Android OSと音響機器とカメラ

デジタル化されている点、つまりアナログから標本化されたデータを扱う点が写真同様興味深いため、これまでに何回か音楽の話をしてきた。ま、自分が勉強するためでもあって、音楽のデジタル化を学ぶと画像処理にフィードバックできそうなあれこれがいっぱいあるからだ。

で、だ。昨今あちこちで「ハイレゾが盛り上がってますぞ!」と大きな声を聞く。ほんとうだろうか。たぶん、嘘だ。

ハイレゾに興味を持った人なら、誰もがハイレゾ配信・販売サイトを訪ねたはずだ。私もそうだ。しかし、これらのショップが開設された当初からハイレゾ音源の種類が豊かにならないのである。遅々として、という表現がこれほどぴったりな例はない。Appleが同様の商売を始めた際に、日々刻々と扱いタイトル数が増加していったのと様相が異なっている。

CDと音楽が売れない時代にあってハイレゾは(たぶんに幻想を含むが)高付加価値かつ高価格の金の卵だったはずで、実際に録音からミキシング・マスタリングまでが高音質とするには「?」なタイトルがどんどん陳列棚に並んだのに、ハイレゾショップの品揃えは豊かと言い難い。録音からミキシング・マスタリングまでが高音質・高品質と言い難いものがハイレゾとして販売されているのだから、もっと高品質のタイトルがハイレゾ音源に参入する敷居は低いというか無いに等しい。つまり、過去の録音資産のうち高品質なものが少ないから陳列棚が埋まらないというのは間違いである。

この推察はデータを基にしたものではないから間違いが多数あるだろう。しかし、儲かるぞとした割に儲かっていないのは事実だろう。だがハイレゾ音源として売り出すと儲かる分野もあって、それはアニソンや70〜80年代の歌謡曲なのかもしれない。いまこのときCDだろうと圧縮音源だろうと盛んに購買していない層や、関連コレクションを網羅的に購入する層が音楽を買う構図だ。ともに趣味に対してお金をある程度自由に使える人たち、とも言える。なので、音源ショップの棚はこれらが目立つし、ハイレゾ再生可能なポータブル・プレイヤーのカタログにある画面表示例にアニソンのジャケットが映し出されていたりする。またポータブル・プレイヤーのレビューを読むと、アニソン派の人がとても多いことに気づく。いっぽう洋楽はなかなか思うように増えてくれない。過去に大ヒットしたアルバムがちらほらといった具合。音源のジャンルにムラがあるのだ。

私はディスクユニオンの店舗に行くのが好きなのだが、あの膨大なCDの密林こそが求めているものとの出会いを約束されたコンテンツの適切量と感じる。対して、ハイレゾショップに欲しい音源がほとんどないのは既に指摘した。これは私に限った話ではなかろう。これまで音楽を買ってきた人々は、遅々としてタイトルが増えないハイレゾショップに期待値がどんどん下がっているはずだ。どうして増えないか、だ。あれこれ制作側が動いても、動くのにかかる経費ほど儲からないからだ。制作側といってもマスターを倉庫から出してきてマスタリングしなおしたり、あるいはダビングする人だけでなく、宣伝から営業の人が動く経費ほど儲からないに違いない。よっぽどApple等の非ハイレゾショップのほうが儲かるのだ。またCDを実店舗や通販サイトで売るため努力したほうがなにかとよいのだ。つまり、ハイレゾは「盛り上がってますぞ!」というほどではない。CDの次にくるもの、CDを超える商機なら、他をほったらかしてもハイレゾに力を入れるというものだ。

さて最近、ハイレゾ再生可能なポータブル・プレイヤーのOSにAndroidが採用される例が出てきた。ある一社が動いているだけでなく、ちらほらと各社が動き始めた。これが意味するものは何か、だ。ポータブル・プレイヤーによっては、音質を重視するためAndroidを動作させる基盤と音楽を再生するための基盤を分離したり、高音質モードとしてAndroidの動作を隠蔽する機能を用意していたりする。これはAndroid OSが音楽の再生にとって何らメリットがないだけでなく悪影響すらあるということを意味している。ハイレゾ再生可能なポータブル・プレイヤーで高音質が売りなのに、Android OS採用というのは矛盾そのものだ。

なぜAndroidなのか。これは自社製のOSを次々アップデートしていくよりコストが削減できるからに他ならない。というか、そうとしか思えない。BluetoothやWi-Fiの機能は、自社製のOSでも運用できているのだし。音楽プレイヤーに地図とかカレンダーとかカメラとか付いているのがよいなら、iOSやAndroidのスマホでよいのだし。こう考えると、ハイレゾ再生可能なポータブル・プレイヤーの売れ行きが鈍化しているとするのが正しいように思える。だって、ハイレゾは音楽の質や音質の差を担保する概念や規格ではないから、CDと違いがわからない音源に絶望してる層が確実に存在しているし、元からの音楽のファンに応えるだけの品揃えがないし、ポータブルプレイヤーに10万円以上のお金を投じ続けるなんて普通の人に無理だ。これからはハイレゾだ! と20万円からするプレイヤーを買った翌々年に新型機に買い換えますか、なのだ。お金的にも、音質的にも、ハイレゾという概念と規格に対しても。普通なら、そのお金と労力を音源への投資に向けるけれど、そのハイレゾ音源が増えないという堂々巡りなのだ。

カメラの分野ではここまで顕著な動きはないが、こちらもモノが売れない時代に突入して久しい。つまり、カメラ関連の製品に大いにAndroidがOSとして採用される時代がくるのかもしれない。ポータブル・プレイヤーがそうであったように、写真の画像生成は独自のチップを使用するけれど機器のコントロールはAndroidみたいに。

Fumihiro Kato.  © 2017 –

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・スタジオ助手、写真家として活動の後、広告代理店に入社。 ・2000年代初頭の休止期間を除き写真家として活動。(本名名義のほかHiro.K名義他) ・広告代理店、広告制作会社勤務を経てフリー。 ・不二家CI、サントリークォータリー企画、取材 ・Life and Beuty SUNTORY MUSEUM OF ART 【サントリー美術館の軌跡と未来】、日野自動車東京モーターショー企業広告 武田薬品工業広告 ・アウトレットモール広告、各種イベント、TV放送宣材 ・MIT Museum 収蔵品撮影 他。 ・歌劇 Takarazuka revue ・月刊IJ創刊、編集企画、取材、雑誌連載、コラム、他。 ・長編小説「厨師流浪」(日本経済新聞社)で作家デビュー。「花開富貴」「電光の男」(文藝春秋)その他。 ・小説のほか、エッセイ等を執筆・発表。 ・獅子文六研究。 ・インタビュー & ポートレイト誌「月刊 IJ」を企画し英知出版より創刊。同誌の企画、編集、取材、執筆、エッセイに携わる。 ・「静謐なり人生展」 ・写真集「HUMIDITY」他
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