砂、粉塵、油煙、潮風とレンズ、三脚

なかなか宮城県にロケに出られない中、鹿島灘方面に出かけた。私は天候がよい日を避けて曇りから雨に向かう下り坂の日をわざわざ選んでいるうえに、九十九里から鹿島灘はかなり風が強い。鹿島灘の風の強さは、風力発電機の巨大なプロペラがあっちこっちに突っ立っているくらいのものだ。で、この日も曇りで何かと風の強い日であったし、つい先日の九十九里は耳に砂が入りこむくらいだった。

こうした海辺の撮影をしているとレンズのフッ素コートのありがたみをしみじみどころか激しく感じる。しかし、レンズにフッ素コートが導入されたのは近年のことですべてのレンズで恩恵にあずかれるわけではない。そこでフッ素、防汚コートを施したレンズ保護フィルターがあるのだが、私はこうしたフィルターが嫌いだ。というか特殊な用途でもなければレンズにフィルターをねじ込む人は、たぶんいない。嫌いだけれど、使わざるを得ない特殊な用途として海辺の撮影、荒天での撮影があるとはいえ、なるべくなら使いたくない。

レンズが惜しいからフッ素コートのフィルターを使うのはではなく(もちろん惜しいけど)、潮風の塩分混じりのべたったとしたナニカと細かな砂つぶにまみれたレンズなり、こうした汚れをまとった普通仕様のフィルターなりをきれいにするのが大変だから使わざるを得ないのだ。出かけるときは無水アルコールとシルボン紙、ティッシュペーパー、ウエットティッシュ常備が海辺行きの道具立てになる。多めの無水アルコールで潮風由来のべたべたしたナニカを溶かして浮かしたあと、第一回目の拭き取り。次に適量の無水アルコールで拭き取り。といった工程を一巡で終えられることのほうが稀で、なかなかスッキリきれいになってくれない。ところがフッ素コートが施されていると、そもそもここまで汚れない。ブロアーだけでなんとかなる。こうなればあとはウエットティッシュなどで顔やら手やらをさっぱり拭うだけだ。

ずっと以前、東南アジアの某国で撮影をしていてイザというとき、あれは何であったのか不明だが油煙状のナニカがレンズの前玉を覆っていてきれいにするのに難儀した経験がある。それからと芋の、ほんとうに嫌なのだが一応保護フィルターを用意したこともあった。だけど、超広角など画角内に光源が入る可能性が高いレンズではゴーストが出たり厄介で悶々とすることが多かった。フッ素コート・防汚コートを施したフィルターが高精度、高機能、高付加価値、高価格帯の製品であってもネガティブ要素は完全に消し去れない問題として残る。だがしかし、でも、と逡巡しつつ状況を読みながら先手、先手を打ち装着する。すべてのレンズにフッ素コートが採用されたらよいのにと思うのだが。

こうした埃の問題に悩まされるのはレンズに限らない。カメラについては落下させたり環境劣悪ななかレンズを交換しない限りほぼ問題はない。レンズの交換については私も使用しているエツミ製「デジタルチェンジングバッグ」が便利で、これのMサイズがあれば使い方を誤らない限り埃問題は無視できる。意外に頭を悩まされるのが三脚なのである。

三脚で問題になるのは「砂噛み」だ。水没したくらいなら撮影は続行できるし、撮影終了後に真水をぶっかけ乾かせばどうにでもなる。しかし脚の伸縮部、エレベーターのギア、雲台の可動部に砂が噛むと動きがスムースではなくなり最悪は可動しなくなる。強風下で撮影していると三脚の転倒は珍しくない。例えば、三脚の脚を伸ばしてあとはカメラを装着するだけになった際、カメラの準備をしているところでコテンと転倒し砂浜の砂でざらざらになったりする。ハスキーは重量があり開脚が大きいため倒したことはないが、ジッツォのトラベルは倒して難儀したことがある。つい先日もコテンとやった。

こうした経験から、センターポールはギア式ではなく素通しの締め付け固定のものにしたいと思うのだった。ギアとセンターポールのギア噛み合い部に砂が付着することほどやっかいなものはないからだ。だが現在、私はこうした条件を満たす三脚を所有していない。脚の締め付け固定がレバー式ではなく、センターポールがギア式でもなく、雲台を含めない三脚本体が2kgを超えず、なおかつ単純なつくりで必要最低限の強固さを持った製品はあるか? となるとなかなか難しい条件になる。そんななか「いいかも」と思ったのがFotoproのX番台、具体的にはX-6CNあたりだったりする。中華製で国内販売はKingで価格が驚くほど安いので、難所で使ってどうにもならなくなったら使い捨てにすることができる。脚部のみの販売があるので雲台はハスキーが使える。

世の中には防水性を売り物にした三脚もあるにはあるが水はどうにかなるのは前述の通り。ハスキー、ジッツォともに分解清掃可能であるけれど現場でちまちました作業はやっていられない。できる限り現場で気を使わず、気を煩わされず使用し、大雑把な(水をぶっかけるとか)メンテで可能な限り復帰できるものが求められる。防水性などやはり中華製のSiruiに気の利きいた製品はあるものの、最近になって国内販売が始められたFotoproはこれからもっと注目されていくだろう三脚メーカーだ。細かいことを言えば、ハスキー、ジッツォにかなわいところを感じるのだがジッツォを見本にして改良したような製品は割り切った使い方や、人によっては十分な性能を持っている。なので、私は現在考慮中なのだ。といいつつ、ギャラリーにあげたような写真を、長靴を履いて砂丘を歩き回って撮影している。

Fumihiro Kato.  © 2018 –

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・スタジオ助手、写真家として活動の後、広告代理店に入社。 ・2000年代初頭の休止期間を除き写真家として活動。(本名名義のほかHiro.K名義他) ・広告代理店、広告制作会社勤務を経てフリー。 ・不二家CI、サントリークォータリー企画、取材 ・Life and Beuty SUNTORY MUSEUM OF ART 【サントリー美術館の軌跡と未来】、日野自動車東京モーターショー企業広告 武田薬品工業広告 ・アウトレットモール広告、各種イベント、TV放送宣材 ・MIT Museum 収蔵品撮影 他。 ・歌劇 Takarazuka revue ・月刊IJ創刊、編集企画、取材、雑誌連載、コラム、他。 ・長編小説「厨師流浪」(日本経済新聞社)で作家デビュー。「花開富貴」「電光の男」(文藝春秋)その他。 ・小説のほか、エッセイ等を執筆・発表。 ・獅子文六研究。 ・インタビュー & ポートレイト誌「月刊 IJ」を企画し英知出版より創刊。同誌の企画、編集、取材、執筆、エッセイに携わる。 ・「静謐なり人生展」 ・写真集「HUMIDITY」他
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