workshop14. 標準レンズへの苦手意識とは

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はるか遠くにあるものを大きく撮影したい。広大な範囲をひとつの画像に収めたい。こうした欲望から望遠レンズ、広角レンズは誕生した。
しかし、接近できない、引きが取れない事情がある場合は別だが、そうでないなら遠くにあるものに近づく、あるいは後ろに下がることで被写体の大きさ、写し込む範囲を願望通りにできる。
これらは当たり前すぎる事実だか、望遠レンズや広角レンズを手にすると、どうも忘れがちになる。スポーツだから望遠、広大な風景だから広角といった具合に発想が固定されがちになる。

なんだか作例写真のような写真ばかり量産しているなとか、スランプに陥ってマンネリ化しているなと感じたら、画角でレンズを選択するのでなく遠近感描写の違いに着目してレンズを選択してみるのがよいだろう。

これまで望遠があたりまえと思っていたシーンで画角が広いレンズを使い寄ってみる。広角があたりまえと思っていたシーンで画角が狭いレンズを使い引いてみる。こうすると画面内に収まる情報量は同じでも、遠近感描写がガラッと正反対に変わる。
すると画角だけを頼りにレンズを選択していてはもったいないと気づくだろう。気づいたら、足を使い寄ったり、引いたりすることをサボっていた点を念のため反省しておこう。

で、「標準レンズ」一本で寄り、引きする習慣を忘れてはならない、となる。
もし「標準レンズ」を装着したカメラで撮影をする際に、被写体とのワーキングディスタンスをファインダーを覗いてやっと決定しているようなら、撮影勘に赤信号が灯っていると思ってよい。

標準レンズは使いにくいという人のほとんどが、ワーキングディスタンスの適切化に自分なりの定見が確立されていない。これは遠近感描写に対する定見がないことを意味する。
標準レンズの焦点距離はなかなか面白い性格を持っていて、寄った場合は遠近感の誇張が想像以上に(見かけ上)大きく、引いた場合は圧縮まで至らないが遠近感の描写がかなり(見かけ上)静かになる。

標準レンズに苦手意識がある人は、寄れば広角的、引けば望遠的、しかし画角はいつも標準レンズという点を忘れている場合が多いのだ。忘れているけれど、この点が心に引っ掛かり、使いにくいと感じている。
標準レンズを使用すると、どうもしっくりこないと感じたら一、二歩寄ったり引く。あるいはぐっと寄る、さらに遠ざかってみる。
この特性もあり、標準レンズが苦手な人には限りなく寄れる標準マクロがオススメだったりする。

まだ半信半疑かもしれないので、もう少し説明を加える。
標準レンズ特有の性格は、中望遠(ライカ判換算)85mmなどと中途半端な焦点距離のレンズが定番になっている理由を知ると理解しやすい。

標準レンズで人物をバストアップまで寄って撮影すると、顔の隆起が誇張されるように感じられる。横顔で如実だが、正面から撮影しても鼻が微妙に大きく感じられる。
85mmの遠近感描写は圧縮まで至っていないが、ポートレイトで顔の隆起やパーツの大きさの誇張が抑制される。またこのときのワーキングディスタンスが遠からず、近からずでなかなかよい。
だから85mmがポートレイトで重宝される。重宝されるので、だったら大口径にしてボケ量を大きくしようとなったのだ。

(ライカ判換算)85mmは遠近感描写のアクを抜いた標準レンズと思って間違いない。
(ライカ判換算)35mm〜45mmが遠近感描写のアクを強調した標準レンズとなる理由もわかるはずだ。
無理してまで標準レンズで苦しむ必要などないので、これら望遠寄り、広角寄りの焦点距離を自分にとっての「標準」にしても別に構わないし、誰も止めないだろう。
まあそうなのだが、なんだかんだ言っても寄り、引きで性格が変わるところに標準レンズの柔軟性があるので、苦手意識を持たずに使えるようになった方がお得だ。

というのも、ライカ判で85mm、35mmは絞りによってコントロールできる被写界深度の幅が標準50mmよりかなり偏っている。
もちろん中望遠で引いたり、準広角で寄れば、ピントを深くも浅くもできるが、F1.4からF2クラスの50mmの調整範囲にはかなわない。さらに前述の見かけ上の遠近感描写の変化も加わるのだ(ライカ判以外のフォーマットは事情が異なるが)。

お勉強の素材として標準レンズを考えると、撮影がつまらなくなり、ノリも悪くなるので撮影結果がよくなるはずがない。ただ本腰を入れて使ってみると、なかなかモチベーションが上がるレンズだとだけ最後に述べておく。

 

 

 
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