Luminar 3、4は現像環境としてどうなのか?

(この記事は広告ではないし、企業からソフトの提供を受けて書くものでもないので感じるままを率直に表現している)

Luminar は現像の自動化を推し進め、AIに最適解を導き出させる現像ソフトだ。Luminar 3では画像全体または背景のトーン描画を最適にするAccent AIフィルター、AIスカイエンハンサーが搭載されていてスライダーで効果を増減できるし、Luminar 4では空を別ものに描き変えたり光線状態をまったく別物にすることまでできるようになった。

現像ソフトにおける[自動化]は様々なソフトで様々なコンセプトのもと実装されていて、Luminar 3Accent AIフィルターAIスカイエンハンサーのようなものもあれば、DxO PhotoLabのようにレンズやカメラのプロファイルをもとにネガティブな要素を理想化するもの、物体の形状を読み取って画像の傾きやパースの歪みを適切化するものがある。

DxO PhotoLabを例に挙げたことでわかると思うが、いままで現像ソフトの自動化と言えばDxO PhotoLabが代表的なソフトであったし同ソフトは自動化の筆頭株だった。そしてレンズやカメラのプロファイルを使って理想化する手法だけでも劇的な効果があった。

レンズやカメラのプロファイルとは試写をして解像の特性、歪み、周辺減光、色の特性、ボケの特性などあらゆる要素をプロファイル化したもので、これをもとにDxO PhotoLabが理想とする画像をつくりあげる。そして理想化とは、あくまでも同社が理想とする像であってこれではレンズやカメラ独自の個性が消えるか薄れるのではないかという批判もある。

またレンズ、カメラ、これらの組み合わせごとプロファイル化するには資金力と労力が必要で、日々誕生する新製品に常に対応し続けないとならない。DxO PhotoLabではレンズ交換式カメラだけでなくスマートフォンのカメラにも対応しているので、とてつもない労力のもと実装されている機能なのだ。

Luminar 3、4が推し進める自動化は、レンズやカメラの弱点を理想的なものへ矯正するタイプではない。

では、どのようなタイプなのか。

背景の見た目をもっと単純化できないだろうか、もっと劇的な背景にならないだろうか、被写体と背景ともに最適な表現にならないだろうか……などなど感じたことはないだろうか。写真をとくに勉強していなくても過去の名作やプロフェッショナルの作品からどこかで影響を受けて写真に対しての価値観がかたちづくられているはずで、こうした理想と撮影した写真との間にギャップが生じているのだ。

WEBで見た写真、写真集で見た写真、映画で見た劇的なシーンなどを自分も再現したいと思う気持ちだ。

こうした理想の表現は、誰かが撮影時にロケ場所、天候、時刻、露光値などを最適化させ、現像時にトーンや色彩などを最適化した結果得られたものだ。したがってLuminar 3、4がなくても表現できるし、Luminar 3、4を使わず表現された写真(または映画のシーン)が人々に憧れを与えている。

ところが、ロケ場所、天候、時刻、露光値の最適化はなかなか難しいし、どうやって現像したらトーンや色彩などを最適化できるか、自分の思いのままコントロールできるかわからない人だっている。

これまでもハイダイナミックレンジ効果、クラリティー(明瞭度)、細部のコントラストを強めて構成される要素を引き立てる機能が様々な名称でRAW現像ソフトに実装され、ほとんどすべてのソフトで色調や色温度、色被りがコントロールできた。しかし使い方がわからない、個別の機能の意味と操作がわかっても特定の見た目にするにはどうやって使いこなしたらよいかわからない人がいたのだ。

こうした人々に「なにかやりたかったら、とにかくスライダーを動かしてごらん」とAIの機能を提供しているのがLuminar 3、4だ。

AIなのだから機械学習の成果をもとに推論、問題解決など知的行動を人間に代わってコンピュータが行う。Luminar では、どこが対象とされ変化を与えたり描き変えたりする領域か(マスクまたは領域指定、抜きあわせ)、この領域と領域以外へなにをどのように影響を与えるか推論して解決する。

DxO PhotoLabなどプロファイルをもとに理想的画像へ矯正するタイプと違い、現代の写真表現で一般的だったり人目をひく人気があったりする画像の特徴をソフトウエアが人間に代わって実現する。

「ほら、空をもっとこうするとドラマチックだろ」といまどきの人気写真的ティストにしてくれたりするのである。

Luminar 3はごく普通のRAW現像ソフトに、こうしたドラマチックで明瞭明快な見た目の像をつくるAI機能が実装されたソフトと考えてよい。

Luminar 4はさらに踏み込んで、いらないものは消すし、「ドラマチックな空とは、あなたが撮影したような雲や光線状態ではないから、もっといいものに置き換えますよ」とまったく別物を描画してくれる。

「もとの写真の光線はイマイチだけど、こうするとイケてる」「なんだったら、あり得ないものを加えてみよう」と提案してくれる。

このLuminar 4が実現する加工は、いままでなら現像後にPhotoahopなどの画像加工・編集ソフトで手を加えていたものだ。また画像加工・編集ソフトで手を加えると作業する人の熟練度やセンスが問われる。消しの自然さ、置き換えの自然さ、抜きあわせの自然さ、これらの技術だけでなくセンスある仕上がりになるか難しいものがあった。

多くの人にとって画像加工はハードルが高かったし、「もっといいものに置き換える」には理想的な状態にある別の画像を素材として準備する必要もあった。この二つの関門によって、ほとんどの人が諦めていた加工がLuminar 4が自動的に行ってくれるのである。

Luminar 4の仕上がりを試してみたが、他のサイトが検証したりLuminarが提供する例を示しているように完璧と言ってよいものだった。熟練した画像加工職人が仕上げた画像以上のものさえあるかもしれない。

さて、ここまでがLuminar 3、4の概要だ。

では、現在永久無料使用できるLuminar 3と現在売り出し中のLuminar 4はどのような人に向いているのか、そして使えるソフトなのか、現像環境としてどうなのかである。

大前提として、写真の個性あるいは無個性を自分が細部まで管理して作り上げて行くタイプの私がレビューしている点を理解して意図を読み取ってほしい。

このような私は微に入り細に入り画像の各要素をコントロールできるCapture Oneをメインの現像環境にしている。個性は必要なく、同じトーンの画像を出力したいときはDxO PhotoLabに現像を任せることもある。つまりLuminarが目指すものと、私が必要とするものは完全に一致していない。

Luminar 3、4は現代の現像ソフトに不可欠な機能をちゃんと満たしているので、露光量、コントラスト、色調と彩度、ハイダイナミックレンジ、トーンカーブなどをコントロールできる。

Luminar 3においてAIを押し出している機能は前述のものに限られ、たしかに劇的ではあるけれどこれまで他のソフトが明瞭度やかすみの除去などと名付けていた機能に+αの効果があるものなので特に意識することなく使いこなしたり、使わず無視することだってできる。

Luminar 4になると、前述のようにPhotoahopなどの画像加工・編集ソフトで手を加えていた(大工事していた)作業がソフトまかせにできる。この記事を読んでいる人は、既に他のサイトで事例を見てのうえだろうが空の置き換えなど「写真がまったくの別物」になる。

Luminar 4の機能が実現するものは、いままで慣れ親しんできた機能に+αの違いがあるLuminar 3の効果と同じではない。特に意識することなく使える類ではなく、「がっつり変えてやる」目的で「写真をまったくの別物」にする機能だ。

Luminar 3は、自動化と正反対を志向している私にとっては[どこにでもある現像ソフト]に見える。たとえば現像ソフトの代表格Adobe LRのクラシックなどとカテゴリーは同じにしてもよいように思う。

UIが好みか、慣れるまで使って手なづける余裕があるか次第で誰が選択しても大失敗にはならないだろう。しかもLuminar 4が出たので旧版のLuminar 3は無料でダウンロードしてアクティベートできる。これから現像ソフトをいろいろ試したい人には、とっかかりのソフトにしても変な癖がついたりすることもない。

私は研究用にダウンロードしたけれど、自動化で省力化したいポイントがまったくちがうので、何か新たな気づきがないかぎりテスト用としか使用しない。

Luminar 4はどうか。

Luminarは買い切りソフトであるし価格も安い。このため導入までのハードルはとても低い。

基本形はLuminar 3から継承しているので、無料でLuminar 3を使用してみて気に入ったら進化したAI機能を使う目的でLuminar 4を買うか判断すればよい。

ただ「がっつり変えてやる」目的で「写真をまったくの別物」にする機能をどう考えるかだ。今後のバージョンアップで、さらに様々ものを置き換えたり、自然に修復するのみならず存在しないものへ置き換える機能が充実するだろう。

ただこうした[空を別物にする機能]だけみても、写真とは何か自問自答する人がいるはずだ。

Photoahopなどの画像加工・編集ソフトが二十年以上前から存在するのだし、「がっつり変えた」写真、画像中のなにかを存在しないものへ置き換えた写真があってもよいと私は思っている。これをゴミ取りや傷取りなど消極的利用にとどめず、写真の主題にかかわる大工事で使ってもよいという考えだ。

しかし、DxO PhotoLabのようにレンズやカメラ固有のネガティブ要素を矯正するのとは意味が違うから認めたくないとか、もやもやした気持ちが残るという人がいて当然だろう。

「空の雲がもうすこしこうだったらよかった」と思い、Luminar 4のAIに空を提案させてまったく別の空(または光線状況)を描画させるのをヨシとするかダメとするか、もやもやするか人それぞれということだ。

職業的写真家がロケ仕事を行って、彼だけでなくアートディレクターやクライアントから「あの日は天候がイマイチでしたね。どうにかならないかな」となったとき、空や光線状況やらをLuminar 4で別物にできるとしたら朗報である。なぜなら再ロケの経費はかからないし、職人さんに依頼して画像を加工してもらう必要がないし、関係者が理想とする状況を全員で確認しつつ表現の程度を決定できるのだ。

なんだったら一回の短時間ロケで夏・冬バージョン、朝・夕刻バージョンなど複数のバリエーションをつくることができるかもしれない。予算不足、ディレクションの失敗、カット数不足などをリカバリーする方法だけでなく、撮影から発表までの計画ががらっと変わる可能性まである。

これらは広告や出版を意識した想定だが、ウエディングフォトのような分野では撮影日程が縛られるだろうから同様に有効なはずだ。

自分の作品では自分の写真観や写真の定義に反するからLuminar 4のAIによる[そのとき、その場になかったものを描画して置き換える機能」に否定的であっても、仕事ではいざというときのため使いたい人もいるかもしれない。

Luminar 4とは、こういう現像ソフトだ。

Luminar 4のAIが描画するものは、(奇妙な素材を使わなければ)かなり自然であるし元の画像との馴染みも悪くない。大概はPhotoshopで手作業で加工するよりよっぽどいいし、あなたが加工職人でないならあきらかにAIまかせのほうが見る人を騙せる。

でもAIの仕事に満足できない人もいるだろうと感じた。

DxO PhotoLabがプロファイルをもとに理想の写真を仕上げるのを、自分の理想と違うと感じる人がいるのと同じだ。AIが学習したダイナミックな空、きれいな空、よい空、よい光線状態などといったものが鼻についてきたり、どれだけ選択して調整しても自分の心情とはやはりずれていると感じるケースだ。

私はあれこれ試してみて、この点から常用向きとして勧められないと感じた。

これは、写真に存在しなかったものを加えたり置き換える加工をヨシとするかダメとするかの価値観と別ものである。

なお描き変えではなく、現像仕様を何パターンも示してシミュレーションする機能は他のソフトにもあるし取り立てて騒ぐほどでもないと思う。

Luminar 4は簡単・ワンタッチにAI任せで理想的な見た目の写真を創造できるソフトであると宣伝されている。こうしたキャンペーンから画像加工にハードルの高さを感じている素人向けの印象を受けるが、趣味で写真撮影をしている人やエントリー層が飛びつくと案外早く機能に飽きがくるかもしれない。

空を描き変えたり、光線状況を変えるリカバリーがやがてお遊び、いたずらになりかねない。劇的で完璧な馴染み具合だからこそ、いつの間にか「何のため撮影して、何を表現しようとしているのか」見失いやすい。昼を夕焼けにしたり、劇的な雲にしたり、オーロラを光らせたりする必要があるのか、あったとしたら頻度はどのくらいなのか。

あなたが家族の写真を撮影して、空の時刻を変えたり、夜景にオーロラを加えたとき喜んでもらえたり笑ってもらえるのは初回だけかもしれない。初回だって「変なことしないで」と言われるかもしれない。この家族の声が、写真鑑賞者の冷静な視点であるのを忘れてはならない。

だから素人用より、もっと巧妙かつ微妙に描き変えたいプロの道具としての可能性を感じる。どのようなシーンで使えそうかは前述の通りだ。

以上が私から見てLuminar 3、4だ。

あなたにとってはまったく別ものかもしれないから、無料のLuminar 3を使ってみたりLuminar 4を導入してみて判断すべきだ。

© Fumihiro Kato.
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・スタジオ助手、写真家として活動の後、広告代理店に入社。 ・2000年代初頭の休止期間を除き写真家として活動。(本名名義のほかHiro.K名義他) ・広告代理店、広告制作会社勤務を経てフリー。 ・不二家CI、サントリークォータリー企画、取材 ・Life and Beuty SUNTORY MUSEUM OF ART 【サントリー美術館の軌跡と未来】、日野自動車東京モーターショー企業広告 武田薬品工業広告 ・アウトレットモール広告、各種イベント、TV放送宣材 ・MIT Museum 収蔵品撮影 他。 ・歌劇 Takarazuka revue ・月刊IJ創刊、編集企画、取材、雑誌連載、コラム、他。 ・長編小説「厨師流浪」(日本経済新聞社)で作家デビュー。「花開富貴」「電光の男」(文藝春秋)その他。 ・小説のほか、エッセイ等を執筆・発表。 ・獅子文六研究。 ・インタビュー & ポートレイト誌「月刊 IJ」を企画し英知出版より創刊。同誌の企画、編集、取材、執筆、エッセイに携わる。 ・「静謐なる人生展」 ・写真集「HUMIDITY」他
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