どのようなレンズがよいレンズか見極める

昨日、AI AF Micro Nikkor 105mm F2.8Dについて試写を含め記事を書いた。この記事でも話題にしたが新しい皮袋には新しい酒を盛るのが真っ当な話で、いまさら古いレンズをお金を出してまで買うのは正直どうかと思う。しかし私は新しいマイクロ105mmを使っているのにAI AF Micro Nikkor 105mm F2.8Dを買った。これは必要だったからだ。求めるものを満たすレンズはよいレンズなのだ。ということは、新しかろうと古かろうとレンズ固有の性格を見極め、使える部分と使えない部分を天秤にかけて独自に判断する必要がある。「使える」「使えない」は世間一般の評価と関係ないもので、自分が求める性能や構造といかに合致するかしないかの話なのだ。

レンズを買うのは新品でも中古でも万札がお財布から出て行く買い物なので冷静になるのは難しい。これで元が取れるだろうか、設備投資した以上に稼いでくれるだろうかと悩ましいし、買いたいとなったら気分が高揚して知性がマイナス10くらい低下しがちでもある。

冒頭で紹介した記事に、新しい105mm F1.4とかなり前からラインナップされているDCタイプの105mmにはまったく興味がないし必要すら感じないと書いた。私は中望遠フェチなのだが、宝くじでたんまりお金が入ってもこれらを買うつもりはない。なぜなら一点豪華主義でレンズを考えたことがなく、レンズの性能や機能は無視しないが他のレンズとの関係性、大きさ、重さといった要素を重視するからだ。中望遠についてはMilvus 135mmと AF-S VR Micro-Nikkor 105mm f/2.8G IF-EDで東と西の横綱的立ち位置がつくられ、85mmは標準域のレンズを補完するものくらいにしか考えていないので出入りが激しい。正直なところ85mmには期待するものが少ない。85mmの最短撮影距離は画角との兼ね合いでとても不自由な感じがするし、人物に限ればワーキングディスタンスと画角の関係が暑苦しすぎる。中望遠は様々な用途で使うが最短撮影距離について重視していて、マイクロ(マクロ)なら問題なしだし、Milvusについては0.8mまで寄れる。そして絞り開放でどうこうすることがほとんどないので開放F値の明るさはかなりどうでもよい。どこまで正確に描写できるかが重要なのだ。以上は私の場合であって、他の人がどう考えているかは関係ない。

中望遠についてもうすこし書くなら、中望遠を使うのは遠くにあるものをほどほどに大きく撮影するためではなく、物体の形状を正確に描写し、しかも立体感を損ねたくないからだ。この要求にもっとも叶うのが105mmで、135mmはワーキングディスタンスとの兼ね合いから105mmより冷静というか冷徹に被写体に集中するために必要になる。AI AF Micro Nikkor 105mm F2.8Dを取り入れたのは、これもまた前の記事に書いたが撮影テーマにしている海景・砂景の現場でGタイプの現行マイクロが取り回しがよくないからだ。このDタイプレンズについては、海景・砂景で使われる設定値で期待する画像を得られるかどうか検討したうえで購入に踏み切った。海景・砂景は15mmを中心にして撮影するスタイルなのだが45mmも不可欠で(50mmではしっくりこない)、中望遠についてはロケ地によって85〜135mmの間で揺れる。

では、どこを見てレンズの良し悪しを判断しているかだ。

まず前述のように開放F値はあまり気にしない。ボケの大きさに期待しないし、F値が大きなレンズが性能的に優れているとは限らないからだ。つまり開放F値にお金を払う気が毛頭ないのだ。ではMTF曲線を気にしているかというと、さほど気にしないしMTF曲線ではわからないことのほうがレンズには多い。いまどきのレンズはまっとうなメーカー製ならちゃんと写る。ちゃんと写るけれど、それが自分の求めているものと違うかもしれない。ではメーカーが掲載している画像や販売店等が提供している試写画像はあてになるのかという話になる。これらはまったくあてにならない。あてにならない理由は自分が撮影したものではないし、場合によってはよく見えるように撮影されているからだ。ことに販売店が提供している画像は撮影者の質がてんでばらばらなうえに、広告なのだからアラが目立たないものが選択されている。ではカメラ評論家が媒体に書いている情報はどうかとなると、ほとんどすべての記事がどうでもよいことをさも大層な研究や実験のように表現しているし、あんまりネガティブに書くとメーカーとの関係が崩れるためごまかしが入り込んでいる。つまり役に立たない。

こうなるとメーカーのショールームで展示されているカメラ付きの状態を見るか、実機に装着できる機会を使うほかない。中古屋さんでカメラに装着してみるのもよい。中古品を買うなら、かならず自分のカメラに装着してから購入を決めなければならない。なかなか面倒なことではあるが、試乗しないでクルマを買うのが危険なように安い買い物ではないのだから可能なかぎり実行しなければならないのだ。

最近のEVFのファインダーはいまいち経験がないので判断しにくいのだが、光学ファインダーを覗くとレンズの質は一目瞭然になる。主にヌケと力強さ、精細さが見て取れるだろう。定義が曖昧なため線の細さ、太さと表現したくないが、こうした傾向も感じれる。これがわからないとしたら、もうちょっと修行?を積んでから本命のレンズを買ったほうがよい。でも、これだけではまだわからないことがある。自分が最終出力する画像に叶ったレンズか否かはデータを実際に現像してみなければならない。データをもらってこれる機会に試写すれば済むのかとなると、やはりいつもの撮影に近い状況で撮影しないと何とも言えない。すくなくとも重要な要素になる部分を判断できる撮影をしないとならない。そこで活用したいのはレンタル機材だ。最近は敷居が低いレンタル機材サービスがあるので使ってみることをお勧めする。でもレンタル機材屋さんにレンズがラインナップされていないケースもあるし、居住地の近くにレンタル屋さんがない場合だってある。

AI AF Micro Nikkor 105mm F2.8Dの場合、品物の程度がかなりよくて、しかもかなりお安い金額で陳列に並んでいたので、某レンタル屋さんに実機があったのだが日取りを調整して借りる手間を省いた。ネット上にある画像から、手慣れた人が撮影した新しい画像を選択し、撮影したカメラの機種を手持ちのものに近づけ、求めている性能が赤裸々に現れるシチュエーションに絞って、さらに現像時に施された調整を読み取りながら参考にした。あとは店頭でカメラに装着して感触を得た。素人の人が自分の機材について語る文章は国内にも海外にもいくつもあったが、我田引水の可能性があまりに高いので基本的には信用していない。メーカーの惹句もカメラ屋さんのセールストークもまた同じだ。

ここを読んでいる人は大概そうだろうが、長年撮影をしていると勘と経験値から少ない情報から自分好みの機材の良し悪しがわかるようになっているだろう。メーカーや販売店が提供する画像を見て、見せたいものの陰に隠れた本音などが読み取れる。またメーカー固有の性格と傾向もわかっていると思う。そんなこんなを総合して必要なレンズを探すほかないのだ。最近ならDxOのレポートはかなり有効なのだが、レポートのどこを見るべきか定見がないと正しい判断に至らない。あれの総合評価はDxO独自の判断に基づいているし、解像度だけ見ればよいというものでもない。しかもすべてのレンズが網羅されてもいない。やはり決定打は「自機にレンズを装着してみる」なのだ。

最後に、ちょっと暗いレンズについて書いておこう。

F1.4に対するF1.8、F2.8に対するF4などレンズのライナップにはひとつ暗いレンズが並んでいる場合がほとんどだ。世の中には「大三元」というレンズを語る下品で意味がないうえに敢えてヒエラルキーをつくろうとする言葉と価値観があるが、大口径が必要なら選択すればよいだけで、ほとんどの場合は1/2段もしくは1段の差は大した問題にならない。絞り開放だけでバカの一つ覚えのように撮影して被写体よりボケを愛でる人は元から箸にも棒にもかからないのだが、そもそも1/2段差で得られるボケの量は大した違いもないし、大口径を1/2か1段絞るほうが性能がよいというのは妄想でしかない。口径比はレンズの性格の一部分でしかなく、その他の性能、その他の使い勝手を総合的に判断すべきものなのは既に書いてきた。たとえばツァイスには同焦点距離で口径比が異なるレンズがラインナップされているが、口径比だけで判断して大口径を買う人がいるだろうか。大口径がダメなのではなく、総合的に見て何が自分のメリットになるかベストバランスを考えなくてならないのだ。

ちなみ私は70-200mmではF2.8ではなくF4を最短撮影距離と描画の傾向とサイズから選択している。28mmもF1.4ではなくF1.8を解像性能と描画の安定性から選択している。105mmの選択はF1.4がまったく求めているものでないので2本ともF2.8であるし、135mmでMilvusを選択したのは明るさより描画の傾向と最短撮影距離の短さによるものだ。できればメーカーを統一したいのだが、求めるものが1メーカーにないので45mmのタムロンしかり15mmのツァイスしかりとばらついている。メーカーを統一したいのは、ニコン純正に誓いを立ててるからではなく発色傾向を揃えたいからに過ぎない。映画屋さんが複数の銘柄のレンズを使用するように、ここは割り切って考えるようにしている。

Fumihiro Kato.  © 2019 –

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・スタジオ助手、写真家として活動の後、広告代理店に入社。 ・2000年代初頭の休止期間を除き写真家として活動。(本名名義のほかHiro.K名義他) ・広告代理店、広告制作会社勤務を経てフリー。 ・不二家CI、サントリークォータリー企画、取材 ・Life and Beuty SUNTORY MUSEUM OF ART 【サントリー美術館の軌跡と未来】、日野自動車東京モーターショー企業広告 武田薬品工業広告 ・アウトレットモール広告、各種イベント、TV放送宣材 ・MIT Museum 収蔵品撮影 他。 ・歌劇 Takarazuka revue ・月刊IJ創刊、編集企画、取材、雑誌連載、コラム、他。 ・長編小説「厨師流浪」(日本経済新聞社)で作家デビュー。「花開富貴」「電光の男」(文藝春秋)その他。 ・小説のほか、エッセイ等を執筆・発表。 ・獅子文六研究。 ・インタビュー & ポートレイト誌「月刊 IJ」を企画し英知出版より創刊。同誌の企画、編集、取材、執筆、エッセイに携わる。 ・「静謐なり人生展」 ・写真集「HUMIDITY」他
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