2015-09-19

workshop18. シャープ処理の原理と課題

1.
被写界深度を稼ぐため絞り込んだ結果、解析現象でぼんやりした画像をできるだけ明瞭なものにしたいとき、RAW現像の際にシャープ処理をしている撮影者が多いはずだ。
この他にも、レンズの特性や被写体の特性、光線状態によって輪郭部が不明瞭なとき同様にシャープ処理によって状態を改善したいと願うだろう。

ユーザーインターフェイスでシャープニング等の名称で呼ばれるこれらの処理が、画像に対して何をしているか原理を知ると使い勝手が向上され、使わないほうがよい場合の見定めなど適切な判断や調整ができるようになる。

2.
「シャープではない」とはどのような状態なのか。解析現象の場合を考えてみる。

絞りを羽の開口部ボディー側で光は常に幾分かあらぬ方向に向かう(解析している)。絞り羽の開口部で凹レンズで屈折したかのように方向を変える光の割合が一定でも、絞り込むことで総光量が減ると、像を結ぶ光量に対して結像しない不要な光が相対的に増えることになり影響を無視できなくなる。これが解析現象によってシャープさが失われる原因だ。
被写体の像に解析による光の薄膜がかかって解像度が低下すると、物体の輪郭部が不明瞭になる。このことからシャープ感に欠けるとは「輪郭部がはっきりしていない状態」と言ってもよいだろう。

ここで「輪郭」と呼ばれるものは人間が脳の働きで識別したもので、たとえば机の輪郭の場合、天板や脚部とその他の空間の境目を輪郭と呼ぶが、鉛筆で線を描いたように「輪郭線」が存在している訳ではない。
机の場合は空間との境目が「輪郭」であったが、植物の葉脈の場合は色の違いや凹凸によって生じる明暗差の違いを私たちは「輪郭」と呼んでいて空間との境目ではない。
このような人間のわがままな「輪郭をシャープにしたい」という要求を、そのまま機械であるコンピュータに処理させようとしてもソフトウエアは何が輪郭かわからない。このためソフトウエアに、人間にとっての「輪郭」を検知させる工夫が必要になる。

まず下図が被写体そのものを表すとする。
sharp1次は輪郭が曖昧になっている状態で、これがカメラで撮影され記録された画像だとする。
sharp2この元となる画像を、さらにぼかしたものをソフトウエアが用意する。このようにぼかしてシャープネスをさらに落としたものを利用するので、ここで説明する処理を「アンシャープマスク法」と呼ぶ。
sharp2-2元画像とさらにぼかした画像を重ね合わせ、差の絶対値を求めると以下のように人間が輪郭と呼んでいる部分を検出できる。
sharp4検出された輪郭のコントラストを高め元画像に与えるとシャープ感が増す。だがシャープネス処理をしたとき被写体と輝度が異なる線が現れ輪郭が太くなる現象が伴い、これはぼかした画像を使用した影響である。
sharp51
最後に、元画像とアンシャープマスクを適用した画像を比較してみる。
sharp2sharp51輝度差の影響は、「背景となる部分」と「被写体または被写体の部分」の明度差、彩度差が大きいときほど目立つ。純白に対しては輝度差が同化し目立たないが、自然界に純白はほとんど存在しない。このため純白とわずかでも明度が異なるグレーでも著しく光の縁取りを感じることになり、シャープ処理では明るい縁取りの存在が無視できないものになる。

3.
シャープニングまたはアンシャープマスクのユーザーインターフェイスは「適用量」「半径」「しきい値」のスライダーで構成されている。
半径はシャープの影響を及ぼす範囲、しきい値は輪郭として検出した領域のどの明るさまでを輪郭として強調するか、適用量はこれらで決定した輪郭をどの程度の強さ(コントラスト)で適用するかを決めるためにある。

微細な輪郭や微細な輪郭が密集している状態を強調したいとき半径は小さいほうがよい。だが、あまりに半径を小さくすると効果が減じてシャープ感の向上を感じにくくなる。しきい値は、(2)で図示したように縁取りが太いほど輪郭部は強調されるが、太過ぎれば輝度違いの縁取りが目立ち不自然さが増す。

千差万別の画像相手にこれらの調整項目を可変させるのだから、元画像の変化を確認しながらでないと輪郭として強調したいものの強調され具合がわからない。一定の傾向を帯びた画像であれば傾向と対策は経験によって決められるようになるが、やはり最後は画像を目視して確認したい。

だがディスプレイ上で縮小された画像を見ながらでは、最終的にアウトプットするサイズでのシャープさの見当をつけにいくいので注意したい。また、ディスプレイで鑑賞させるのか、印刷するのか、印刷はインクジェットプリンタかオフセットか、とアウトプットの形式によって適切なシャープ感は変わる。
インクジェットプリンタでは、画像を送り出すソフトウエアでプリントを選択したとき「シャープネス」をかけるのがデフォルトになっているものがあり、このシャープネスの二度がけが適切である場合と過剰すぎる場合がある。
またさらに、プリンタドライバの特性やインクジェットプリンタの特性、紙質によっても印刷仕上がり時のシャープ感が違う。

このようにシャープネスの量を決定するのはなかなか難しい。
あまり過剰にすると物体の質感が損なわれるだけでなく余計な輪郭が目立つことになる。だからといって、甘い画像のままでよい訳ではない。

そこでアンシャープマスク法に代わり、AdobePhotoshopには「スマートシャープ」と呼ばれる新たなシャープ処理が加えられた。
スマートシャープはアンシャープマスク法より輪郭の検出が正確なので、輪郭部が太る現象を抑えられ、この輪郭部に発生するノイズを抑える効果もコントロールできるようになった。
このスマートシャープに効果が近いと感じられるのが、CaptureOneの「クラリテイー」と併設されている「構成」だ。「構成」の効果はあきらかにアンシャープマスクと異なり、線が太くなる現象がかぎりなく発生しない。また「スマートシャープ」は強調する側にだけ働きかけるものだが、「構成」はマイナス側にも設定できる。
たとえばガンマ値を高く変更したり、コントラストを上げた場合、曖昧であった明部と陰影の差がはっきりするのはもちろん見かけ上のシャープ感が高くなりすぎる。このようなとき「構成」をマイナス側に調整すると穏やかさを残すことができる。

Lightroomでは「明瞭度」、CaptureOneでは「クラリティー」もシャープネスとは違うが、曖昧な輪郭をはっきりさせる効果がある。めりはりが付いた状態になるのだ。
明瞭度またはクラリティーがどのような仕組みかレシピは公開されていないが、明るさの特定領域でガンマ値を上げ下げしているかのような印象と、ヒストグラムの変化が見られる。またCaptureOneで選択できる「パンチ」モードでは彩度の強調も付加される。めりはりを強くした場合の穏やかさの維持や、めりはりを弱くした場合にエッジを立たせたいときなどにも「構成」が役立つ。

アンシャープマスクで不自然さを感じたら、Photoshopでは「スマートシャープ」、Lightroomでは「明瞭度」、CaptureOneでは「クラリティー」と「構成」の組み合わせで調整を試みるのがよいだろう。もちろん、これらはアンシャープマスクと併用できる。
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