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デジタルカメラで唯一の面倒と言っても過言ではないのがセンサーの清掃だ。センサーが汚れていれば後々の現像作業で一手間かかるし、ダストの黒点を見るだけでげんなりする。では清掃しようとすると、これまたなかなか終わらない。しかも大切なセンサーを傷つけたくない気持ちがプレッシャーにもなる。手間取れば、それだけセンサーにダメージを与える可能性が増えるのだから、さっさと終わらせる方法を考えるべきだ。
以下は私の経験から得たセンサー清掃のコツだが、取り入れる場合は自己責任でお願いしたい。
1.道具だて
アルコールを入れ、適量をにじませるためのハンドラップ。シルボン紙。シルボン紙を巻きつけるスティック。LED式のランプ(小型の懐中電灯)。と、いったものが必要だ。
ここで工夫したいのがスティックで、私は以下のようなものを自作している。
元になるのは丸い棒状の割り箸で、これは通常の割り箸より細いものだ。割り箸と書いたが、割って一本にするものでも二本一組みで一膳になっているものでよい。ちなみに私が重宝しているのはナチュラルローソンで弁当などに付けてくるものだ。
この箸のうち一本の根元側(箸として食品をつまむ側の反対)を、マイナスドライバーをつくる要領で削る。図示したものは片面だけ削ってあるように見えるだろうが、表と裏二面を削りマイナスドライバー状にする。このとき先がドーム型になっている箸なら平らに整える。
これはセンサーの角までしっかりシルボン紙を届かせるため重要で、ドーム型を平らに整形するのはセンサー面にシルボン紙を効率よく密着させるためだ。
なお、シルボン紙の清掃に用いる面はザラつきない側だ。
2.作業手順
まずLEDライトでセンサー面をチェックする。肉眼で見えるようなダストは簡単に取れるのであまり深刻に考える必要はない。難しいのは、肉眼では見えないダストだ。ただ硬質なダストはセンサーの表面を傷つけかねず、大きなものは傷も大きくなり無視できない影響を与えるためチェックするのだ。そしてブロワーで全面に空気を吹き付け、ざっとダストを取り除く。なお微小な傷は、即深刻な影響を画像に与えるものではなく、気づかないままのケースがあるようだ。
ライトの角度を変えつつ、センサーをチェックする。センサーに光を当てると虹状の干渉が浮き上がるが、これによって正確に表面の状態が確認しづらい。このため虹状の干渉の様態を変える必要があるのだ。ライト付きスコープが製品化されているが、なかなか細部を確認しづらいものだ。もしこのような製品を持っているなら使用すればよいが必需品ではない。
次にシルボン紙をスティックに巻きつけ、巻きつけがほどけないよう小さく切ったパーマセルで固定する。固定に輪ゴムを使ってもよいが、次々とシルボン紙を取り替えるにはパーマセルのほうが楽だ。パーマセルはあらかじめ複数切って、机の端にでも仮止めしておくとよいだろう。
シルボン紙をスティックに巻きつける際、スティックの端からどの程度を穂先のように出すかが問題だ。この穂先の量については後述する。またシルボン紙は一枚巻くか二枚重ねで巻くか人それぞれ流儀があると思うが、私の基本は二枚使用だ。
二枚使用のメリットはスティックでシルボン紙を押し付けすぎないクッション性にあるが、デメリットはシルボン紙の厚さからセンサーの四隅までしっかり清掃が行き届かない可能性がある点だ。四角いセンサーを丸く拭く、といった状態になりかねない。このため状態を確認しながら、二枚重ねは適切ではないと感じたら一枚といった具合に変更している。
まず1回目は、やや多めの無水アルコールを含ませセンサー全体を中心部から蚊取り線香状に拭いていく。そしてアルコールが蒸発するのを待ち、蒸発後にムラが生じているか否かLEDライトでチェックする。ムラは、センサーに付着していた油膜のようなものが溶け出して形成される。このまま同様に、シルボン紙を交換し無水アルコールの量を減らしつつ2回目、3回目とムラがなくなるまで清掃する。この段階ではダストに関して考えなくてよい。一連の作業は、台所のこびりついた油汚れを洗剤を使って落とす感覚でやるとよいだろう。
ムラが拭き取れたら、カメラにレンズを装着し明るく照明した白い紙を至近距離から撮影する。このとき絞りは最小値にする。ぶれてもセンサーのダストとは関係ないので、ざっくり撮影すればよい。撮影したら背面液晶に画像を映し出し、拡大率を変え、拡大ポイントを動かしながらどこにダストがあるか確認する。前段階のシルボン紙の動きによって、大概は四隅近くにダストが寄っているだろう。
もし中央付近にダストがないなら、中心からではなくダスト近辺から蚊取り線香状に無水アルコールを含ませたシルボン紙で清掃する。四隅でシルボン紙を持ち上げる際は、垂直方向に軽くセンサーから離すようにする。ここでまた先ほどと同じ方法で撮影しチェックをする。ダストが取れている場合もあれば、相変わらずかもしれない。
ポイントは、無水アルコールで濡れたシルボン紙では効率よくダストを取りきれないという点だ。シルボン紙は繊維の間にダストを取り込むのであって、無水アルコールで濡れた状態で「拭き取る」ものでは(ぜったいではないが)ない。無水アルコールは溶剤兼潤滑材のように考えるべきである。したがって、アルコールを含ませて二、三回清掃してもダストが残っているなら次は乾拭きをする。
乾拭きは、通常シルボン紙を一枚使用する人であっても二枚重ねにしたい。こここまでの作業はシルボン紙の穂先を1mm程度にしていれば間違いないが、乾拭きは穂先を多めにする。モップを使って床を掃除する感じである。
こうして準備したスティックとシルボン紙の穂先でダストの位置を重点的に、やはり蚊取り線香状に乾拭きする。力を込めても意味がないので、撫でるように行う。スティックは押し付けず軽く動かし、シルボン紙の穂先にダストをからめとる。たぶんこれでしつこいダストも取れるはずだ。ダメだったら、もう一回無水アルコールを含ませた新しいシルボン紙で清掃し、試写し、乾拭きをする。
あとは適宜工夫すればよいのではなかろうか。
3.まとめ
A.油膜状のものを取り除き、同時にダストを浮かせる作業を第一段階とする。
B.ダストを最終的に取り除くには、軽く撫でるように乾拭きする。
この二工程に分けて作業する。
はたして乾拭きがメーカー推奨またはメーカーのサービスで行うものか私は知らない。したがって自己責任であるが、無水アルコールで湿った状態よりシルボン紙が「からめとる」能力はこちらのほうが上だ。最初から乾拭きは危険性が懸念されるが、前述の工程を踏まえればまず問題ない(と、これまでの清掃結果から考えられる)。
Fumihiro Kato. © 2017 –
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