クリップオン・ストロボの光は汚い?

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死んだ太陽と形容されたこともあるストロボ(フラッシュ)だが、このように一括りにして貶すのは酷な話で、形状・形態により様々であるし使い方にも大いに関係している。ただ、クリップオン・ストロボは扱いが難しい。大型ストロボなら出力と関係なく可能なライティングが、クリップオン・ストロボでは不可能または満足いかないものになったりする。どこに原因があるのか考えてみると、発光部のサイズと形状、発光部の筐体に行き着くのだった。いまさらクリップオン・ストロボの形態を説明するまでもないが、手のひらサイズに満たない発光部の筐体に、小指より短くて細い発光管(チューブ)が収められていて、光の出口にフレネルレンズが固定されている。小さくて一直線のチューブが発光する光を、やたら広く拡散しないように、ノーコンピッチャーの球筋みたいにならないように、フレネルレンズがコントロールしている。フレネルレンズで効率をあげて光量を確保しているので、取り外せばGNはぐっと落ちるはずだ。こうした構造の一切合切が、クリップオン・ストロボの光を扱いにくく、あまり美しくないものにしている。

大型ストロボの発光部(ヘッド)とクリップオン・ストロボを比較してみたい。

大型ストロボのチューブは真空管状のものとリング状がある。これらはリフレクター通称お釜と呼ばれる集光フードようするに電灯の傘と組み合わさられたりする。電灯の傘とはいえリフレクターは曲者で、開口部の直径や深さによってかなり光の状態や質が変化する。チューブを小さな筐体に収めなければならない制約があるクリップオン・ストロボに対して、大型ストロボのヘッドは何につけのびのび大きいものが使える。電灯に傘を使えば、光の進行方向に円錐、直交する物体に円形に光を当てることができる。大型ストロボにリフレクターを使用したときも同じである。

対してクリップオン・ストロボは、小さくて細いチューブをこれまた狭い空間で発光させ、フレネルレンズの開口部は長方形なので、自ずと大型ストロボのヘッドとは配光パターンが異なる。

さらに光量豊富な大型ストロボには面光源をつくるための装置が様々にあり、装置もまた余裕を持ったサイズにできるメリットがある。余裕を持ったサイズに余裕を持った構造が実現できるため、かなり理想的な面光源をつくれる。電灯に傘だけの状態ですら、私たちが慣れ親しみ違和感がないことでも理解されるようにかなり理想的な配光が実現できる。なので、大型ストロボのヘッドだけ、リフレクターをつけただけでもクリップオン・ストロボより圧倒的に自然だ。むしろヘッドだけで発光させるほうが、下手に光の指向性がつかないため自然かもしれない。

クリップオン・ストロボをカメラに装着して、白い壁を広い画角で撮影し、ストロボからの光の状態をチェックしてもらいたい。機種によりばらつきはあるけれど、おおむね開口部の形のまま、かなり配光ムラのある光が撮影されるだろう。なおこのときカメラの感度設定はストロボ光の標準露光値のそれより低めにすると理解しやすい。

光量のムラはどのようなライトを使っても生じるのだが、変化は小さくなだらかであってほしいし、同心円状であってほしい。しかし、クリップオン・ストロボの配光パターンは長方形で、中心部から細い楕円形が長辺方向に伸びるものだったりする。あるいは、段付きの同心円で光が減衰しているかもしれない。これらがクリップオン・ストロボの扱いにくさ、光の汚さの原因だ。チューブを収めている筐体とフレネルレンズが影響している。

大型ストロボのヘッドに何も装着しないなら、光は球形に広がる。この球形のうち背後と横方向の光を正面に向けるのがリフレクターだ。ただしフレネルレンズはついていないから、リフレクターの開口部から先は円錐状に光が広がる。いずれも無理をしていないため、私たちが見慣れた光の状態である。そのかわり光量の減衰も見慣れたもので、効率が悪いとも言える。効率をクリップオン・ストロボと同じ手法で高めれば光は美しさを失う。

ソフトボックスやアンブレラはリフレクターの開口部より大きな光の面をつくるために用い、どちらもフレネルレンズを用いる類の無理をしていないため、効率は悪いが光の美しさを損ねることがない。こうしたヘッドから発する光に手を加える装置は、光をいじくる工程や構造が増すほど、私たちが日常的に熟知している自然光の在り方から遠ざかる。オパライト(ディッシュ)やスヌートなどだ。とはいえ、オパライトやスヌートも特異ではあるが自然さを目標につくられている。

クリップオン・ストロボの欠点ばかり指摘してきたが、片手で持てるコンパクトなサイズに小さな太陽が内蔵されているのだから画期的な製品だ。なんとか上手く使う方法を考えたほうがよいに決まっている。ところが、クリップオン・ストロボの発光部に装着する超小型のソフトボックス的なものは思うほど効果がない。もちろん素の状態より光源の面積は増えるけれど、私としては「うーん」だ。すぐれたグッズか無駄かは撮影に求めるもの次第だろう。したがって、ここから先に書くグッズやアイデアもまた、人によって使えたり使えなかったりする。

ストロボの発光面に拡散板を降ろしたり装着できるようになっているものがある。こうした拡散板は広角レンズの画角用に光を広く照射するためのものだ。自ずと光量は減る。では、拡散させることで直射で弊害となる光のどぎつさや黒々した陰が減るかというと、拡散板の構造次第で度合いは変わるが「なんとなく減る」けれど、そもそも発光面が小さいことに変わりはないので面光源と呼べるほどの光にはならない。拡散板は以前は乳白アクリ、現在はファインダースクリーンのスプリットイメージ部にあるような透明で小さなピラミッド状のプリズムの集合体のものがある。後者のほうが透過効率はよいだろう。しかし、どちらも面積が小さいのが難点だ。ただ、配光パターン、光量のムラを減らすのには多少役立つ。発光部に装着する超小型のソフトボックスとどちらがよいかは、やはり個々別々、用途次第か。

クリップオン・ストロボに比較的大き目のアタッチメントをつける図のような製品がある。

見た目が同じものはブランドが違っていても製造元はいっしょ。同様のものでクリップオン・ストロボを複数台装着できる形態など、最近は様々な趣向で製品が多様化している。図の製品はボーエンズマウントなので、ボーエンズマウントのソフトボックスや様々な装置が装着できるし、アンブレラの軸を固定するパーツもついている。これは私も重宝していて、買ったときおまけでGODOXのソフトボックスがついてきた。それなりに大きなソフトボックスなので効果はある。しかし、クリップオン・ストロボ側は大型用のヘッドより出力が小さいので、この点は欲求不満を感じる。GODOX AD200(200w)や同じAD360(360w)なら不満は解消される。ソフトボックスにクリップオン・ストロボの発光部を二つ入れられるなら、たぶん満足度があがるだろうけれど。

ソフトボックスとアンブレラに言えることとして、クリップオン・ストロボは発光量の少なさだけでなく、配光パターンが長方形かつばらつきがある点で不利な使い方にならざるを得ない。いや、アンブレラに当てるだけで格段と向上して文句など言っている場合ではないが、アンブレラは傘がほぼ円形に広がるのにストロボによる配光が長方形なので100%の効率と効果を引き出せない。複数台のクリップオン・ストロボを装着できる製品では、X字または△の頂点に発光部が配置されて大満足だ。なお、一台か複数か問わずクリップオン・ストロボの照射角は工夫すべきだ。ちなみに通常のアンブレラより小さなおもちゃの傘くらいの製品を私は所有していて、もちろん効果も小さいけれどクリップオン・ストロボ用に様々な場面で使っている。光の面積が小さいのでオパライト的ではあるけれど。

アンブレラがイケるのだから、バウンスもまた光の質の向上に大いに役立つ。レフに光を向けてもよいし、天井や壁でもよい。ディフェーザーに直射する手もあるけれど、このときは配光パターンのムラが反映されがちなので気をつけたい。

こうして使える光にする方策を挙げてきて思うのは、やはりクリップオン・ストロボは大光量のものを複数(2台くらい)は用意したほうがよいということだ。私はGODOX、GODOXとこれまでも連呼しているがメーカーの回し者ではないし、製品がダメな流れになったら見限るけれど、光量があるのに安価で購入しやすい製品であるのは重要だと思う。ストロボを2台買ったらレンズが1本買える金額になってしまうの痛い。効能効果がわかっていても、どうしたって頭を抱えてしまうだろう。

Fumihiro Kato.  © 2017 –

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・スタジオ助手、写真家として活動の後、広告代理店に入社。 ・2000年代初頭の休止期間を除き写真家として活動。(本名名義のほかHiro.K名義他) ・広告代理店、広告制作会社勤務を経てフリー。 ・不二家CI、サントリークォータリー企画、取材 ・Life and Beuty SUNTORY MUSEUM OF ART 【サントリー美術館の軌跡と未来】、日野自動車東京モーターショー企業広告 武田薬品工業広告 ・アウトレットモール広告、各種イベント、TV放送宣材 ・MIT Museum 収蔵品撮影 他。 ・歌劇 Takarazuka revue ・月刊IJ創刊、編集企画、取材、雑誌連載、コラム、他。 ・長編小説「厨師流浪」(日本経済新聞社)で作家デビュー。「花開富貴」「電光の男」(文藝春秋)その他。 ・小説のほか、エッセイ等を執筆・発表。 ・獅子文六研究。 ・インタビュー & ポートレイト誌「月刊 IJ」を企画し英知出版より創刊。同誌の企画、編集、取材、執筆、エッセイに携わる。 ・「静謐なり人生展」 ・写真集「HUMIDITY」他
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