物であるロール紙やロール布を支えられる強度が担保されたスタンドが漏れなく2脚ついてくる点と、背景で必要になる2〜3mの高さまで伸ばせるスタンドだからだ。家屋や事務所の内部ではソフトボックスやアンブレラ等の大きさが制約になり、スタンドを2〜3mの全長いっぱいに伸ばす機会はすくないだろうが余裕があるのとないのでは段違いの使い勝手だ。
また背景紙スタンドを買うと収納用や運搬用の簡単なバッグがついている場合が多い。これがあるだけで片付けが断然捗る。ここは重要で、ライティング用の機材は整理整頓が難しくバラのままでは持ち運びしにくいのだ。
背景紙用のポールまで付いてくるのは無駄と思うなら、同じブランド内にスタンドセットに使われているライトスタンドがラインナップされているはずなので単品として買えばよいだろう。
では、どこを見極めて背景紙スタンドを買ったらよいのか。スタンド類は日本と諸外国で若干形式が異なっている。ストロボ等を接続する部分がメスかオスかの違いだ。この接続部分を「ダボ」と呼ぶ。日本式はメスダボでオスダボの発光部や用品を受ける形式、諸外国ではオスダボでメスダボを受ける形式だ。どちらであっても変換可能だが、日本のブランドが販売している背景紙スタンドはメスダボを採用し、国産大型ストロボもオスダボだ。ダボの出来不出来は設営時の効率に影響し、ダメなものは地味にイラっとする。

背景紙スタンドの脚部がライトスタンドに流用して使用できるメスダボまたはオスダボ形式になっているか確かめよう。なかには背景紙用に特化されてダボ構造ではないものがある(安い中華製品のほとんどがコレだ)。


さらにもう1台のライトスタンド
さらに1〜2脚買うライトスタンドのうち1つはブームを付けて買うべきだ。ブームとはライトスタンドから横方向に伸びるポールで、角度を自由につけられるようになっている。ブームで発光部をせり出すと重心がスタンドの中心から大きくはずれるため反対側にウェイトが必要になる。どんなに軽い発光部でもかなり重いウェイトを装着しないとスタンドが転倒する。2kgでも足りないと考えたほうがよい。

ブームの末端にフックがついていれば、砂袋形式の鉄球だけでなくペットボトルに水を入れたものを引っかけるとカウンターウェイトとして使える。
グリップヘッド
グリップとはライトスタンドと棒状のものを接続する用品だ。

紗幕(ディフューザー)
最初から必要かどうか見解がわかれるが、考えてライティングを組みたい人は購入して損はない。家屋や事務所内でソフトボックスやアンブレラを配置すると、撮影空間がひどく圧迫される。どのような拡散装置でも、室内で雨傘を開いた状態くらいの場所を取られると思ってよい。このようなとき発光部+紗幕で省スペース化可能だ。もともとこの構成をパッケージ化したのがソフトボックスであるし、ブツ撮りはこうして撮影する機会が多く間に合わせの劣った方法ではまったくない。
ディフューザーは背景紙スタンドを使って垂らしてもよいし、ポール状のものをライトスタンドにグリップヘッドで装着して垂らしてもよい。サイズは様々だが、両手を広げた幅と身長程度の長さ、あるいは半分の幅くらいが現実的だろう。撮影に使用する空間の広さからサイズを割り出すのがよい。
カポック
発泡スチロール板はレフや間仕切りとして不可欠だ。スタジオでは厚みのある発泡スチロールを使用しているが、個人や事務所ではホームセンターにある薄手のものでもよいだろう。
価格
国内ブランドの背景紙スタンドが2万円台。ブーム付きライトスタンドも2万円台(もともと別体なので個々で買うこともできる)。ウェイトは様々な形式のものがあり、複数必要になり2〜3万円の幅で予算がいるだろう。紗幕はサイズ、ブランドで価格がまちまち。カポック用の発泡スチロール板は数千円。
予算は10万円くらい用意しておき余裕のある選択をする。5万円ではあきらかに足りないだろう。
カメラやレンズは名の知れた一流ブランドを買うのに、スタンド類などはアマゾン等で中華ブランドの安価なものばかり買う人がいる。安価かつ堅牢、高性能なら問題ないが中途半端な製品が多いのは価格なりの結果だ。こうした素性がよくわからない製品の買い物は難易度が高いので、最初は品質が担保されたものを買おう。のちのち工夫や工作をするうえで必要が生じたとき、安価で不思議な製品を買えばよいのだ。
撮影台
撮影台が必要なのはブツ撮りに限られるだろう。机などを代用できるが自由度が制限されがちだ。撮影台として売られているものは案外価格が高いし、かなり小さなものしか撮影できなかったりする。組み立てパイプ家具のパーツを組んで骨組みだけ用意し、ここに板を置いたり、乳白樹脂板を置くなどして工夫するのもよいだろう。
光源
ストロボか定常光かは各自の用途しだいではあるけれど、いまのところ定常光の出力はストロボと比べて圧倒的に低いため腰を落ち着けてブツ撮り一筋で専心するのでなければストロボを選択すべきだろう。
定常光はライティングの状態を見たまま把握でき、撮影用ライトは照明用ランプと比べて価格は高いがストロボより安価であるメリットがある。またバッテリー式ではないストロボは家庭用・事務所用の電源では荷が重い場合がある。PCなど電圧の変化に敏感な機器がシャットダウンしたり、事務所ではコピーマシーンのように電気食いが激しい機器と競合してブレーカーが落ちたりする。
このためストロボはバッテリー式の大出力のものを勧めたい。安価かつよく知られたものではGODOXのAD360、600などだ。もちろん他社製でもよいが、クリップオンストロボのようにフレネルレンズがついたものは拡散光を使ううえで効率が悪いので向いていない。
光源の出力
ストロボでは300W以上、定常光LEDランプは50Wを数台組みにして200W以上が目安だ。ストロボ1灯300W程度でほぼすべての用途に対応できるけれど、光源は大出力こそ正義だ。ストロボ、定常光ともに二箇所以上に設置できるよう最低の単位が2台であり、自由度や工夫の幅を広げるには3台(LEDライトなら3組)欲しい。
その他のストロボ用品
ストロボとライトスタンドはダボで接続される。AD360などはクリップオンの形式をとているのでそのままなら接続用のアダプター、底部のパーツを交換してもオスダボに規格ネジがついたものを用意する必要がある(拡散装置を付け加えるなら後述のアダプターが必要)。接続用のアダプターはボーエンズマウントを採用しているものなら応用範囲が広い。
拡散装置
ソフトボックス、アンブレラ、オパライトなど光を拡散させる装置は、設営する場所のスペースが大問題になる。このうちもっともスペースを食うのがソフトボックスだ。自宅や事務所で使用する際は十分な広さを確保しないと、肝心の被写体側のスペースが犠牲になる。またオパライトはほぼポートレイトに特化した機材なので後々購入するのがよいだろう。
組み立てと片付けが容易なのがアンブレラで価格も安い。そして光の質もよい。
どのような機材を選択するにしろ、室内で雨傘を開いてみれば機材の限界サイズが実感できるので試してみるべきだ。なお屋外で拡散装置を使う場合は風によって転倒するなど難易度が高くなり助手がいないなら現実的ではない。
いずれの拡散装置を買うとしても「紗幕」を用意しておこうと提案したのは、スペース取りの問題のほか、紗幕で十分なケースが多々あるからだ。これからライティングを勉強する人にとって紗幕を使った照明はさまざまなことを教えてくれるメリットもある。
撮影空間
専用のスタジオを用意できるなら問題ないが、家屋や事務所で撮影するなら面積と天井高が足かせになる。中望遠を使用するなら、ライカ判100mm程度のマクロを使うブツ撮り以外は20畳くらい必要になる。天井高が3m以上の空間はそうそうなく、理想は5m以上だ。ライトスタンドを置けば、スタンドを開脚させた面積は他の用途に使えなくなる。ここに撮影台や三脚、撮影者のスペースを用意しなくてはならないのだ。
室内の広さと使用できるレンズの焦点距離は別記事に記載している🔗。
たぶんこれだけでは不十分な内容だろうが、おおよその見当をつける材料にはなると思う。単体露出計については述べなかったが、こちらは当サイトでも度々説明してきているし、他に情報がたくさんあるだろう。
© Fumihiro Kato.
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