ブローニーフィルムの作法について

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あれこれWEBを検索していると「中判ナニナニの取り扱い説明書を売ります」とオークションサイトが引っかかったりする。大概の場合、中判カメラの構造であるとか使い方は機種が違っても似ているので数千円払って取説を買うほどではない気もするけれど、はじめてフィルム中判を購入して戸惑うこともあるだろうしなんだかなーという気にさせられる。なのだが需要があれば価格がつき売り物となるのは自然なことで、取説にも著作権があってやたらに無料で公開しにくいのだから仕方ない。なお最近はYouTubeに中古屋さんが操作方法のビデオをアップロードしているので探してみるとよいだろう。

さて、中判カメラは120または220と番号で呼ばれるブロニーフィルムを使って撮影するけれど、デジタルカメラがあたりまえの現代ではフィルムの扱いかたからして戸惑う人が多くて当然だ。そんなこんな話を今日はしようと思う。

ライカ判に使用する135フィルムは遮光用の金属の筒(パトローネ)に入っている。いっぽう120または220は軸にフィルムが巻かれたままの姿をしている。ほんと原始的な構造だ。135ではシャッターを切るごとフィルムを巻き上げ、所定の枚数を撮影し終わったときフィルムをパトローネに巻き戻す。120または220では所定の枚数を撮影し終えたら、残っている部分を巻き取り側にすべて巻いて撮影を終える。つまりフィルムの流れが一方通行なのだ。で、巻き取ったフィルムを軸とともにカメラから外し、使ったフィルムの軸がもう片側に残っているのでこれを巻き取り側に移す。要するに、カメラを買ったときの軸は現像時にゴミ箱行きになり、フィルムを買って装填するごと軸が更新される。

では、120と220フィルムそのものについて説明する。

120_220

まず120だ。このフィルムには裏紙というものがある。裏紙はフィルムと共巻きにされている。ブローニーフィルムはパトローネのような便利な構造を持たないため紙で遮光しているのだ。また裏紙には6×9、6×7、6×6、6×4.5のそれぞれの巻き上げ位置に相当する箇所に1、2、3とコマ数が印刷されている。フィルムカウンターがなかった時代、裏蓋に赤いガラス(のちにプラ)の窓がありここに裏紙のコマ数表示が現れるようになっていたのだ。これはモノクロフィルムが赤側の波長域に感度が低い特性を利用したもので、もし骨董的な赤窓式のカメラにカラーフィルムを装填すると漏れ入った光によって赤かぶりする。こういった機種で、それでもカラーフィルムを使いたい場合はパーマセルなどで窓に蓋をし、巻き上げの瞬間だけ蓋をあけるようにするとよいだろう。またモノクロフィルムがパンクロマチック化して全波長域にある程度満遍なく感度を持つようになっているので、低感度フィルム以外は同様にしたほうが安全だと思う。私が子供時代に使っていたトイカメラではiso100くらいなら問題はなかった。

やがてフィルムカウンターを装備したカメラが増えると、裏紙に番号なんていらないし、だったらフィルムの先から尻尾まで裏紙で遮光する必要なんてないだろとなった。遮光が必要なのは、明るい環境でフィルムを装填するときと巻き取り終わって裏蓋を開けるときだけだからだ。こういったことから、フィルムがはじまる前とフィルムが終わったあとの尻尾にだけ遮光紙がついた220フィルムが登場した。裏紙を共巻きしなくて済み、紙の厚さだけフィルムを多く巻けるので120の倍の枚数を撮影可能になった。さらにフィルムの裏の余計な紙がなくなったおかげで、感光面の平面性を保ちやすくなった。

それでも135より面積がある120、220はフィルムの平面性を維持するのがなかなに難しい。話をさらにややこしくしているのはライカ判のようにストレートにフィルムを巻き取る機種がある一方で、フィルムをΩ型に巻き取る機種があることだ。Ω型に巻き取った場合、フィルムの装填から撮影終了まで一気に仕事が流れれば影響はすくないものの、撮影が中断し時間が経つとΩ型の巻き癖がフィルムに残る。まさにΩのようになり、フィルムの平面性が崩れピンボケ箇所が発生する。

たぶん中判を買って戸惑うところがあるとすると、このΩ型巻きのフィルム装填ではないだろうか。

rollfilm

 

ハッセルをはじめ箱型(マクワウリ型と俗称される)の中判カメラはΩ巻を採用していて、多少構造による違いはあったとしてもだいたい似たり寄ったりの方法でフィルムを装填する。このとき裏紙に矢印で「スタートマーク」が示されているので、フィルム枠などの印と矢印を合わせる。あとは裏蓋またはフィルムバックを閉じて、カメラ側の巻き上げノブ等をぐるぐるやって止まる位置で1コマめになる。ストレート巻きの機種では、フィルムレール(フィルムが接する場所に金属光沢を残したレール状のものがある)に位置決めのマーク同等の形状が施されるている。

撮影が終わってカメラまたはフィルムバックから取り出した120、220フィルムは耳を折り込んで、切手のようなノリつきのベロがあるので舐めて閉じる。で、これでよいのだけどパトローネのように遮光性が高い構造ではないのでフィルムが入っていた内包装にもう一度戻して*箱の開け口を閉じておくのがよい。というか、裸のままパトローネ感覚で放置するとほぼ露光してしまう。(*:ま、開封後の内包装に戻すのはおまじない程度しか効用がないかもしれないけれど、しないよりマシだ)

中判での撮影は裏紙問題、Ω巻きの問題、遮光性の問題があるので、とっとと撮影してとっと現像、コレが鉄則だろう。

次にフィルムからすこしだけ機材寄りの話をしよう。

Ω型にフィルムを巻き上げる機種ではフィルムバックを交換できるものがある。フィルムバックのレンズ側は引き蓋と呼ばれる金属の板で遮光され、引き蓋は撮影時に取り外す。仕事で中判カメラをせっせと使用していると、保管時のバックはいつも引き蓋が入った状態だ(というか、もちろん撮影時は外すけど)。なのでとんと気づかなかったのだけれど、「引き蓋をしたままでは、引き蓋とバックとの間の遮光材にクセがついて遮光性が落ちる」という意見があり「なるほど」と思った。んー、あまり神経質になるのもなんだろうけれど数ヶ月以上放置するような場合は抜いておいたほうがよいのかもしれない。このあたりは中古、骨董カメラに詳しいかたにお聞きしたいところだ。

 

Fumihiro Kato.  © 2016 –

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・スタジオ助手、写真家として活動の後、広告代理店に入社。 ・2000年代初頭の休止期間を除き写真家として活動。(本名名義のほかHiro.K名義他) ・広告代理店、広告制作会社勤務を経てフリー。 ・不二家CI、サントリークォータリー企画、取材 ・Life and Beuty SUNTORY MUSEUM OF ART 【サントリー美術館の軌跡と未来】、日野自動車東京モーターショー企業広告 武田薬品工業広告 ・アウトレットモール広告、各種イベント、TV放送宣材 ・MIT Museum 収蔵品撮影 他。 ・歌劇 Takarazuka revue ・月刊IJ創刊、編集企画、取材、雑誌連載、コラム、他。 ・長編小説「厨師流浪」(日本経済新聞社)で作家デビュー。「花開富貴」「電光の男」(文藝春秋)その他。 ・小説のほか、エッセイ等を執筆・発表。 ・獅子文六研究。 ・インタビュー & ポートレイト誌「月刊 IJ」を企画し英知出版より創刊。同誌の企画、編集、取材、執筆、エッセイに携わる。 ・「静謐なり人生展」 ・写真集「HUMIDITY」他
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