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思い違いをしがちだけれどデジタルカメラのセンサーの出力はアナログデータだ。RGGBのフィルターをもった各フォトダイオード(Gがふたつで便宜的に4マスの1区画)はそれぞれ光の強弱を電圧値として出力する。色フィルターがあるとはいえこれらは電圧の値でしかなく、出力に色情報と呼べるものはない。100Vの家庭用電源に色があるかないかと言われたら、ないというのと同じ。ただし色フィルターで光の周波数がふるい分けされているので、これら電圧の情報を色の情報として使える。
デジタルカメラのセンサーの働きは音楽を録音するときのマイクロフォンの働きと似ている。デジタル録音があたりまえの時代だが、マイクが出力するものはアナログの情報だ。またマイクが電圧の情報を波形として出力しても、人間はそれそのものを音として感知できない。
マイクを適切な位置に立てて、演奏上の音量のピーク値を想定し調整卓でレベルを決め、さあ収録となる。これはライティングを検討し、明部から暗部までディティールを残す領域を決め露光量に反映させる写真撮影に相当する。録音でも撮影でも、入力される情報のレベルが不足したり過剰であると適切かつ正確な記録を残せない。音で言えば、音がノイズに埋もれたり音が割れたりする。撮影では、白飛び黒つぶれ、ディティールが残らない記録になる。
最終的に荒々しい音楽としてCDや圧縮音源として発表するとしても、録音時はフラットな特性で音の要素をすべて余さず記録する。これは写真にも言え、撮影時はできる限りディティールを記録しアウトプットするとき特性に癖を与える。
デジタルカメラではセンサーが出力したアナログデータを各色ごと14〜16bitでサンプリング(標本化)し記録する。1bit=2進数の1=10進数の1、14bit=2進数の10 0000 0000 0000=10進数の8192、16bit=2進数の1000 0000 0000 0000=10進数の32768。ここではじめてデジタルデータになり、これ以降はデジタルデータが処理される。同様にマイクが拾った音はアナログデータとして出力されるが、デジタル録音では16bit/44.1kHz(一般的なCD)であるとか、24bit/96kHzであるとかサンプリングされデジタルデータになる。原音をマイクで拾い出力される波形をサンプリングする際、前述したように出力される値が不足したり飽和していれば、いくらサンプリングが緻密であってもロクな録音物にはならない。いくらカメラの性能が高くても、露光量が不適切ならロクな写真にならないのと同じだ。(デジタル画像では、ビット数×3が総ビット数。RとGとBそれぞれが何ビットかを表し、14〜16bitなどとする。たぶんPhotoshopがこの表示方式を採用したことで普及した画像界の慣例みたいなもの)
RAW現像は、1画素ずつ明度がともなった色として確定していないRGGBのモノクロ情報から、1画素の色を特定し固定する作業だ。隣り合う他の色フィルターを通過した情報を参照して、1画素ずつの色が決められる。このとき14〜16bitで記録された情報のすべてが使用される訳でなく、画像として目に見えるカタチになったものは、記録されたデータのごくごく一部にすぎない。14〜16bitの深度を持つ情報は、RAW現像時に明るさ、コントラスト、ガンマ値など変更したとき掘り出されたり、捨て去られたりする*。(*:捨て去られるとしたが、RAWファイルから消去されるのでなく、現像後の画像に使用されない点をこのように表現した)
RAW現像は、録音物のミキシングとトラックダウンに似ている。録音では数十チャンネルにそれぞれのテイク、それぞれの楽器を記録する。これらデータから必要なテイク、必要な楽器を選択し、個々に音量や音質を決め、場合によってはリバーブ(残響)などエフェクトを加える。この過程で使用しないトラックがあり、使用するトラックでも高音成分、低音成分を切り捨てるなどデータをすべて活用するとは限らない。最終的に数十チャンネルの録音物は、ステレオであれば2チャンネルにトラックダウンされる。
音楽ではCD用とラジオ用でミックスを変える場合がある。CDを聴く環境よりラジオの環境が貧弱である場合が多いからだ。また、CDはデジタルデータそのものだが、ラジオはFMなど電波に変換されて人々の元に届くためそれにふさわしいミックスが選択される場合がある。デジタル写真では印刷などAdobeRGBの広大な色データが必要なケースと、ディスプレイで表示する際のように狭いsRGBのデータにしなければならないケースがあり、出力先にあわせて画像データを変える。さらに印刷ではカラー、モノクロ、コート紙への印刷、マット紙への印刷などそれぞれデータを作り直す場合がある。
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