2015-01-23

Workshop-2

Workshop-2. 記録できる階調・使用できる階調

 

1.
この回はアンセル・アダムスのゾーンシステムを基にして、写真に画像として記録できる階調と使用できる階調の違いを説明する。

アンセル・アダムスのゾーンシステムとは、表題通り記録できる階調と、写真として使える領域は一致しないとするところが出発点となっている。
彼はアメリカの国立公園等の撮影で第一人者となったが、風景を撮影する上でできる限り広い階調表現を実現しようとした。
つまり白飛び、黒つぶれの領域をなくそうとしたのだ。
現代ではハイダナミックレンジ処理が彼の理想に近づく手段としてあるが記録できる階調と、写真として使える領域は一致しない」ことを理解していないとハイダナミックレンジ処理を施しても理想とする表現には至らない。

まず階調の在りようを表示する。
コントラスト

最上段は純白あるいは光源そのものから反射率0%に至る段階を光量を平均的に減衰させて行った状態である。
中段は純白あるいは光源そのものから反射率0%に至る段階を圧縮して光量を減衰させて行った状態である。
下段は、最上段で定義した純白あるいは光源そのもの、反射率0%を除き、光量を平均的に減衰させて行った状態である

中段の階調は純白あるいは光源そのものから反射率0%まで記録されているが、中間の光量の減衰が明らかに段階的で、このため微妙なトーンが再現されないのが想像できるだろう。

このように記録できる階調については比較的理解しやすいと思う。
だが、使える領域についてはわかりにくいのではないだろうか。

ZONESYS
上図がゾーシステムの考え方だ。

a.自然界には反射率0%の暗部から100%の明部または光源そのものが存在すると仮定する。

b.この反射率0%から100%を11段階に区切る。反射率0%を0とし、順番に番号をふり100%をXとする。1段階の差は露出1段階の差である。Xは白飛び、0は黒つぶれを意味する。

c.アンセル・アダムスはIからIXまでの範囲を利用できる最大範囲としてダイナミックレンジと名付けた。利用可能な範囲とした基準はモノクロネガフィルムで、ネガで最大となる暗さ、明るさとした。

d.だが、図であきらかなようにI、IXともに、その領域内に微妙なディティールが存在しても、プリントやディスプレイで表示するのは困難である。図では対比のための明度差を示す長方形を太くしたのでまだ認識しやすいが、より繊細なディティールとなると目視できない状態となる。

e.そこでIとIXを省き、IIからVIIの範囲をディティールを表現できる範囲とし、テクスチュアルゾーンとした。

f.だが、経験的に平均的な暗さで十分なディティールを記録できるゾーンはIIIからであり、質感を十分に記録できる明るさもVIIIからとなる。この領域は最大の明るさから、最大の暗さまで全てのディティールを目視できる領域である。
(線)
つまり明るい側にも暗い側にもディティールを表現しきれるのは、IIIからVIIIとなり、テクスチュアルゾーンといえども両端ではまだ質感表現が困難だ。

アンセル・アダムスはモノクロネガフィルムを想定して、このゾーンシステムを定義したが、写真がデジタル化されても定義が揺るがないのは、この図そのものがデジタル画像をディスプレイで目視しているはずだが、IXやIにおける質感描写の困難さと、それを容易に目視できるかといった点ではフィルムと印画紙の関係となんら変わりはないことから理解されるだろう。

2.
アンセル・アダムスは風景写真家で、現代風に言うなら一回シャッターを切っただけでデジタル画像におけるハイダイナミックレンジ加工同等の効果を得ようとした。
デジタル画像の世界では数枚の写真を合成することからハイダイナミックレンジ表現がはじまったが(現在はRAWファイルであるなら1カットからでも加工できる)、フィルムではこのような作業は不可能であったのだ。

では実際にどのようにすれば、一回シャッターを切っただけでハイダイナミックレンジ加工並みの写真になるかと言えば、

a.被写体の中のもっとも暗い部分を反射光式スポット露出計で反射光量を計測しゾーンIII相当にする目標を立てる。

b.被写体の中のもっとも明るい部分を同様に計測しゾーンVIII相当にする目標を立てる。

c.上記、(a)(b)を実現する絞り値、シャッター速度を導き出し、フィルムに記録する。

d.モノクロネガフィルムでは増減感処理を用い、上記しただけでは実現できない領域を確保した。カラーフィルムは増減感できる幅が狭く、ラティチュードも狭いためアンセル・アダムスは別途、カラーフィルムでの応用について書籍に手法を公開している。

このようにすれば、もっとも暗い部分にある暗いディティール、もっとも明るい部分にある明るいディティールも余さず使えることになる。先に説明した通り、これはデジタルカメラでの撮影にも通用する手法だ。

かつてオリンバスOM-3、4にスポット測光によって明部と暗部の光量を計測し、これをボディに内蔵したCPUに計算させそれぞれディティールが残る露出値を示す機能が実装されていたが、これは簡易版ゾーンシステムだったと言える。

現代では分割測光が主流となったが、画面を多分割しふさわしい露出値を得ようとするのも同様の思想が根底にある。ただし、分割測光が賢くなったとはいえ、それでも手仕事で露光量を計算していたアンセル・アダムスの作品のようなハイダイナミックレンジの画像は容易には得られない。

3.
ここで注意しなければならないのは、フィルムに特性曲線があったように、デジタルカメラの明るさに対しての反応も一定の傾きを持ったものではないということだ。

デジタルカメラにも光量ごとの感度特性が存在し、無段階に変化する明るさに対してアンセルアダムスが理論的に11分割したように、1段階の差は露出1段階の差となっているとは限らないのである。
したがってアンセル・アダムスもフィルムごとの特性を知った上で、ゾーンシステムを利用し、他の写真家や映画撮影者も同様であった。

また、カメラ側で「ハイコントラスト」「ビビッド」「フラット」などと描画特性を変更すれば、変更ごとに異なる特性曲線を与えていることになる。RAWファイルではこれらはサイドカーと呼ばれる階層に設定値が格納されるため、RAWファイルを展開したままの状態では機械的的な特性とともに各自が設定した特性が付加された画像となる。

このサイドカーに設定されている値を無視して現像を進めるとき、ヒストグラムを見るまでもなく、ディスプレイ上でテクスチュアルレンジを認識し、ディティールを持つ最暗部と最明部を意識しつつ作業を進めると、かなり容易にゾーンシステムが定義するダイナミックレンジが確保される。
これはRAWファイルの核心部であるセンサーからのアナログ情報をデジタル化しただけの部分に、最大14から16bitもの階調情報を持っているためできることだ。

だが問題となるのは、プリンターや商業印刷機(オフセット)などは、ディスプレイと異なった階調の幅の特性を持っていることだ。さらにカラーに限って言えばsRGBディスプレイとAdobeRGBディスプレイでは表現できる色の階調の幅が異なる。このためiccプロファイルを埋め込んだ上で、アプリケーションソフトウエアの校正機能を利用し、最終形態である表現物がいかなる再現性を持っているか確認する必要が生じる。

 

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