GODOX製品の記事が読まれているのでまとめてみる

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GODOX製ストロボの記事の閲覧者が多いので、2018年時点を総括するバイヤーズガイドのような話をしたいと思う。

GODOXのストロボはクリップオンタイプのVシリーズと大型なみの出力をクリップオンで使えるWitstroシリーズ、これらと同様にリチウイオン電池を電源にした可搬性のよい大型ストロボがメインのラインナップだ。いずれも価格が安く、ボーエンズマウントを採用しているものも、していなくても同マウントが使えるアタッチメントが市場にあるなど拡張性が確保されている。

身もふたもない言い方をすれば、GODOXは出力あたりの単価が安いからよいのだ。ストロボでは出力が正義なのである。それ以上でも以下でもない。いちはやくリチウムイオンバッテリーストロボのラインナップを増やし、周辺機器も発売し、しかも安いから市場に浸透したのだ。

こうしたことから売れているのだろうし、記事が読まれているのは興味を持つ人が多いのだろう。ただし、けっこう古いにもかかわらず固有機種の設定方法についての記事に毎日多数の人がアクセスしていて、つまりこれは取説が取説の体をなしていないと言える。日本ではケンコー・トキナーが代理店で日本語マニュアルを製品に添付しているが十分とは言えず、かなりの並行輸入業社が製品を売りっぱなしにしている実態がある。一時、トキスターが代理店だったが現在は扱いがはっきりしない。

トキスター製品を統括販売しているワイドトレード社のサイトでは、GODOXのVシリーズ、ADシリーズの掲載が消えた。ところがヨドバシカメラなどにはトキスターブランドのロゴをつけたOEM版がいまだに流通している。もしかすると在庫のみの状態なのかもしれない。

ご存知の通りGODOXは中国のメーカーだ。ほんとうのところは知らないけれど、商売も機種も香港のCactusのコピーなんじゃないの? という気がしないでもないあたりからはじまって、現在は圧倒的な市場を形成している。この市場規模にしてはアフターサービスがよいとは到底言えず、正規代理店から購入したものは代理店が対応するだろうが壊れたり不可解なトラブルに見舞われたら修理や顧客窓口での相談ではなく買い替えと考えておいたほうがよい。前述した「設定」についての記事は、ワイヤレス接続によるコントロールについて説明していて、ここがGODOX製品のキモでもある。これまでにストロボ本体だけでなくワイヤレスの親機X1T、Xproのファームウエアアップデートがあり、代理店はGODOXのサーバーから該当するファームをダウンロードしてインストールするようにWEB上で通知している。ところが、GODOX製のインストーラーは出来が悪くうまくアップデートできない人がかなりの数に上っている。この案件が海外のフォーラムで成功した失敗したと話題になっていて、いまだに原因とこれといった解決策が見つかっていない。

直近のファームウエアアップデートは至近距離にあるストロボへの通信がうまくいかない問題に対応しているが、該当する問題がないならアップデートしなくてもストロボはちゃんと動作する。しかし、気になる人は本体と送信機が最新のファームか確認のうえ購入すべきだろう。と、なると正規代理店の製品を買うのが間違いない。アップデートのデーターはこれもまたGODOX製のソフトを使ってハードに転送するのだが、Windows用しか用意されていないしWindowsでもアップデートの成否が別れている点は注意したい。正規代理店が販売しているものを買ってユーザー登録しているなら、いずれの問題も代理店が対応してくれるだろう。

ヨドバシカメラ等の量販が扱う正規代理店版の製品(トキスターへのOEM含む)は、アマゾン等で販売されている並行輸入品より数千円程度高い(ただし取り寄せの場合があり、銀一では1週間くらいかかる)。これは最近の事情で、すこし前まで並行輸入のほうが圧倒的に安価だった。並行輸入品の価格がかなり高くなったのだ。こうなるとアフターサービスの件もあり正規代理店が出荷するものを買ったほうが賢いかもしれない。ちなみに現在のGODOX製品は製造時に技適を取得しているので、並行輸入業社が技適適合品また正規品と言っていても国内の代理店が関与していないものなので、トラブルや故障を代理店に持ち込んでも門前払いだろう。

ただ正規代理店のアフターサービスといっても前記したように修理ではなく、初期不良なら交換、故障ならほとんどの場合買い替え(あるいは修理という体裁をとって新品との交換)なのだがないよりましだ。AD200、360、600といった製品はチューブ単体が販売されているので、チューブ切れや割れた際は部品だけ買えばよい。一般の大型ストロボは屋外に持ち出す機会がほとんどないし、屋内なら丁寧に扱えるので転倒などによる破損はそうそうないだろう。ところが前記した製品は可搬性がよいので屋外で使用したくなるし、バッテリー駆動なのは屋外使用を念頭に置いているからだ。でも屋外で発生しがちな事故にカシオの時計Gショックなみにタフな構造かとなると、そこまでタフにはつくられていない。屋外では往往にしてライトスタンドごと倒れるだろうし、あわただしいセッテイング時にグシャッとなりがちだ。だからこそ安価な点が評価されているとも言える。

・前提のまとめ「GODOX製品は出力に対して価格が安い点がメリットだが、問題解決や工夫ができないなら他のメーカー品にしたほうがよい。使い潰すほど使用する人に向いている製品」

ではVシリーズ(クリップオン)複数とADシリーズ1台のどちらが使い勝手がよいか考えたい。タフさではチューブが筐体に密封されているVシリーズのほうが期待できる。しかしVはクリップオンとして大光量の部類だが、屋内使用でも屋外使用でもストロボ全般からしたら光量が足りない。あくまでも私見だが、ストロボは300Wが最低ラインの基本でAD2001台でもこの基準を満たしていない。200Wでは不満が出てくるだろうが、300Wあれば大概のことができる。

なのだが、Vにはフレネルレンズがついているので出力だけでは判断できないところがある。直射するならフレネルレンズの恩恵が最大に活かせるし、反射させて使う場合も天井バウンスなどでは有効だ。だがVを数台購入するならADシリーズ1台買えるだろうし、複数の機材をコントロールする面倒くささとトラブルを考えなくてはならない。Vを4台買うなら、素直にADシリーズを買うほうが賢い。Vは2台あれば十分ではないだろうか。そしてフレネルレンズはかなり高度な製品でないかぎり光にムラができ綺麗と言い難いし、長方形の光は直射には向いていてもアンブレラやソフトボックスなどには不向きだ。こうした装置を使う用途や、ブツ撮りをするならADシリーズにしたほうが圧倒的によい。

・結論1「アンブレラやソフトボックスを使いたい場合、ブツ撮りをかなりまじめにする場合はADシリーズがよい」

出力が低いクリップオンストロボが日中シンクロで重宝がられるのは、被写体との距離次第であったり、フレネルレンズで集光して照度を確保しているからにほかならない。ここが難しいところで、フレネルレンズなしあるいは発光部に光を拡散させる装置を装着した大出力のストロボを同じ土俵では比較しにくい。無理をして安直に言えば、持ち運びから扱いまでクリップオンストロボのほうが圧倒的に楽だし、無理をしてもあんまり効果がないようなら楽なほうがよい、となる。たとえ300Wがストロボの最低ラインの基準出力だとしても。

・結論2「拡散光用の装置を使わない屋外撮影ならVシリーズで十分であり効果も高い」

では、GODOXのADシリーズは無用の長物なのかとなるとそんなことはない。光源の出力は大きければ大きいほどよいのだ。このあたりを順を追って説明する。

ADシリーズの200wがちょうど手頃ならよいが、360Wまたは600Wのほうが圧倒的に使い勝手がよいのは前述の通りだ。なお日本発売はまだだが、AD200をやや大きくした筐体の400W版がGODOXにはある。AD200を2台束ねるアダプターがあるので、AD200は2台にしてアダプター込みで買うのがよいと思う。なお、この状態ではAD200のフレネルレンズのヘッドは使えない。

サイズ・重量と出力のバランスが取れているのがAD360だろう。300Wと360Wの差60Wは思いのほか大きく、モノブロックの300Wを買うならAD360のほうがよいかもしれないと思うくらいだ。というのも、バッテリー式なら撮影場所を問わず、出先でコンセントに挿すときブレーカー落ちを心配することもない。ゼネ式の大型ストロボは本体で一括して出力を設定できるが、無線通信式ではないモノブロックは1台ごとにつまみを回して出力を調整しなければならないのも苦痛だ。無線通信用のX1T、XproとGODOX製ストロボの組み合わせは便利このうえない。サイズと重量が苦にならないなら、AD600だってよいだろう。360Wと600Wの差はかなりのものだしモデリングランプもついているのでより広範囲に使える。AD600にはTTL調光モデルとマニュアルモデル、それぞれにGODOXマウント版とボーエンズマウント版があるが、TTL調光は使わないだろうからマニュアル式のボーエンズマウント版でよい。

よいことづくめのAD600とはいえ重量は3kgだ。がんばればホットシューに載せられるAD360よりはるかに重い。自動車で機材を運搬できたり、撮影中にストロボの面倒を見てくれるアシスタントがいるならAD600一択。でも3kgもあるストロボを(ソフトボックスなど装着して)グリップで支え持ったり、棹物の先に装着して突き出したりは考えてみるまでもなく大ごとになるだけでなく不安定だし危険だ。カタログ等で屋外でアシさんがAD600を手にしているが、かなり根性入れて万全の体制にしなければ実現度ゼロで、ライトスタンドを使うにしても頭でっかち度が高くなるAD600は注意深く設置しても倒れやすい。AD600は本体を電源部にし発光部をコードで分離する方法が取れるので、こうする他ない。電源車を用意してゼネからコードを展開する大型ストロボより圧倒的に楽だし経費もかからないが、それなりのおおごとになるのを覚悟しなければならないだろう。屋外ではモデリングランプは不要だからAD360でいいやとなるかもしれない。

・結論3「出力は正義だが、AD600を屋外に持ち出すのは相応の努力や工夫や体力が必要でおおごとになる。そこまでやる必要があるか考えて、AD360を2台のほうがスマートかもしれない」

あまりにGODOXのリチウムイオンバッテリーストロボが安価で便利なので屋外での使用を夢見てしまうのだが、日中シンクロは太陽光に対抗する出力が必要で、さらに大出力の機種はそれなりに大型化するので甘くはないのだ。しかもソフトボックス等を装着するだろうから風に煽られるし、これら装置からスタンドとウエイト、人員など考慮すべき点が増える。

とはいえ、屋内使用だけ考えてもゼネを必要とする大型ストロボは制約が大きい。そこで、可搬性への期待と大型ストロボにもれなくついてくるモデリングランプの有無と必要性を実際の撮影に照らし合わせて考えるべきだ。モノブロックストロボはモデリングランプがついているが大型ストロボより可搬性がややよくなるだけで電源の問題がつきまとう。AD360が2台あればAD6001台の仕事ができるとしてもモデリングランプがない。AD200にはモデリングランプがあるが使い物にならず、2台を束にするアタッチメントについているモデリングランプでようやく実用になる。ちなみに、AD6001台の金額でモノブロックが1台買えるくらいの金額になる。

ではモデリングランプが必須なのはどのような撮影なのか。ライティングの効果を見るには出力に連動するランプが必要だし、ほとんどの撮影ではおおよその勘で複数のストロボの出力を調整できる。テスト発光して露出計で照度差を検討するのが通例だろ。つまりモデリングランプを照度の検討に使うことはほとんどない。ただし、暗所でピントを合わせるにはモデリングランプが欲しい。色温度や地明かりの影響を厳密に排除する必要がないなら、電灯が点っていてもよい場合が多い。厳密なブツ撮りでないなら、モデリングランプなしでも十分に撮影可能だ。

・結論4「出力とサイズと価格でAD360がもっともバランスがよい。AD200は出力がイマイチ。AD600は、この出力でしか可能にならない撮影で威力を発揮する」

AD600は事務所や自宅をスタジオにする場合、これまでのモノブロックに置き換わる製品になるだろう。また電源車を出すほかなかった屋外での大光量シンクロ撮影では経費の削減や小回りのよさに貢献するだろう。しかし期待できるお手伝いがいない撮影者一人、あるいは撮影者とモデルだけの屋外撮影では前述の要素によって持て余すのではないか。ここがAD360のバランスのよさだ。ただし、人それぞれの目的によって一般論では語れないものがあるので注意してもらいたい。

私は他の大型ストロボのほうが圧倒的に信頼できるし、なにかと使い勝手のよいところもあるのだが、荷物をすくなくしたり煩雑な手間を省く上でGODOX製品を使っている。そして安価に発光部を増やせる点は便利だと思っている。

 

Fumihiro Kato.  © 2018 –

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・スタジオ助手、写真家として活動の後、広告代理店に入社。 ・2000年代初頭の休止期間を除き写真家として活動。(本名名義のほかHiro.K名義他) ・広告代理店、広告制作会社勤務を経てフリー。 ・不二家CI、サントリークォータリー企画、取材 ・Life and Beuty SUNTORY MUSEUM OF ART 【サントリー美術館の軌跡と未来】、日野自動車東京モーターショー企業広告 武田薬品工業広告 ・アウトレットモール広告、各種イベント、TV放送宣材 ・MIT Museum 収蔵品撮影 他。 ・歌劇 Takarazuka revue ・月刊IJ創刊、編集企画、取材、雑誌連載、コラム、他。 ・長編小説「厨師流浪」(日本経済新聞社)で作家デビュー。「花開富貴」「電光の男」(文藝春秋)その他。 ・小説のほか、エッセイ等を執筆・発表。 ・獅子文六研究。 ・インタビュー & ポートレイト誌「月刊 IJ」を企画し英知出版より創刊。同誌の企画、編集、取材、執筆、エッセイに携わる。 ・「静謐なる人生展」 ・写真集「HUMIDITY」他
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