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モノクローム写真をつくろうとするとき、工夫しなければならないのは色のコントラスト(対比)を如何にモノトーンのコントラスト(対比)に置き換えるかだ。さらに踏み込んで、どのような対比を描かせるかだ。
デジタルカメラで撮影した写真をモノクロ化するのはいとも簡単だ。彩度のスライダーを動かしてもよいし、色フィルター効果を生かすモノクロ化の項目をONにしてもよい。しかし、肉眼で被写体を見たときは赤い物体が暗く感じられたのに、前述の方法でモノクロ化しただけではやけに明るく感じられる、といったことがある。これは赤い物体に限らず他の色が肉眼の感覚を裏切っていたり、カラーでは色と色の違いで分離して見えたものがモノクロにしたらまったく同じグレーになったり。こういったときカラーフィルター効果を利用するのは常識だろう。ただ、色フィルター効果だけではどうにもしっくりこない場合もある。
ここにRAWデータを展開しただけの画像がある。細かいことを言わなければ、その場の状況の見え方はだいたいこんな感じだった。
そのまま何も手を加えずモノクロ化するとこんな具合だ。
次に先のRAWデータの彩度だけを上げてみる。
これをそのままモノクロ化する。
ここで再び、彩度だけ上げたカラー画像を見てみる。
彩度を上げた画像の空に注目してもらいたい。雲そのものは青みを帯びている。雲と海の間に黄緑色系の色がある。ざっと見てこのような感じだが、実際には黄緑色系だけでなく赤またはマゼンタ系の色も存在している。つまり、空や雲をモノクロ化して描画するとき青系以外の色も濃淡として利用できるのだ。これは空に限った話ではなく、海を見てもらえば青とシアンの二系統の色が存在しているのが理解されるし、天候や場所によっては緑系の色が含まれる。今回は自然界を対象にした写真を例にしたが、屋外の人工物、屋内の人工物にも同様のことが言える。「空は青」のように私たちは色名を単純化して表現し、これが固定観念となっているが、実際はそれほど単純なものではない。このことを色温度や色かぶりにまつわる様々な現象で知っていても、とかく忘れがちなのだ。
彩度を上げた状態から、青とシアンを暗くするフィルター効果を使用する。
この程度の変化。
次は、黄色を明るく、青とシアンと緑を暗くする。
さらに、色かぶり補正を緑側にぐっと寄せる。
雲の描写以外は忘れて、空の変化だけを試しているが、色温度・色かぶり補正・フィルター効果の配分次第で様々な表情をつくりだすことができる。この地球最後の日的な描画がよいかはどうでもよく、モノクロ化する際に多様な調整方法がある点を説明している。
そして、こんなモノクロ画像に仕立ててみた。作例だから深い意味はないが、台風が接近している不穏な感じあたりをイメージした。空と海と浜の変化を見てもらいたい。バックグラウンドとして全体に、青・シアン・緑フィルター効果で暗めに、黄色はノーマル、色温度・色かぶり補正で塩梅のよい感じにした。海の中間位置から浜辺にかけてグラデーションマスクを設定して、ここに黄色と赤フィルター効果で明るめ、色温度・色かぶり補正(Capture Oneはマスクごとの色温度・色かぶり補正の度合いを変えられる)を加え、明るさを微妙に変更。
もう一度、元のデータのままの画像と、そのモノクロ化を。
Fumihiro Kato. © 2017 –
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