2015-02-02

workshop-5

workshop 5. D800系など高画素機・中判が求められる理由

1.
D800の発売が刺激となりライカ判準拠フルサイズまたはAPS-Cフォーマットの上級機は、かつて中判デジタルカメラの特筆すべき重要ポイントであった高画素化へ進む様相を見せている。
さらに、D800Eでローパスフィルターを打ち消すフィルター構造を採用し、後継のD810ではローパスレスとなった。実はμ4/3ではかなり以前からローパスレス構造を採用し、D800Eのものと異なるがキヤノンの上級機では縦横両方向でなく方方向のみローパス効果のあるフィルターを採用していた。
いずれにしろD810の登場でローパスレス化の傾向は拍車がかかり、これからは高画素・ローパスレスが上級機の特徴になる時代となるだろう。

ローパスレス化は単に高画素化による解像感の向上を助けるために採用されただけでなく、高画素化した故にローパスレス化が可能になったと言える。

これはμ4/3で早くからローパスレス化されていたことでもわかるように、1画素ごとのサイズ・ピッチが小さくなるとモアレが発生する機会が減少するからだ。
初期のデジタルカメラは画素数が少ないため、1画素、1受光素子(フォトダイオード)ごとのサイズ・ピッチが現在と比較し、とても大きかった。モアレは被写体の連続パターンの周波数と、センサーを構成する受光部の配列周波数が近似であるとき発生する。
つまり受光部が大きく、大きなタイルを敷き詰めたような状態であると、ブラインドカーテンの横方向に連続するパターンでさえモアレが記録される。これは現行機でブラインドカーテンを撮影し、画像を縮小してみればシミュレーションが可能だ。ローパスフィルターが採用されている機種で撮影をしても、撮影したブラインドカーテンの画像を縮小するだけで、周波数のうなり=モアレが現れる。

このような被写体の規則的な変化が高周波にならないかぎり、高画素化し1画素ごとのサイズ・ピッチが小さくなったモデルでは周波数のうなり=モアレは発生しない。
μ4/3はセンサーサイズが小さいため、順次高画素化する過程でライカ判準拠フルサイズやAPS-Cフォーマットより1画素ごとのサイズ・ピッチが小さくなっていたため、シャープ感を損ねるローパスフィルターが排除されたのだろう。

現行のD810では、布の織り目や建築物にみられる垂直または水平のパターン以外でモアレが気になることは稀れ、あるいはない。
RAW現像でモアレが除去できること、仮にローパスフィルターが使われていても画像のリサイズあるいはシャープネスを高める操作でモアレが現れることを考えると、普及機では使い手の要求を考えローパスフィルターが使用され、上級機では不採用となるのは必至だろう。

2.
しばしば「D800やD810のような高画素は必要ない」と言う人がいる。
その理由はいくつかあるが、代表的なものとして「そこまで高解像を要求していない上に、画像ファイルの容量が大きくなる」とする意見が存在する。

解像感については人それぞれで求める領域が異なるので、一概に否定できないものがある。現在のD810ほどの画素数ともなると、かつての大判8×10以上の情報量がアウトプット可能だ。更に大判レンズより解像度がもともと高いライカ判準拠フルサイズ用レンズが、高画素と歩調を合わせて高解像化している。
たしかにL判プリントや六つ切サイズ程度のプリントにはオーバースペックかもしれない。
また高画素化により、手振れ、機械的機構の振動に対するシビア差さも増している。また高解像を要求されるレンズは、年々、大型化の一途をたどっている。

だが、ここから先の時代で忘れてはならないのは、PCやタブレット、スマートフォン、テレビの4K、5K越えである。
4Kとは、これまでRGBの各1画素が担っていた表示を、同サイズの中で4画素が担うことを意味する。5Kであれば5画素だ。
このためタブレットやスマートフォンの物理的画面サイズは小さいのだが、iPhone6 Plusでは1242×2208ピクセルも画素が敷き詰められ、解像度は401ppiに到達している。これはアンドロイド採用のスマートフォンでも同様の傾向にある。

PC用のディスプレイで5KはApple製ディスプレイが代表格だが、他社も追随するだろう。
このように4K、5K越えがあたりまえになると、画素数のすくないデジタルカメラがアウトプットする画像のピクセルサイズでは表示が小さくなるか、ぼやけて見えるようになる。
実際に大手サイトを筆頭に、タブレットやスマートフォンの3Kディスプレイ以上に対応するため、元画像サイズを表示されるサイズより大きくつくり、これを縮小させてみせるなど様々な方策が取られるようになっている。

D800系は最大幅7000ピクセルを超える画像をアウトプットできるが、2K、3K、4K、5K以上ではディスプレイを構成する画素密度の高まりにより、フルサイズを鮮明に見せるためにはこれでもいずれ足りなくなる。

3.
中判を含む高画素機のメリットとして、加工耐性の強さも忘れてはならない。

縦方向、横方向などにパースの誇張が現れた画像をRAW現像時に修正するのは珍しいことではない。
パースの誇張で大きく見えている側を縮めるのはまだよい。小さく見えている側を大きくするため画素を補完し水増しするとき、存在しない画素をつくるため元画像をサンプリングする必要があり、このとき参照できる画素数が多いほうが自然な仕上がりとなる。

パース修正の際だけに加工耐性があるのではない。
画像サイズを拡大縮小する際にも、画素補完技術は用いられるため元々ピクセル数が大きく表示画像が大きい上に、画素補完が必要な拡大や縮小時もサンプリングできる画素が多いことはメリットとなる。

またJPEGに圧縮する際にも同様のことが言える。
JPEG圧縮は第一段階の工程で、画像を8ピクセル四方の区画に分ける。そして、この8ピクセル四方の中で輝度差を優先し彩度情報を間引くことによりデータの容量を減らす。
このため高画素機からアウトプットされた画像は、サンプリングの密度が高まり、高圧縮率を選択しても画質の劣化がすくない。

先に述べたディスプレイの2Kはおろか5K越えにより、不可逆圧縮JPEGでなく可逆圧縮の新画像形式の登場が望まれているが、JPEGがデフォクトスタンダードとなっている状況では、新形式は存在しても普及していないのが現実である。
やがて可逆圧縮の画像形式が普及するかもしれないが、それまでは不可逆圧縮のJPEGが使われ続けるため、高圧縮率を選択しても劣化がすくない高画素機がアウトプットする画像は重要な意味を持つ。

4.
では中判のメリットは何だろうか。

フィルムを撮影用媒体としていた時代は、フィルムのサイズがプリントサイズの上限を規定していた。
つまりライカ判から六つ切に引き延ばすより、8×10の密着焼きで得られる六つ切印画のほうが、粒状感、解像感のよさがあった。これは印刷にも言え、フィルムフォーマットが大きいほうが、大サイズの印刷に向いていた。

このため広告などの分野では、中判が基準サイズであり、ライカ判は撮影が困難な状況などで用いられるフォーマットだった。

だが写真がデジタル化されるとセンサーサイズでプリントサイズが規定されるのではなく、画素数により規定されることとなった。
こうなると中判は、取り回しの面倒さ、(ライカ判と比較し)レンズ種の少なさがデメリットとなるため、前述のようなライカ判準拠フルサイズ高画素機が敢えて用いられるケースが出てきた。
つまり中判の36万画素も、ライカ判フルサイズの36万画素も、プリントサイズの上限では同じであり、是々非々で中判でなくてはならない理由は減っている。

ただし、中判で採用されるおおよそ6×4.5cmのセンサーに36万画素を敷き詰めるのと、ライカ判フルサイズに36万画素を敷き詰めるのでは、1画素、1受光素子あたりのサイズとピッチが異なり、中判はより大きな受光素子(フォトダイオード)が使えるメリットがある。

受光素子のサイズと光の関係は、バケツと水の関係に似ている。
より多くの光(水)を蓄えられる受光素子(バケツ)は、ISO感度を低く設定したとき有利になり、過剰な増幅を行わなくてもよい。増幅はノイズもまた増幅するため、ノイジーな画像になりがちである。
ただし、ここで問題となるのは「どのくらいのISO感度が低感度か」であり、受光素子の進化は日進月歩であるため、D810のLO1設定=ISO32と、数年前の中判の同感度では、D810が劣ると言い難い状況となっている。

また受光面積が大きければ、高感度設定で弱い光を記録する際にも原理的には有利だ。しかし、高感度時の増幅技術はライカ判準拠フルサイズ、APS-Cフャーマットでまず高度化された経緯もあり、必ずしも中判が高感度に強いとは言えない。

このあたりは技術革新の速度がはやいため、どちらが有利と決めつけないほうがよいだろう。

次に、必要な人には必要だが、必要ない人にはほとんど意味がないものとして中判のバック部(センサーおよび回路部)が16bitの階調を記録可能(ライカ判準拠フルサイズまたはAPS-C機の14bit)なことが挙げられるだろう。
このため微妙なニュアンスが記録されるだけでなく、ここでも加工耐性に差が現れ、たとえばメイクと肌の調子を整えても簡単にプラスチックのお面のようになりにくいと言える。

しばしば中判は高解像であると言われるが、これはレンズに何を用いるかにはじまり、画素数にも関係することなので、プリントサイズの上限で説明したように一概に高解像と言えるものではない。
したがって銀塩用のハッセルブラッドボディに、従来のレンズを装着し、バック部をデジタルバックにした場合、デジタル専用に設計されたシステム群を用いた場合とでは明らかな差が出る。
さらに銀塩用のハッセルとデジタルバックの組み合わせでは、フィルムではあまり問題とならなかった公差が大きく影響し、ピントグラスではピントが合っていても、センサーの位置との差によるピンボケといった相性問題がついてまわる。

銀塩用の中判レンズは、ライカ判より引き伸ばし時の拡大率が小さくて済むため、ライカ判より解像度が低い。このためデジタル専用に設計されたシステムを導入するほうが、将来性もあり、また中判を使う意味にも適うと言えるだろう。

 

 

 

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