浪江町ロケに向けての準備でFotopro T63C

宮城ロケの前にどうしてももう一度浪江町に行かなければならない気分(というか複数回行くことになるのでは)なので諸々予定を変更した話をつい先日書いた。そしてようやく日程の目鼻がついたので、しばらく撮影装備について考えていたのだが前回とは異なる構成にした。いまのところ注文したものの到着を待っている状態だ。

 

これまでHUSKY3段とGITZO G112(ともにHUSKYの雲台)だったところをFoto T63C1台にHUSKYの雲台にする。イヤダイヤダと消極的だったレンズ保護フィルターをフッ素コートのもので新調もした。HUSKY万歳と言ってきた身としてはやはりHUSKYを使いたいのだけど、今回は車移動しつつ徒歩移動もそれなりに多そうなので自重が軽い三脚を選択した。自重が軽い三脚の役目はこれまでGITZO G112が担っていたのではあるけれど、このエレベーターはギア式でここに砂が噛むと気持ちまで辛くなるのが難点なのだった。宿に戻ってバスルームで水をぶっかければ大概は改善されるとしても、撮影中に手持ちのペットボトルの水をかけた程度ではどうにもならずこれまで難儀すること度々だった。中にはセンターポールなんていらない人も存在するが、超広角を常時使用するので高さ方向のアングル決めが結構重要になり私には必須である。そこでセンターポールの繰り出しにギアを噛み合わせないナット固定式の三脚で自重1.5kg程度のものを探すことになった。

 

自重1.5kg、総伸長160cm程度、パイプ径28mm程度。これがHUSKY3段とGITZO G112の中で独自性を保てる私仕様であり、必要な強度だ。というのもHUSKY3段雲台込みは3.7kg、GITZOG112は脚部のみ1.6kgでHUSKYの雲台を載せると2.9kgなのだ。G112が異様に重いわりに小さくヘロイのは時代なりの構造のせいで、軽くはないなと思ってはいたがモノのわりにここまでヘビーと気づいた時はちょっとびっくりした。別の見方をすると、HUSKY3段は同ランクの三脚と比較して格別重い訳ではなく、GITZOG112が不思議なくらい重量があるとも言える。GITZOG112クラスの三脚はいまどき脚部のみ1.2kg級ではないかな。どうしても死守したいHUSKYの雲台が1.3kgと重量級なので、この4〜500gの差は結構大きい。ところが、私の勝手な要求仕様を満たす三脚はほとんどない。あたりまえだけど。

 

当然この分野で特色を出しているSIRUIから探した。だがSIRUIの軽量級クラスでは総伸長が足りない。N-2205X以上になると高さはあるが、N-2205Xを越えると求めている重量を超える。BENROもだいたい似たような具合である。GITZOを買えよという声があるのはわかっている。でもHUSKYが好きだし、相対的にGITZOのコストパフォーマンスはかなり低下しているしでその気になれない。だったらスリックかベルボンだけど私のニーズぴったりのものがない。ないものねだりなのである。ドイツのFLMも検討したうえで、Fotoproがよさそうだぞとなった。World Tripod Award 2015とやらで中型部門第一位にT73Cが選ばれていたりしたし。ただしT73Cは自重1.95kgなので、パイプ径が28mmのT63Cが条件に一致する。SIRUIのN-2205Xと比較してどちらがよいかちょっとわからないのだけど、元来のへそ曲がりでもあるのでT63Cに惹かれた。つまりT63Cはパイプ径含む仕様がN-2205Xに近い。もう少し真面目に選択ポイントを挙げると、センターポールを締め付けるナット機構がSIRUIはGITZOのトラベラーなどと同じタイプで、FotoproのTシリーズはマウンテニア以上の機種で使われている耳付きであるところを評価した。手が熊並みに巨大な私は小さな部品をグリグリ回すより耳を掴んでグッとやる方が好都合で、それでなくてもこちらの方が確実で天候が悪いときは特に向いている。もっと細かな点では、標準でセンターポール終端にゴムリングのクッションが付いていること。これでポールが下方向に落ちていったときガツンとくる衝撃を多少吸収するようになっている。こんな事故はほとんどないけれど、ギア式のHUSKYだって落ちたときはガツンである。

 

サイズ・重量 /
Fotopro 大型カーボン三脚 T63C
全伸長:165cm
縮長:63.5cm
脚径:28mm
推奨積載:12kg
重量 1.55kg

である。


中国企業の三脚で日本での扱いは浅沼商事=Kingだ。メーカー、販売ともに「大型」と言っているが明らかに中型である。好意的に解釈して、メーカー内の位置付けが大型なのだろう。いずれにしろ私はHUSKY3段があるので、ここまで堅牢強固なものは求めていない。なお、Fotopro製品の基本はコンパクトカメラにぴったりな製品以外いわゆるGITZOのコピーと言ってよい。自社ページに掲載されているユーザーの推薦の言葉に、GITZOに等しい内容で価格は半分みたいなことが堂々と書かれている。

 

T63Cの価格は、私が求めている条件では格安だ。しかし、人によって条件が異なるだろうからSIRUIと比較して魅力的ではないとなりそうだ。私は身長が比較的ある方なのと、前述の超広角使用時のアングル問題もあって160cmの総伸長が必要だったが、これがいらないならSIRUIやBENROがよいかもしれない。こういう人にはT63Cは中途半端なサイズと重量感だろう。この2社に限らず、私が求めている仕様の三脚は滅多にないし、存在していても大メジャー級ではないのはニーズが少ないからに違いない。トラベル三脚とHUSKYの中間に位置付けられる仕様を求めている人は多くなく、また最近はトラベル三脚の強度や仕様向上が著しいことも影響しているはずだ。このためWorld Tripod Award 2015を獲得しているわりに、国内ではあまり名前を聞かないうえに扱いも大きくはない。

 

でも、これからHUSKY級の三脚を求める人はT63Cと言わずT73Cなんかが射程距離に入るのではないだろうか。というのも、重量が軽いため重量に依存する安定度は低いだろうが、強度について真面目に検討されたモデルだからだ。私はHUSKYが好きだし期待を裏切られたためしがなく、この性能を維持したまま続け使い続けられるのが好ましく、これからもずっと使用するだろう。だが現代の他ブランドのように革新があるかといえばまったくない。元から三脚はこういうもので革新は同時に試行錯誤だけど、3.7kgはいらないというならT63CかT73CにHUSKYの雲台でよいだろうと一昨日あたりから思うようになった。若いときHUSKYの重量は気にならなかったが、これは体力があり、しかも数十年前はちゃんとした三脚がとても少なかったからだ。しかも中判以上を頻繁に使っていたし。中国メーカーにアレルギーがある人以外は試してみてもよいのではないだろうか。いろいろ確認したけれど工作精度があって、果たしてGITZOを超えているかわからないが価格から想像しては損をすると思う。

 

ストロボのGODOXは製品の詰めに甘いところがあり、この話はまたの機会にするつもりだが、しかし割り切りと思い切りのよさで中華製機材への世間の認識をガラッと変えた。Fotoproは初心者向き、ご家庭向き製品を数多くつくっているけれど高度な製品の質は新興国の新興メーカーと言い難いレベルにある。HUSKYやGITZOの真価は、単純きわまりない構造で確実に動作させるところにある。これは三本の脚の要(かなめ)の部分と、この脚の取り付け部周辺を見ると歴然としている。造形からして単純だ。脚のパイプばかり語られて見落とされがちだけど、ここは三脚にとって重要な部分でもある。Fotoproをはじめ中華系三脚メーカーはGITZOをコピーするところから始まっているので、ちゃんとした製品なら同様の合理性を持った単純さだ。

 

日本製三脚について私はずっと疑問の目を向けて近づかなかったのはHUSKYで満足していたからであり、過去に痛い目をみて羹に懲りて膾を吹いていたからだ。ここから格段と進歩したのが今日の製品群で、まさかHUSKYとGITZOのコピーはつくれないしつくりたくないだろけれど、三脚に求められているものごとはこの2社が確立したエッセンスにあり影響下にある。Fotoproが巧妙なのは国産勢とほとんど同じ内容なのに、三本の脚の要(かなめ)の部分と脚の付け根、さらに雲台取り付けプレートの鍛造パーツの(やりすぎ感はあれど)見せ方のうまさだ。この部分、基本はGITZOだけどイマドキ風に改変していて造形から機能と堅牢性が一目でわかるアピールがある。そして単純がゆえに、不測の事態が起こっても解決策もまた単純になる。バラすのも楽そうだし。なおT63Cには六角レンチがもれなくついてくる。開脚度を変えるパーツ周りはGITZO同様の単純さで、ここを親切設計にしている国産勢と比べ割り切りよく、何かあってもリカバリーしやすい。FotoproのT型が同クラスと比較して微妙に軽量なのは(ここが私にとって重要だった)、この部分の構造を切り詰めた単純さからくるものでもある。実際に精度は高い。といったことが、造形化されているのだ。

三脚は単純なものでいい。三脚は重要な機材ではあるが、三脚に煩わされるなんて馬鹿らしい。パッと立てて、スッとアングルを決めて、パッパと片付けられて運べるものがよいのではないかな。微妙な操作は雲台に任せるわけで、だからこそ私はHUSKYの雲台を使い続け、脚もまたHUSKYを信頼してきた。海景をしつこく撮影する以前はギア式エレベーターは微動に便利で重宝していたけれど、荒れた海辺ではトラブルの元だったりした。海に限らずトラブルを危惧するため未だにGITZO方式が残っている必然性を痛いくらい理解した。使えるもの、使えるから残るものって、こういうことだよね。いまのところFotoproのT型は国内で大躍進とは言えない感じではあるが、これからじわじわ勢力を伸ばすだろう。しかし中華製は安いという先入観を裏切る微妙な価格設定なので販売には難しさが伴うだろうし、ぱっとしないのはこれが原因だ。比べる相手は過去の中華製ではないけどね。

Fumihiro Kato.  © 2018 -Unauthorized copying and replication of the contents of this site, text and images are strictly prohibited. All Rights Reserved.

 

Profile

F.Hiro.K
加藤(文)文宏 / Fumihiro Bun Kato a.k.a Hiro.K
写真家・作家 / Photographer Author
・北海道北見市生まれ。
・大学卒業時までに詩集「無題あるいはサラバ」、同「Cadenza」発表(共に絶版、在庫なし。「Cafebza」別装丁私家版のみあり)。
・スタジオ助手、写真家として活動の後、広告代理店に入社。
・2000年代初頭の休止期間を除き写真家として活動。(本名名義のほかHiro.K名義他)
・広告代理店、広告制作会社勤務を経てフリー。
・不二家CI、サントリークォータリー企画・取材、Life and Beuty SUNTORY MUSEUM OF ART 【サントリー美術館の軌跡と未来】、日野自動車東京モーターショー企業広告、武田薬品工業広告、他。アウトレットモール広告、各種イベント、TV放送宣材、MIT Museum 収蔵品撮影 他。
月刊IJ創刊、編集企画、取材、雑誌連載、コラム、他。
・長編小説「厨師流浪」で作家デビュー。「花開富貴」「電光の男」他、小説のほか、エッセイ等を執筆・発表。
・獅子文六研究。
・インタビュー & ポートレイト誌「月刊 IJ」を企画し英知出版より創刊。同誌の企画、編集、取材、執筆、エッセイに携わる。
・各メディアにおけるスチル撮影。
・オリジナルプリントの製作、販売。
・JSAHP正会員
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