デジタルくささに言及していた理由のひとつ

デジタルだから、フィルムだからと特別なものがなくなるくらい、カメラメーカーの開発担当者の方々は頑張っている。しかし自然界や人間の視覚と多少でも齟齬があれば、いずれの場合でも違和感が生じる。フィルムがとやかく言われないのは、写真というメディアがフィルムの特異性をも含めて銀塩粒子で描かれるものを基準にしているからだ。デジタルくささを消すのは、フィルムの描写に近づけるのではなく、人間の、私の視覚に近づけるためなのだ。また、たびたびこの問題について言及していたのは、他でもない新製品のカメラのRAWデータに思うところがあったからだ。

新製品とは Fuji のGFX 50S だ。

同機種が発売され、RAWデータがあちこちに出回っているのでもう書いてもよいだろう。開発β機ではないRAWデータをむにゃむにゃな方向からいただいてうーむと感じた。何が「うーむ」だったのか。かなり「撮って出し」のJPEGやTIFFに近い気がしたのだ。これはこれで撮影目的と合致するならよいカメラだろう。ただ私はちょっと考えさせていただくほかないというか、研究しないといままで通りのRAW現像ができないかもしれない「うーむ」だ。

なぜRAWデータから現像するのかとなれば、自分の意思を写真に反映させるためだ。撮影者それぞに自分にとっての理想像があり、GFX 50S が吐き出すデータが理想像への近道になるかもしれない。ただ私にとっては、語弊があるかもしれないけれどポジフィルムで撮影したようなデータは扱いにくいのだ。これはガンマ値を応答性のヌルいカーブにしてやればだいたい解決する。しかし、ヌルいカーブにしてさらにコントラストを最弱ちかくにも変更するケースが作品づくりでは多々ある私としては、さらになんらかの手を入れないと望み通りになってくれない場合がある。これはちょっと、アレだ。それと、輪郭強調はしていないと思うのだが、輝度、明度の差が大きな部分の境界に輝度や明度が反転する現象が存在する。これはデジタルカメラのデータなら大なり小なり存在するわけで、特に GFX 50S のRAWデータに顕著ではないし、ライカ判フルサイズと比較しても大々的でなく、まあよいほうだ。なのだけれど、これは解像感がよいせいで発生しているのかもしれないが気になった。うーん、輪郭の件はさらに研究しなくてはならない現状で、生っぽいRAWデータを現像時にメリハリをつけるのと、最初からバキっとして縁取りが生じているものをナダメルのと、いずれが最終的に手間いらず・結果良しになるのか断定できない。

で、GFX 50S のRAWファイルの拡張子はRAFだ。私の手元にある現像ソフトは、Capture One、Light Room、DxO OpticProで、このうちもっとも信頼し使い慣れた Capture One では中判の競合ということで GFX 50S のファイル形式はサポートされないだろう。そこでLight Roomを使いDNG形式でRAW書き出しを行なってみた。結果は、ライカ判デジタルカメラのてRAWデータから書き出したDNGは従来通りファイルが展開できるが、GFX 50S のデータをDNG形式にしたものは認識すらしない。ああー、ExifにあるFujiの社名、機種名などを検知しているのかと。そこで、強引にRAWデータからこれらを抹消したが、いまのところ Capture One ではファイルを開けていない。私が何かチョンボした可能性もあるので、どなたか試してみていただきたい。Light Room は対応してるみたい。

Capture One でライカ判までのカメラRAWが調整・編集できるのは、Phase One の使用者で他社製のライカ判までのカメラを使用している人がいるのが普通なのと、Capture One を呼び水にして Phase One を買ってもらおうとしているからだ。したがって、GFX 50S のデータが展開できないことに文句をつけるなんてことはできない。あたりまえ、なのだ。となれば、Fuji純正のRAW現像ソフトか他社製ソフトが対応するのを待てばよい。一般論としてはその通りなのだけれど、私としては Capture One が使えないのは(あたりまえだとしても)面倒臭い。まあここは「私」に限っての話として。

Fujiはフィルムメーカーとして、どうしても「最初から完成形」に近いデータにしないと気が済まないというかプライドが許さないのかもしれない。あるいは GFX 50S を誰に売りたいかとなったとき、「最初から完成形」を期待している層をどうしても外せなかったのかもしれない。しかし、RAWデータはなるべく「生」または「手付かず」の状態で手に入れたい者として、ここまでフジ的にしなくてもと感じるのだ。もちろんこういった特徴を消してから現像作業に入ればよいのだが、それは……(繰り返し書く必要はないよね)。

たぶん GFX 50S のRAWデータにちょっとした違和感を覚えたり、現像ソフトのあれこれをぐちゃぐちゃ言っている私は、このデータを扱いきれていないということ。また、本当に GFX 50S が他のカメラより傑出していてどうしても使わざるを得ないなら、徹夜してでもデータのハンドリングを研究する、ということ。だから GFX 50S が悪いなんて私は思ってもいないし、むしろ(私と運命の出会いがなかったとしても)頑張ってもらいたい、売れてもらいたいと考えている。これはネガティブな話になった帳尻合わせにフォーローしているのではなく本音だ。ミラーレスにするなら、もっと薄く(というより手にしたときより小さく感じるように)できなかったのかと思うけれど、これだって逆の考えを抱く人も多かろう。

「超えられない壁」って大事だと思うのだ。私は前々から「高画素化したライカ判デジタル」と「デジタル中判」の差はフィルム時代の差ほどではないと書いてきたし言ってきた。重箱の隅をつつくようなテストをすれば差が出るとしても、この差を出し殻からもエキスを搾り尽くすように使えるケース、使える媒体がどれほどあるかなのだ。もちろんエキスを搾り尽くす人にとっては他に代え難い道具である。「超えられない壁」とは、こういうもので、こういうことだ。何を基準にするのか、求めるものは何か。で、 GFX 50S 、 GFX 50S のRAWデータはどうかと言われたら、私は「保留」。保留の理由は……(繰り返し書く必要はないよね)。でも運命の出会いがあったなら他を捨てて飛びつきますよ。なんにせよアスペクト比は3:2や5:7や16:9が作品づくりでは好みなのでトリミングしちゃうけど。うーん、もっと研究すべきなのかな。

Fumihiro Kato.  © 2017 –

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Profile

F.Hiro.K
加藤(文)文宏 / Fumihiro Bun Kato a.k.a Hiro.K
写真家・作家 / Photographer Author
・北海道北見市生まれ。
・大学卒業時までに詩集「無題あるいはサラバ」、同「Cadenza」発表(共に絶版、在庫なし。「Cafebza」別装丁私家版のみあり)。
・スタジオ助手、写真家として活動の後、広告代理店に入社。
・2000年代初頭の休止期間を除き写真家として活動。(本名名義のほかHiro.K名義他)
・広告代理店、広告制作会社勤務を経てフリー。
・不二家CI、サントリークォータリー企画・取材、Life and Beuty SUNTORY MUSEUM OF ART 【サントリー美術館の軌跡と未来】、日野自動車東京モーターショー企業広告、武田薬品工業広告、他。アウトレットモール広告、各種イベント、TV放送宣材、MIT Museum 収蔵品撮影 他。
月刊IJ創刊、編集企画、取材、雑誌連載、コラム、他。
・長編小説「厨師流浪」で作家デビュー。「花開富貴」「電光の男」他、小説のほか、エッセイ等を執筆・発表。
・獅子文六研究。
・インタビュー & ポートレイト誌「月刊 IJ」を企画し英知出版より創刊。同誌の企画、編集、取材、執筆、エッセイに携わる。
・各メディアにおけるスチル撮影。
・オリジナルプリントの製作、販売。
・JSAHP正会員
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