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ここに掲載する画像は、私の作品としてA3+のプリントを最終媒体に想定している。
長辺1000pixel程度のデジタル画像をディスプレで観る用途では、画像下部に位置する綿花のシャドー部はほぼつぶれた状態だろう。A3+のプリント、さらに水彩画用の紙に転写されたとき、ディスプレイ上でつぶれている部分にディティールが再現される。
このように出力先に応じて出力画像を別ものにするのは、フィルムの時代にも行われていた手法だ。フィルムで撮影する際は、主としてライティングによって調子を決め、モノクロであれば続いて紙焼き時のコントロールによって仕上げを施した。写真撮影がデジタル化された現代は、汎用性のあるライティングを施し、RAW現像で数パターンの調子違いの画像を出力できるようになった。これはとても喜ばしいことだ。
上掲の画像では、左にメインの光源を置き、右はなりゆきのままにした。これは植物を主題とした私の作品シリーズ定番の光線使いだ。右側はレフを設置しないなりゆきのままなので照度比が大きい。さらに画像全体の下側は応答性を変えるためガンマ値を可変している。画像下側の綿花と茎は、上部のものと異なり明暗比が極端になっている。そしてこの画像下側の明暗比(正しくは明暗に至る階調性の違い)を探り、A3+のプリントで再現されるシャドーの調子を経験とディスプレイ上の様子から決定した。もしこのデータから他の調子を出力したいとなったら、改めて現像する。
そこまで神経質にならなくても、というのはいささか安易すぎる考え方だろう。頼まれ仕事でも、自身の作品でも、自分が伝えたい調子を媒体ごとつくらなくては、なんのためにわざわざ撮影したのかわからないではないか。
Fumihiro Kato. © 2016 –
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