柔らかい、硬い、きれい、汚い光(私によくてもあなたにとっては別だ)

話題の前提として撮影に使う光にまつわる言葉の定義をはっきりさせなくてはならない。柔らかい光=拡散された光、硬い光=拡散度が低い光、きれいな光=均一な照度の光、汚い光=ムラが生じている光、だ。しばしば柔らかい光をきれいな光、硬い光を汚い光としている例があるけれど、硬くてもきれいな光である状態もあるのだから厳密に分けておきたい。また、こうした定義がないまま適当にきれい、汚いと言っている人がいるけれど、他人のことはどうでもよいとして、自らの撮影でははっきり認識しておかないと、ライティングの工夫や改善をしようにもどこをどうしたらよいかわからなくなる。

クリップオンストロボの光は汚いと表現するとき、これはクリップオンストロボの配光にムラがあることを指している。クリップオンストロボを被写体に直射したとき硬い光になるのとは別のモノゴトについて言及しているのだ。クリップオンストロボの光は硬くて汚いという場合、これが「硬い+配光が汚い」なのか両者をごちゃ混ぜにして字面通り「硬くて汚い」としているのかよく考えなくてはならない。選択的に硬い光を使う場合、わざわざ汚い効果を求める場合だけでなく硬くきれいな光を使いたいことのほうが圧倒的に多い。言葉は思考そのものなので、言葉を大切に使わないなら思考もまたいい加減になる。まあ大概こういう人は直情的なままで終わる。

グリッドの使用について考えてみる。

グリッドはハニカム状や正方形のマス目に光を通過させ、被写体等の目的の場所に直行しない光をカットして光の照射範囲を絞る道具だ。マス目を小さくしたり深くすることで、照射範囲を狭めスポット的に照射角を小さくできる。マス目によって光を絞り込む効果を筒で得るのがスヌートだ。光は一点から放射状に広がるため、グリッドを使っても厳密にX°の範囲だけに光を制限することはできない。だがグリッドを通過した光は、通過させない状態より硬くなる。なぜなら、拡散度が低くなるからだ。リフレクターにグリッドを着けるだけでなく、ソフトボックスの開口部にもグリッドを着ける。このときソフトボックスでつくった拡散光のうち、拡散する光を一部捨てていることになる。拡散光のうち直行性が高い光を使うことになり、ソフトボックスそのものの効果が減り光は硬めになる。

ソフトボックスとは、光をディフューザーに当て、ディフューザーの面を光源に変える装置だ。光源の面積が広がることで面光源化する。なぜ面光源の光が柔らかいかといえば、広い面積から光が全方向に広がる(もちろん光の進行方向に照射する割合が圧倒的に多い)ためだ。光源からディフューザーまでの距離(深さ)、この間の内面の反射性、ディフューザーの質、ディフューザーの面積と形状によって、光の質は大いに変わる。グリッドを使う代わりに、ソフトボックス内の光源にリフレクターを装着できるようにするとグリッドに似た効果が得られるのは、光源から放射する光の方向性を制限できるからだ。もちろん拡散度が低くなるので光は硬くなる。

こうした拡散装置の性能や、使い方しだいでつくられる柔らかい光、硬い光は用途によって「使える」「使えない」となるし、こうした評価は人それぞれの感性次第である。なので、私にはよくてもあなたによいとは限らないのだ。また、どのような目的にも「よい」「わるい」と言い切れる光はない。

光のムラを利用するなら別だが、ムラが生じた光は扱いにくいし、ムラが余計なものになり写真に本来の意図とは別の意味を与える。例えば背景を均一に照明して意味のない空間にしようとしているのに、ここに明暗のムラが生じると余計な演出になり、写真を見た人は明暗のムラを含めてナニかを感じることになる。クリップオンストロボの配光は、中心部の長辺方向に輝度が高く、かなりいきなり周辺に向かって輝度が下がる。輝度が徐々に下がるならまだよいが、質の悪い製品ではフレネルレンズによって輝度違いの縞が生じる。

こういうこともあり、私は定常光照明用のフレネルレンズを手に入れてあれこれ改造しながら使えるものにした。

これがAD360IIに件のフレネルレンズを装着したときの光(超広角撮影)だ。グリッドやスヌートを使うのとどこが違うの? と言われて久しいのだけど、集光され硬い光になるのは変わらないし、むしろ集光性が強くなってより硬くなる。12〜40°超まで照射角を調整できるところが違うだけでなく、最大の違いは距離に応じた光の減衰が逆2乗の法則に従わないところで、つまり近距離、中距離、遠距離の照度の差が小さくなる点だ。遠距離といってもたかがしれた距離だが、近距離から中距離を比較的均一な明るさにできる。使い所は奥行きのある景観で、日中シンクロなら直射の問題はさほどない。景観撮影で真上からの照明ができないか、限りなく難しいなか、撮影位置あたりからライティングして程よい奥行きに光が到達するのがありがたい。

あれこれ使える光(スポット状に均一な光をつくり周囲に暗めの領域があり、スポット的な効果を求めつつ暗めの領域を扱いやすくする矛盾の調整)にしたけれど、これは私にとってきれいな光に近づけたのであって、他の人には硬い、さらに光の均一性が汚い光かもしれない。また私自身にとっても、常に改造フレネルレンズを使う訳ではない。

Fumihiro Kato.  © 2018 –

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・スタジオ助手、写真家として活動の後、広告代理店に入社。 ・2000年代初頭の休止期間を除き写真家として活動。(本名名義のほかHiro.K名義他) ・広告代理店、広告制作会社勤務を経てフリー。 ・不二家CI、サントリークォータリー企画、取材 ・Life and Beuty SUNTORY MUSEUM OF ART 【サントリー美術館の軌跡と未来】、日野自動車東京モーターショー企業広告 武田薬品工業広告 ・アウトレットモール広告、各種イベント、TV放送宣材 ・MIT Museum 収蔵品撮影 他。 ・歌劇 Takarazuka revue ・月刊IJ創刊、編集企画、取材、雑誌連載、コラム、他。 ・長編小説「厨師流浪」(日本経済新聞社)で作家デビュー。「花開富貴」「電光の男」(文藝春秋)その他。 ・小説のほか、エッセイ等を執筆・発表。 ・獅子文六研究。 ・インタビュー & ポートレイト誌「月刊 IJ」を企画し英知出版より創刊。同誌の企画、編集、取材、執筆、エッセイに携わる。 ・「静謐なり人生展」 ・写真集「HUMIDITY」他
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