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現在のところカメラ1台、レンズ1本に絞るのは不可能で、最大でカメラ3台構成になり自ずとレンズ3本で屋外での作品づくりをしている。贅沢というより、はっきり言わなくても「重い」。ここに三脚などを含むと、総重量10数キロになる。米袋10kgは、文字通り袋に入れられているので条件が異なり撮影機材と単純に比較できない。そうだとしても、米袋10kgパックと5kgパックを携行して歩き回っているようなものだ。これはフィールドカメラや中判カメラを携行していたときより重い場合があるのだ。
なぜカメラ3台構成なのか。屋外の移動中にレンズ交換したくないからだ。穏やかな環境ならまだしも、結構な砂埃など舞い散る中での撮影ばかりしているためこれらがセンサーに付着するのは大いに避けたい。粉塵状のものは観念するとしても、潮風のベタベタ成分は厄介すぎる大敵だ。もちろんフィルムを使っていたときも、粉塵状の物質は付着していたし、付着した状態で撮影したフィルムの汚れの影を修正するのはデジタルでは考えられない面倒くささであったし、デジタル修正のようにきれいに消し去れるものではなかった。しかし、このコマを巻き上げてしまえば再付着の例外を除いて次のカットには影響しない。ところが次々送って行くフィルムと違い、一箇所に留まったままのセンサーは下手をするとレンズ交換のたび粉塵が積み重なる。
こうした問題についてオリンパスが超音波振動で埃を落とす構造を採用して、4/3では実に効率的にセンサーの汚れ問題を解決した。だが他社のカメラは同様の仕組みでセンサーを振動させてもオリンパス機のように綺麗さっぱりとはいかない。これは特許云々の問題ではなく、たぶん大きなサイズのセンサーを振動させて埃を落とすのが難しいためだろう。特許と言えば最近期限が切れたものに、タムロン方式のレンズキャップがある。キャップの中央近くにある指がかりを中心に向けてつまむとロックがはずれるアレだ。近年多くのメーカーが採用していたが、これは特許を買って使ったり、タムロンとOEM関連であったり縁が深いカメラメーカーであったりが双方の特許を融通しあうなどゴニョゴニョして採用していた。したがって大型センサーにも画期的かつ効果的な目をみはる効果があるなら、各社オリンパスとゴニョゴニョして特許の核心部分を採用しているだろう。これでカメラが数千円高くなっても、こっちのほうが断然便利なのだからユーザーは納得するはず。しかし、いっこうに採用されない。まあ、そういうことだ。
ニコンに訊いていないから確信を持って断言できないのだけれど、D800E、D810、D850と世代ごとにセンサー清掃が楽というか、アルコールでセンサーを拭ったときの汚れ落ちがよくなっている気がする。あー、気のせいかなあ。どうなんだろうなあ。勝手に汚れ落ちがよくなっていると仮定して、センサー表面のコーティングが変わっているのではないかと思ってみたりする。アルコールがセンサー表面に乗っかる様子からフッ素コートではないだろう。しかし、いつまでもしつこく埃が残る例が圧倒的に少なくなった気がする。気がする気がするで、どうしようもない感想だがこんな気がする。それともいつの間にか私がサービスセンターの人なみに掃除が上手くなったのか。でも、アルコール清掃しないかぎり問題が解決しないのは何ら変わっていない。
話を重量そのものに戻す。なんだったらズームレンズを使えばカメラ3台構成なんかしなくてもよいではないか、となる。私が使用する焦点距離のレンジは超広角を除けば「笑っちゃうね」的な狭さだ。15mm超広角と、標準系で望遠側が長いズームにすれば2台でいけるし、超広角域を含む広角ズームとやはり標準系で望遠側が長いズームだってよいだろう。いずれこうなるかもしれないが、私はズームレンズが好きではないのだ。したがって荷物が重いのは自業自得だ。ズームがあることで構図に迷う瞬間が生じるのがなんともじれったく踏ん切りが悪い気がする。何かを見つけてレンズの画角が連想され、この画角のレンズがついたカメラを構える位置に歩いて行って撮影する流れとだいぶ違うものを感じる。ある地点に立ってファンイダーや背面液晶のLVで構図を取ったとき、ズームレンズの場合ワーキングディスタンスの変更ではなくズームで画角を若干広げたり詰めたりしてしまう。これが結果的によかった試しがない。またズームレンズを使っていても実際に撮影に使う焦点距離は○mmだけといった例ばかりで、ズームリングは固定したまま焦点距離に見合う撮影位置を探している。馬鹿らしいだろうけれど、なかなか治りそうにない。
だったらフォーマットが小さいカメラにしたらどうか、である。アドバンテージの度合いがあまりないとは言え、小さく軽いカメラはやはり小さく軽いのは事実だし、レンズもまた小型軽量だったりする。もうごちゃごちゃ言い訳は書きたくないのだが、ライカ判フルサイズの融通性のよさや必要とされる性能とか挙げると今のところ他のフォーマットに飛び移る元気が湧かない。ライカ判の誕生は、大型大排気量の自動車のなかに軽自動車を放り込んだようなできごとだった。ところがカメラ界は、軽自動車の高機能化があまりに進んで普通車はいらないのではないかという人が増加している現代の状況より更に先を行っていて、ライカ判フルサイズ高画素機があればトラックやトレーラーが必要な用途が限られているように他はいらないといったところまできている。むしろライカ判より小さなフォーマットは、APS-Cやm4/3と言わずもっと小さいものが割り切りよくしかも納得できるものだったら使いたいと思うのだ。軽自動車があるから(以前ちょっとだけ話題になった)50ccの屋根付き自動車チックなものはいらないので、電動自転車が欲しいなみたいに。喩えについては一切の悪意や他意はないことを付け加えておく。
こうした私的な要因から機材が重くなるので、カメラバッグについては最軽量の部類で最大容積ではないかと考えられるマンフロットのショルダータイプを使っている。リュック・バックパックタイプのほうが背負うことで負担感が少ないからと迷うことしばしばだったが、両サイド全面開放タイプのピークデザイン・エブリディバックパックでも撮影移動中の機材の出し入れがショルダー並みと言えないところに気づき観念した。マンフロットのショルダータイプの肩紐をたすき掛けできる最短近く短くして、荷室を腕の下ではなく背中側にすると劇的に負担感が減る。機材を出したいとき腕の下に戻せば、さっとカメラが出せる。リュック・バックパックタイプもまた慣れの問題だろうが。
それにしても10数キロを持ち運ぶ、しかも自動車からスタジオ内のような短距離ではないなんてやはりイカれている。2、3歳児を抱っこしながら撮影しているようなものだ。世の中にはナショジオの撮影をしている人のように、大砲のようなレンズと大型三脚、更にいろいろなものまで持って移動する撮影分野があり、私の事情なんて甘いほうだろう。とはいえ、個人の感想としては重労働なのだ。個人の感想でなくても、10数キロを担いで歩き回るのはどうかしている。ライカ判でフィルムの大判以上のデータがつくれることを感謝しつつ思うのだ。
Fumihiro Kato. © 2018 –
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