Workshop-3

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Workshop 3.色にまつわる諸問題

・色とは何か。
・デジタル環境で色を扱う際の約束事。
・色空間の変換。
・RGBからCMYKへの変換

1.
光とは何か。これは一言で語れるものではない。
光はエルネギーであり、周波数を持っている。そのうち光、色として目視できるのは可視光線の帯域で、青から赤への連続的変化を人間は感じ取れる。
紫外線や赤外線は光ではあるが、人間は目視できない。ただし、昆虫などは紫外線の領域も目視できる。
さらにX線の超軟X線は紫外線に限りなく近い。
赤外線は可視光線の赤より波長が長いが、電波より波長が短い帯域である。

もし人間の網膜にある錐体が感じ取れる電磁波の帯域が広ければ、X線から電波まで連続した色として認知可能だろう。

だが現実には人間は可視光線だけ認識できる。
また光の波長に対する感色性が人それぞれ異なるため、私が見ている色の世界と、この文章を読んでいる人が見ている色の世界は何かが違うだろう。
これでも大きな不便がなく日常生活が送れるのは、波長固有の色名を言語として持っているからだ。
青、濃い青、薄い青、赤、濃い赤、薄い赤等々、色名を使用すれば色覚に異常がない限り可視光線内の色についてコミュニケーションに齟齬が出ることはない。

色とは、電磁波の周波数帯のごくごく狭い範囲にある可視光線域内の周波数の違いで、特徴的なものは青、緑、黄、赤などと固有名詞が与えられているものと言える。

2.
デジタル化された写真で問題となるのは、人間同士のコミュニケーションでは色名を用いて不自由がないのに対して、入力デバイス(カメラ)、編集デバイス(PC)、表示デバイス(ディスプレイ)、印刷デバイス(プリンター、印刷機)間の連携では色名だけでは用が足りず、意図したものをアウトプットできないことである。

そもそもパソコンなどデジタルデバイスは色はおろか画像を扱うために誕生したものではない。そして現在も計算機でしかない。
このため長らく混乱が続いたが、計算機が色を伴った画像を扱う基本としてCIE(国際照明委員会)表色系を用いるようになった。

CIE表色系はRGB(赤、緑、青)の加色混合でつくられる色を基本としているが、当初RGBのみですべての色を表現できるとして制定しようとしたがCM(シアン、マゼンタ)の要素も必要とされることがわかり、現在の表色系が完成した。
これにより我々人間が青、赤などと固有名詞で呼ぶところを、座標によって示すことができるようになった。

ところが人間が感じ取れる色の帯域を、網羅できるデバイスは開発されていない。
Adobe社のPhotoshopが誕生した時代、Photoshopがデフォルトの色空間とするAdobeRGBを表示できるディスプレイはなかった。
だが、カラーフィルムにはAdobeRGB相応の色が存在し、これをスキャンし、Photoshopで調整し、オフセットなどの印刷機にデータを引き渡す必要があった。このため画像を機器間で引き渡す際のブリッジとして比較的広い領域色空間であるAdobeRGBが採用された。

だが他のソフトウエア、ディスプレイなどは規格がまちまちであった。
そこでMicrosoft主導により、かなり限定的な色空間であるsRGBが制定され現在に至っている。

sRGBが表現できる色の階調が狭い。

だがsRGBを基準としたディスプレイで多くの人が不便を感じないのは、人間は彩度の変化を感じることに鈍感で、輝度の変化に敏感だからだ。このためsRGBの狭い色空間に色の階調が押し込められても不自然さを感じないだけなのである。

3.
ここで問題となるのは、カメラはAdobeRGBをはるかに超える色空間を記録でき、便宜的にAdobeRGBに色を整理しなおしてJPEGやTIFFファイルとして保存し、RAWデータではAdobeRGBをはるかに超える色空間をそのまま抱えていて、現像時に画像として表示する際にAdobeRGBやAdobeRGBより広大なProphotoRGBの画像として展開する点である。

もしディスプレイがsRGB対応であるとすると、データ本来の色と色の階調が見えていないことになる。
したがってAdobeRGB色空間とするデータを扱うにはAdobeRGB対応モニターを用いなければならない。
仮にAdobeRGBのデータをsRGBで目視したとすると、全般的にくすんだ、スミっぽい色調となる。この状態で理想の色調に調整し、AdobeRGBに対応した機器や、他の色空間に変換すると、派手すぎる彩度が高い色調となりがちである。
ではAdobeRGBディスプレイが万能かといえば、これもまた違う。
AdobeRGBディスプレイでsRGBデータを目視すると、彩度・輝度ともに高く感じられる。これを誤解し、彩度・輝度が高いゆえにAdobeRGBディスプレイは素晴らしいとする人がいるが根本的な間違いを犯している。

したがって、AdobeRGBとsRGBのデータをともに扱い、生成する場合は、モニターは両者を用意しなければならない。

4.
色空間を変換するのはソフトウエアのUI上のボタンを押すだけの操作だが、行われている処理はとても高度で複雑な作業である。
AdobeRGBからsRGBへの変換の場合、AdobeRGBの色空間で存在していた色を、sRGBの狭い色空間内にある色に置き換えなくてはならない。これを1ピクセルずつ画像内のすべての色について行うわけで、大工事と言える。

AdobeRGB=sRGBではない。したがってAdobeRGBからsRGBへの変換結果はまったく一致しない。一致しないが、人間が目視して知覚する上で差がないように、あるいは絶対的な彩度を維持するなど、ソフトウエアがそれぞれのアルゴリズムで大工事を行う。

だが、どれだけ高度なアルゴリズムを用いても、原画を知らない人にとっては不自然でないとしても、原画を生成したり、原画を知っている者にとっては色調が異なっていることが明白にわかる。

一般的傾向だが、sRGBで階調性が乏しいR領域が飽和したりR系の色が階調の途中で不自然に突出する、同じく階調性が乏しいGとBが混合した領域でRと同じ現象が発生する。
100色を越える色鉛筆を持っている画家がすべての色を使用して描いた絵を、12色の色鉛筆だけで模写しろと命じられるのと類似しているのがAdobeRGB=sRGBの変換なのでしかたないのだ。

このような現象への対処は、AdobeRGBディスプレイで調整した元画像をsRGBディスプレイで校正し、彩度を抜くのが定石である。またそれでも特定の色域だけが突出している場合は、その色域に限り彩度を落とす等の処置をする。

これでほとんどのケースが改善されるが、この改善された画像をJPEGファイルにすると、またR領域の突出が再現される場合がある。

JPEG圧縮とは、画像を8ピクセル四方の区画にまず割り、この区画内をサンプリングして輝度を生かし、色を間引く処理を行うことでファイル容量を劇的に減らしている。
色間引く処理がRGB各色でバランスがよければ問題は発生しないが、長波長域つまりR寄りの色の処理を苦手としている。このため圧縮前と圧縮後の色調の見た目が変わるのだ。
JPEG圧縮は実際に処理をしてみないと、どれだけ色調の見た目が変わるかわからない。
赤い要素のないグレー一面のモルタル壁であっても、1ピクセルずつ見て行くと、必ずRの要素が含まれている。このようにJPEG圧縮してもR領域の突出の影響がないだろうと思われる箇所に、赤浮きが発生しがちなので圧縮後の校正は重要だ。
もし本来Rとして知覚されるべきでない場所が赤みを帯びているようなら、画像の色調整に戻りJPEG圧縮用の画像を生成しなければならない。

5.
ここまでAdobeRGBとsRGBに特化し色空間について述べてきたが、もっともやっかいなのがRGBの加色混合画像からCMYKの減色混合への変換だ。

加色混合はRGBそれぞれの値が最も高く混合されたとき、白となる。
減色混合の場合、CMYそれぞれの値が最も高く混合されたとき、黒となる。

つまりまったく逆の特性を持つ色に、原画の色を割り当てなければならないのである。
さらに、理論上はCMYを100%で混合したとき純黒となるのだが、印刷インクをCMY各100%で掛け合わせても純黒とならない。このため本来キー・プレイト(特色)用の予約位置であったKにブラックを加味しなければならなかった。

さらに複雑なのは、Kに置くブラックのインクの濃度が日本と欧米ではまったく特性が違うのである。日本のブラックは下地を完全につぶせる濃度がある。欧米のブラックは下地が透ける濃度だ。
さらに欧米では印刷工場が採用するインクの特性がまちまちであり、日本のようにインクの銘柄は変わっても色調を維持できるとは限らない。

このため国内で印刷する場合のCMYKへの変換には、「一般 CMYK」などとされるプロファイルを当ててはならない。必ず「Japan Color ******」とされるプロファイルを用紙ごとに当てる。

これは日本だけが特殊なのではなく、日本が最初期に規格を制定させたため「Japan Color」のプロファイルが誕生し、続いてアメリカで国内用の規格として「U.S sHeetfed」がつくられた。

ここで「プロファイル」という単語が出てきたが、これは先に示したAdobeRGBとsRGBの色空間座標と同質のものである。前掲の色空間図はAdobeRGBとsRGBのプロファイルだ。

プロファイルは拡張子「.icc」で表記されるファイルで、入力デバイス(カメラ)、編集デバイス(PC)、表示デバイス(ディスプレイ)、印刷デバイス(プリンター、印刷機)間の連携では色名だけでは用が足りず、各自の特性を相互に連携し伝えるために用いられる。

人間同士のやりとりで例えれば、「ここを朱色に塗ってください」と注文したとき、「私は朱色の絵の具を持っていないので、代わりに朱色に近い色を塗ります」と伝え合うのに似ている。

機器間のやりとりでは元のデータで特定されている色があり、これを目視するディスプレイの特性や調整要素があり、プリンターや印刷所の特性が存在する。
人間がデータで特定されている色を認識するのはディスプレイであるから、ディプレイの調整が必須なのだが、調整をしたらその状態をiccプロファイルに書き出しPCに保存する。
このようにiccプロファイルの相違をいかに見た目上の差が出ないようデータの伝言ゲームができるかは、OSやソフトウエアの賢さに依存する。プリンターの場合はRGB画像からいきなりCMYK+αのインクを用いる減色混合を強いられるため高度な変換が行われる。

ただし、Windows環境でプロファイルを用いた色の管理ができるのはWindows7以降である。それ以前はOSレベルで色の管理ができず、ソフトウエアが独自に管理するか、管理できないものも存在している。AppleのOSではOSX以前からDTPで使用されてきたため、カーネルの真上にある層からUIに至るまでOSでiccプロファイルが管理されている。「ColorSync」と言えば、ああそれかと聞き覚えがあるはずだ。

6.
各色空間の特性、iccプロファイルの適切な管理ができていても、RGB画像からCMYK画像への変換は様々な問題をはらむ。

まず、ディスプレイはRGB機器である。RGB機器のディスプレイで、減色混合のCMYKを正しく校正するのは難しい。実際の校正刷とディスプレイの差を頭に叩き込まなければならない。

しばしば耳にするのは、CMYKに変換するとスミっぽくなる、という声だ。

これは問題を切り分けなければならない。
a.ディスプレイで校正するとスミっぽいが実際の印刷では問題ない。
b.実際の印刷結果が想定よりスミっぽい。
いずれかをまず特定する必要がある。

「ディスプレイで校正するとスミっぽいが実際の印刷では問題ない」場合は、RGB機器のディスプレイで、減色混合のCMYKを校正するコツを会得すれば問題ない。

「実際の印刷結果が想定よりスミっぽい」場合は、
a.正しいプロフィルを割り当ているか。
b.印刷所の特性を把握しているか。
c.用紙の特性がコート紙、他とプロファイルがあるが、個々の紙ごとにも特性があるため、色が沈む用紙を選択していないか。
のいずれか検討してみる必要がある。

印刷所は厳格に規格に沿って印刷を行うが、それでもどこでも結果が同じと限らない。担当営業とコミュニケーションをしっかりと取り、もし担当者が色について理解できない人、印刷現場に要望を伝達できない人であったら印刷所を変える他ない。
用紙の特性による場合は、そういうものだと受け入れるか、その特性を知り画像を調整する他ない。

ただしスミ版抜きは、禁じ手である。
先に説明した通りプロファイルはスミ版を含んだCMYKのバランスでつくられている。ディスプレイ上でスミ版抜きがきれいに見えても、実際の製版から印刷までの過程で狂いが生じる。さらに、印刷所はCMYKに分版されている前提で稼働しているので、印刷所を混乱させるだけである。

 

 
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