「Standard line up」はレンズ購入に困ったとき悟ったもの

・必要最低限のレンズ、必須となるレンズ
・1本なら、3本なら、と限定したレンズ選択
・手持ちレンズの焦点距離を拡張する際の合理的選択
を「Standard line up」として別サイトで紹介した。そちらの記事にもさらりと書いたが、これはお金がなくてレンズは買えないが仕事は欲しいとのたうち回ったうえでの悟り(笑い)のようなものだ。

デジタルから写真をはじめた人にとって中判は、手が届かない別世界のフォーマットかもしれない。だがフィルムを用いて撮影していた時代は、中判以上でないと印刷に耐えられない状況があり、ライカ判だけと割り切れる分野は限られていたのだ。

フィルムで中判でというとハッセルを思い浮かべるかもしれないが、ツァイスのレンズに味わいがあるのは事実だし、コンパクトにシステムがまとまっているのもその通りなのだが、故障率、コスパ、結果的にトリミングされる6×6判といった不都合が存在した。ここでセミ判645か6×7かとなるが、私は6×7を選びマミヤのユーザーとなった。ああこれも新品では買えなかったので中古だったな、と。あとポラを切らなくても不都合がないときはマミヤのC330(二眼レフ)も使用した。これは新品で買える価格だったし、1980年代ですら遅れたシステムではあったが、なかなか便利なカメラで、さらに人馬一体感のような使い心地のよさがあった。

新品で6×7のシステムを揃えられなかったくらいだから、とうぜんレンズをあれこれ買うなんて夢のまた夢だった。当時はペンタックス67のほうが安価であったと思うが、ポラ必須となると専用ボディを用意しなければならないペンタックスは除外せざるを得なかったのだ。またマミヤRB、RZの系譜は蛇腹式レンズ繰り出しが特徴で、いずれのレンズであってもどんどん寄れる(C330もそうだね)。つまりより少ないレンズで守備範囲を広くできたのだ。

ただいくら1本のレンズの守備範囲が広いといっても、標準レンズだけでなにもかも撮影する訳にはいかない。そこで、「Standard line up」なのだ。

Standard-lineup

「Standard line up」の考え方では「縦構図」と「横構図」の関係を重視しているが、これはRB、RZのフィルムフォルダーが縦横にくるりと回る点から思いついた。RB、RZどちらも三脚に据えて撮影するのがデフォルトだ。さらに巨大なボディだ。雲台で縦横を切り替えるのは合理的でないためフィルムフォルダーで縦横を切り替え、このときファインダーの表示も同調する。

これをライカ判に当てはめた別記事を引用する。

50mmを使用していて縦構図にしたい場合、構図の適切化だけでなく、画角を狭くしたい欲求が心理の根底にあるケースが存在する。50mmで縦構図にしたとき、横構図の垂直画角が水平画角となり27°だが、これは85mmの水平画角とほぼ等しい。
85mmには85mmの画角の必然性があり無用なものではないが、50mmでワーキングディスタンスを詰めたり、縦構図で対応できる可能性もある。

85mmで得られる画角は50mmの画角から情報を整理し、そぎ落とし、主題を引き立てたいときの画角と考えられる。

対して100・105mmとなると、85mmにはない遠近感の圧縮効果が現れはじめ、50mmと85mm以上にワーキングディスタンスが遠くなる。つまり50mmとの差が明確になる領域に入るのだ。

次に広角側への拡張を考えたい。
先に35mmの画角は人間の生理感覚に近いが、遠近感の誇張がみられオールマイティーに使いにくいと指摘した。35mmの画角で広々とした空間を中距離から無限遠にピントを置いて撮影する場合は、さほど遠近感の誇張は問題とならない。しかし近距離にピントを置いた場合、中景、遠景との物体の大きさの比率が気になりはじめる。

ただ50mmで画角が狭いと感じ35mmにレンズを交換しても視界が広がる度合いがすくない。50mmの対角画角を垂直画角とする28mmが、50mmと85mmの関係と相似しており、さらに準広角では得られない遠近感の誇張が明確にはじまる焦点距離と言える。

50mmと85mmでは、50mmで代替できる可能性と、85mmでは遠近感の圧縮効果が薄い点を挙げ、最小構成・最大効果の望遠側を100・105mmとした。28mmの場合、画角と遠近感の誇張のバランスが50mm、100・105mmと相性がよく、明確な描写の差を生み出せる。

では24mmはどうだろうか。
28mmの画角は、人間が漠然と空間を認知する際の35mmの画角より広いが、認知の周辺部=見えているが集中できない広さまでカバーしている。24mmとなると、見えているが集中できない広さを超え、見えていない、雰囲気だけ感じる領域まで画角に入る。
これはこれで好みの問題であるが、最小構成・最大効果を考えるとき、広角くささを消したい場合もあり、28mmは35mmに近い撮影も可能となる。

28mm、50mm、100・105mmの3本のレンズの画角は中判にも適応される。中判の標準レンズは70〜80mm程度でライカ判換算にすると40数mm〜それ以上であるので、これに順次広角側、望遠側に拡張すればライカ判と同等の効果が得られる。
もちろん人それぞれ、さらに広角側、望遠側に拡張しているが、まずこの画角があればほとんどの仕事はこなせる。

「まずこの画角があればほとんどの仕事はこなせる」、ここに当時の私の生活と仕事がにじみ出ているのだ(嗚呼!)。

 

Fumihiro Kato.  © 2016-

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Profile

F.Hiro.K
加藤(文)文宏 / Fumihiro Bun Kato a.k.a Hiro.K
写真家・作家 / Photographer Author
・北海道北見市生まれ。
・大学卒業時までに詩集「無題あるいはサラバ」、同「Cadenza」発表(共に絶版、在庫なし。「Cafebza」別装丁私家版のみあり)。
・スタジオ助手、写真家として活動の後、広告代理店に入社。
・2000年代初頭の休止期間を除き写真家として活動。(本名名義のほかHiro.K名義他)
・広告代理店、広告制作会社勤務を経てフリー。
・不二家CI、サントリークォータリー企画・取材、Life and Beuty SUNTORY MUSEUM OF ART 【サントリー美術館の軌跡と未来】、日野自動車東京モーターショー企業広告、武田薬品工業広告、他。アウトレットモール広告、各種イベント、TV放送宣材、MIT Museum 収蔵品撮影 他。
月刊IJ創刊、編集企画、取材、雑誌連載、コラム、他。
・長編小説「厨師流浪」で作家デビュー。「花開富貴」「電光の男」他、小説のほか、エッセイ等を執筆・発表。
・獅子文六研究。
・インタビュー & ポートレイト誌「月刊 IJ」を企画し英知出版より創刊。同誌の企画、編集、取材、執筆、エッセイに携わる。
・各メディアにおけるスチル撮影。
・オリジナルプリントの製作、販売。
・JSAHP正会員
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